ロシア国防省の発表によりますと、19日未明、ウクライナ軍がATACMS、6発を使ってウクライナと国境を接するロシア西部ブリャンスク州への攻撃を行いました。
ロシア軍はこのうち5発を迎撃しましたが、残り1発の破片が軍事施設の敷地内に落下し、火災が起きたとしています。
ただ、火はすぐに消し止められ、けが人などは出ていないということです。
一方、ウクライナ軍は、ブリャンスク州にある弾薬庫を攻撃し、12回の爆発を引き起こしたと発表していますが、使用した兵器については明らかにしていません。
ウクライナメディアはウクライナ軍がロシア領内への攻撃でATACMSを使ったのは初めてだと報じています。
ATACMSを巡っては複数のメディアがアメリカ政府当局者の話として、バイデン大統領がウクライナに対し、ロシア領内への攻撃に使うことを許可したと報じていました。
ロシアのプーチン大統領は、ことし9月、欧米が射程の長い兵器の使用を認めれば「NATO=北大西洋条約機構の国々がロシアと戦うことを意味し、紛争の本質を変える」と発言していて、ATACMSによる攻撃を受けたロシアの対応が焦点です。
米有力紙も報道
アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは19日、アメリカとウクライナの政府高官の話として、ウクライナ軍がアメリカ製のミサイルを使ってロシア領内への攻撃を初めて行ったと伝えました。
この高官たちは攻撃に使われたのは射程の長いミサイルATACMSだと認めたということです。
ニューヨーク・タイムズは「攻撃はバイデン大統領がウクライナに対してロシア領内の標的を攻撃するために兵器を使う許可を与えた数日後に行われた」としています。
またホワイトハウスの報道担当者はNHKの取材に対し「ウクライナの作戦については、それを話すことができるウクライナ側に問い合わせてもらいたい」と回答するにとどめました。
ロシア外相 アメリカやウクライナを非難
ロシア国防省がウクライナ軍が射程の長いミサイルATACMSでロシア西部を攻撃したと発表したことについて、ロシアのラブロフ外相は19日、訪問先のブラジルのリオデジャネイロでの記者会見で、「彼らが事態をエスカレートさせたいというシグナルであることは確かだ」と述べ、アメリカやウクライナを非難しました。
その上で「プーチン大統領は、射程の長いミサイルの使用が承認されれば、われわれの立場がどう変化するかについても警告した」と述べ、プーチン大統領が核兵器の使用基準を定めたいわゆる「核ドクトリン」の改定版を承認する大統領令に署名したことを踏まえ、けん制しました。