仮想かそう通貨つうかの資金しきん洗浄せんじょうか 流出りゅうしゅつ事件じけんから１いち年ねんで動うごき活発かっぱつ化か

去年きょねん１月いちがつ、大手おおて交換こうかん会社かいしゃ「コインチェック」から、ＮＥＭと呼よばれる仮想かそう通貨つうか580億おく円えん相当そうとうが流出りゅうしゅつした事件じけんをめぐっては、発生はっせいから１いち年ねんがたった今たったいまも、インターネット上じょうで取り引とりひきの記録きろくが公開こうかいされる仮想かそう通貨つうかの仕組しくみを利用りようして、専門せんもん家からが追跡ついせきを続つづけています。

このうち、筑波つくば大学だいがくの面めん和成かずなり准じゅん教授きょうじゅらの研究けんきゅうチームによりますと、流出りゅうしゅつした仮想かそう通貨つうかの多おおくは、去年きょねん３月さんがつまでに何者なにものかによって闇やみサイト上じょうの交換こうかん所しょに持ち込もちこまれ、別べつの３さん種類しゅるいの仮想かそう通貨つうかに交換こうかんされたということです。

このうちの１ひとつの「ビットコイン」をさらに追跡ついせきしたところ、去年きょねん６月ろくがつまでに、およそ180億おく円えん相当そうとうがインターネット上じょうにある７ななつの口座こうざに集あつめられ、その後そのご、半年はんとしほど動うごきが止とまっていました。

ところが先月せんげつ15日にち以降いこう、このうちの２ふたつの口座こうざで再ふたたび動うごきが活発かっぱつ化かし、25日にちの時点じてんで800万まん口くち余あまりに上のぼる膨大ぼうだいな数かずの口座こうざに分散ぶんさんされたということです。

これは何者なにものかが資金しきん洗浄せんじょうを図はかっているとみられ、その際さいの通信つうしんの状況じょうきょうや現金げんきんに交換こうかんする動うごきから、犯人はんにんにつながる手てがかりが得えられる可能かのう性せいがあるということです。

面めん准じゅん教授きょうじゅは「犯人はんにんが現金げんきん化かを急いそいでいる可能かのう性せいがある。事件じけんから１いち年ねんたって出でてきた動うごきをチャンスと捉とらえ、分析ぶんせきや追跡ついせきを強化きょうかする必要ひつようがある」と話はなしています。

相場そうばは大おおきく下さがる

仮想かそう通貨つうかをめぐっては、投機とうき目的もくてきの購入こうにゅうが相次あいついで、取り引とりひき相場そうばが高騰こうとうする状態じょうたいにありましたが、大だい規模きぼな流出りゅうしゅつ事件じけんが相次あいついだことなどから相場そうばが大おおきく下さがっています。

筑波つくば大学だいがくの面めん和成かずなり准じゅん教授きょうじゅらの研究けんきゅうグループによりますと、代表だいひょう的てきな仮想かそう通貨つうかである「ビットコイン」の取り引とりひき価格かかくは、事件じけん後ご、今月こんげつ25日にちまでの１いち年間ねんかんに３さん分ぶんの１いちに下さがっています。

さらに、事件じけんで流出りゅうしゅつした「ＮＥＭ」の取り引とりひき価格かかくは、16分ぶんの１いちに暴落ぼうらくしています。

ブロックチェーンの技術ぎじゅつ開発かいはつ進すすむ

市場しじょうが縮小しゅくしょうする一方いっぽうで、仮想かそう通貨つうかが生み出うみだした技術ぎじゅつは、データのやり取やりとりの在り方ありかたを大おおきく変かえる可能かのう性せいがあるとして、世界せかいの研究けんきゅう者しゃの間まで注目ちゅうもくを集あつめています。

仮想かそう通貨つうかの最大さいだいの特徴とくちょうは、一元いちげん的てきな管理かんり組織そしきがなく、すべての取り引とりひき記録きろくをインターネット上じょうで分散ぶんさんして管理かんりする「ブロックチェーン」と呼よばれる技術ぎじゅつにあります。

東京とうきょう・港みなと区くに拠点きょてんを置おくベンチャー企業きぎょうは、ブロックチェーンを応用おうようし、インターネットに接続せつぞくされる「ＩｏＴ機器きき」の安全あんぜん性せいを高たかめる技術ぎじゅつを開発かいはつしています。

医療いりょう機器ききや自動じどう運転うんてん車しゃなど、膨大ぼうだいかつ機微きびなデータのやり取やりとりが増ふえる中なか、低ひくいコストで安全あんぜん性せいを保たもつには、ブロックチェーンの分散ぶんさん型がたのシステムが最適さいてきとして、小ちいさな機器ききでも動うごくソフトを開発かいはつし、スマートウオッチなどを使つかった実証じっしょう実験じっけんにも成功せいこうしたということです。

こうした技術ぎじゅつ開発かいはつは、大手おおて電機でんきメーカーや大学だいがくでも盛さかんになっていて、今週こんしゅう、滋賀しが県けんで開ひらかれた情報じょうほうセキュリティーや暗号あんごうに関にかんする学会がっかいでも、専門せんもんの部会ぶかいが複数ふくすう設もうけられ、活発かっぱつに発表はっぴょうが行おこなわれていました。

ベンチャー企業きぎょう「Ｋｅｙｃｈａｉｎ」の三島みしま一いち祥さちさんは「情報じょうほうセキュリティーに加くわえ、プライバシーへの関心かんしんも高たかく、ブロックチェーンは解決かいけつ策さくとして期待きたいされている。仮想かそう通貨つうかのバブルが過ぎ去すぎさり、本当ほんとうに使つかえる技術ぎじゅつが何なにかがわかるようになってきて、生活せいかつを変かえる技術ぎじゅつが続々ぞくぞくと出でてくるだろう」と話はなしています。

専門せんもん家か「事件じけんの教訓きょうくん生いかして」

筑波つくば大学だいがくの面めん和成かずなり准じゅん教授きょうじゅは、今回こんかいの流出りゅうしゅつ事件じけんを機きに、この１いち年ねんで仮想かそう通貨つうかの技術ぎじゅつの課題かだいが見みえてきたとしたうえで、「もうこの技術ぎじゅつがダメなのかというとそうではなくて、今後こんごは仮想かそう通貨つうかにとどまらず、さまざまなサービスがブロックチェーン上じょうで動うごいていくことが期待きたいされる。事件じけんの教訓きょうくんを生いかしてセキュリティーを強化きょうかすることで、総合そうごう的てきな技術ぎじゅつ力りょくが高たかまり、日本にっぽんの技術ぎじゅつ力りょくを世界せかいにアピールしていける」と話はなしています。