NHKが入手した録音で、泉市長は「立ち退きさせてこい。火をつけて捕まってこい。建物を燃やしてこい。おまえらが金を出せ。自分の家を売って話をまとめろ」などと発言しています。
これについて泉市長は29日、記者会見を開き、発言内容を認めたうえで「パワハラであるだけでなく、さらにひどい発言だった。職員にも市民にも大変申し訳ない」と陳謝しました。
そのうえで泉市長は「死亡事故も発生している交差点の工事を一刻も早く進めたいという思いがあった。統一地方選挙が迫っており、一連の状況を含めて市民にご判断を仰ぎたい」と述べました。
泉市長は、NHKのディレクターや衆議院議員を経て、平成23年の明石市長選挙で初当選し、現在2期目です。
発言を録音した音声データ
NHKが入手した、発言を録音した音声データでは、泉市長は20分以上にわたって次のように発言しています。
「ふざけんな。あほちゃうか、ほんまに。すまんですむか。立ち退きさしてこい、お前らで。きょう火をつけて捕まってこい。燃やしてこい、建物を。損害賠償は個人で負え。人が死んだんでしょうが、安全対策でしょうが。はよ、せえよ。7年もですよ、事業スタートから。許さんから、ほんまに許さんから。おまえらが金、出せ。自分の家を売れ。それで話をまとめろ。担当に辞めてもらえ。辞表、取ってこい。辞表を出さないなら、7年分の給料を払え。難しかったら私が行って土下座でもしますわ、そんなもん。市民の安全のためやろが。安全な道路つくろうとしているわけでしょ」
暴言浴びた幹部職員「パワハラとは感じていない」
道路の拡幅工事の責任者で、泉市長から直接、暴言を浴びせられた市の幹部職員はNHKの取材に対し、「市長の発言は言ってはいけないことばだったとは思うが、事業が進んでいなかった責任があるので、私自身はパワハラとは感じていない。市長は今回のことを反省し、職員が気軽に相談できるような雰囲気をつくってもらいたい」と話しています。
専門家「典型的なパワハラで言語道断」
各地の企業や団体でパワーハラスメントなどに関する研修や講演を行っている社会保険労務士の藤原寛子さんは「音声からはことば使いや口調にとても力がある印象だ。一方的に相手を罵倒する、罵詈雑言を並べ精神を攻撃する典型的なパワーハラスメントで、どんな背景があったとしても決して許されない発言だ。一般的にパワハラかどうかの線引きは難しいが、今回の発言の内容はそのグレーゾーンには当たらずあるまじき発言で言語道断だ」と指摘しています。
そのうえで、藤原さんは「パワーハラスメントは部長、課長など階級がはっきりとしているフォーマルな組織では民間に限らず、行政でもどこでも起こりうる。昔は教育、指導のためといって許容されていたこともあったが今の時代にはそぐわない。今回のケースでいえば、事業が進まないことを取り上げ部下を怒るのでなく、計画そのものに無理はないかを一緒に考えるといった『マネージメント力』こそが組織のトップに立つ人に重要な要素だ。トップに立つ人はもっとことばを大切にしてほしい」と話していました。
市民からは批判の声
明石市の泉市長の暴言について、市民からは批判の声が上がっています。
JR明石駅前で市民に聞いたところ45歳の男性は「『火をつけてこい』はひどい。立派な人だと思っていたのにヤクザみたいなことを言うんだなと思った。弁護士でもある人がこういうことを言うのは言い訳がつかない」と話していました。
また、31歳の女性は「いままで子育て支援などを充実させてくれたので、いろいろ理解のある人かと思っていましたが、印象が変わりました。怖いかな、と。よい政策もしてきたのでそれは続けてほしい」と話していました。
一方、50代の女性は「発言の一部を切り取って聞かされると『わっ』と思いますけど、子育ての施策を頑張ってやってもらっているから、その足を引っ張る原因になるのはいやだなと思います」と話していました。