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年前、
当時の
熊本県松橋町で、
男性を
殺害した
罪などで
服役した
男性の
再審=
やり直しの
裁判が
熊本地方裁判所で
開かれ、
検察は
有罪の
立証や
求刑を
行わず、
1日で
審理が
終わりました。
判決は
来月28
日の
予定で、
無罪が
言い渡される
見通しです。
昭和60
年1月、
当時の
熊本県松橋町、
今の宇
城市の
住宅で、59
歳の
男性が
刃物で
刺され、
殺害された
事件では、
熊本市の
宮田浩喜さん(85)が、
殺人などの
罪で
懲役13
年の
刑が
確定し、
服役しました。
宮田さんの弁護団が検察に証拠の開示を求めた結果、自白の内容と矛盾する証拠が見つかり、去年10月、最高裁判所は再審を認めました。
やり直しの裁判は8日午後、熊本地方裁判所で開かれ、認知症になっている宮田さんの代わりに弁護士が出廷し、「無罪は明らかだ」と訴えました。
裁判では過去に有罪を認定する根拠となった、自白調書や凶器とされた小刀に関する資料などは証拠として採用されませんでした。
検察は有罪の立証を行わず「裁判所に適切な判断を求める」と述べ、求刑も行いませんでした。
審理は1日で終わり、判決は来月28日に言い渡されることになりました。有罪を示す証拠がないことから、無罪が言い渡される見通しです。
弁護団「無罪判決待つのみ」
宮田浩喜さんの弁護団は8日の審理のあと、熊本市で会見を開きました。三角恒主任弁護士は「想定より短い時間で裁判が終わったのは、これまで4回にわたって行ってきた3者による協議の成果だ。検察が申請した証拠の多くが採用されず、あとは無罪の判決を待つのみだ」と述べました。
宮田さん次男「国は現実直視を」
また、宮田さんの次男の賢浩さん(60)は、涙を浮かべながら弁護団や支援者に感謝の気持ちを述べたうえで、「ようやくここまできたかという思いです。もっと早く司法が判断してくれれば、亡くなった兄も知ることができたし、父もしっかり理解できただろうと思うと、国には再審の現実を直視してほしい」と訴えました。
弁護団によりますと、宮田さんは現在、介護施設が運営する熊本市内の高齢者向けの住宅で、介護を受けながら暮らしていて、認知機能が低下して会話が難しく、体が弱って1人では動けない状態だということです。
これまでの経緯
昭和60年の1月、当時の熊本県松橋町、今の宇城市の住宅で、1人暮らしの59歳の男性が刃物で刺されて殺害されているのが見つかりました。遺体が見つかったおよそ2週間後に、被害者の男性と将棋仲間だった熊本市の宮田浩喜さん(85)が、殺人などの疑いで逮捕されました。
警察の取り調べに対し、自白したとされましたが、5回目の裁判で、「うその自白をさせられた」と無罪を主張しました。
物的証拠がほとんどなく、自白が信用できるかどうかが争われましたが、裁判所は供述の内容に不自然な点はなく、信用できるとして、懲役13年を言い渡し、平成2年に確定しました。
宮田さんは判決のあとも無実を訴え続け、弁護団が宮田さんの服役中に事件の証拠を調べたところ、自白の内容と矛盾する点が出てきました。
捜査段階で宮田さんは「凶器の小刀にシャツを切り取った布を巻き付け、犯行後に燃やした」と自白していましたが、熊本地方検察庁に5枚の布が保管されていることがわかり、証拠の開示を求めた結果、弁護団に渡され、組み合わせると1枚のシャツに復元されました。
弁護団は燃やされたはずの布が保管され、シャツが復元されたことは自白の内容と矛盾するため、有罪の大きな根拠とされた自白に信用性がなくなったとして、平成24年に裁判のやり直しを求めました。
その結果、熊本地方裁判所は3年前、「自白の重要な部分に客観的事実との矛盾があり、有罪の認定に合理的な疑いが生じた」として、再審を認める決定を出しました。
おととしには、福岡高等裁判所も再審を認め、去年、最高裁判所の決定で確定しましたが、33年という長い年月がかかりました。
宮田さんは認知症で判断能力が低下しているとして、息子と成年後見人の弁護士が再審を申し立てていました。