突然とつぜん、犯罪はんざい被害ひがい者しゃ・遺族いぞくとなって直面ちょくめんした事態じたいを伝つたえることで、少すこしでも同おなじような立場たちばに置おかれた人ひとたちの助たすけになればという思おもいからです。

女性じょせいの夫おっとは、資格しかくが必要ひつような職業しょくぎょうで、正せい社員しゃいんとして働はたらいていました。

ただ真面目まじめで一生いっしょう懸命けんめいな性格せいかくで頑張がんばりすぎてしまい、事件じけんの前まえ、心こころと体からだのバランスを崩くずして仕事しごとを辞やめざるを得えなくなったといいます。

それでも家族かぞくのためにもう一度もういちど働はたらきたいと、クリニックに通かよい、職場しょくば復帰ふっきを支援しえんするリワークプログラムを受うけていました。

心こころの持もち方かたなどについての講座こうざをいちばん前まえの席せきで熱心ねっしんに聞きいていたといいます。

女性じょせいは「とても仕事しごとが好すきな人ひとでした。家族かぞくのことを考かんがえて、これから先さきもう一度もういちど働はたらけるように、前向まえむきに取り組とりくんでいる気持きもちで書かいたんだと思おもいます」と話はなしました。

持もっている資格しかくを生いかして復職ふくしょくを目指めざしていた夫おっとを亡なくし、女性じょせいは1人にんで幼おさない子こどもを育そだてていくことになりました。

しかし、頼たよりにした犯罪はんざい被害ひがい者しゃの遺族いぞくを支援しえんする国くにの補償ほしょう制度せいどでは、給付きゅうふ金きんが被害ひがい当時とうじの収入しゅうにゅう額がくを基準きじゅんに算定さんていされることを知しりました。

夫おっとは長年ながねん、働はたらいてきたのにたまたま被害ひがいに遭あったとき、収入しゅうにゅうがなかったことを理由りゆうに給付きゅうふ金きんが低ひくくなるというのです。

女性じょせいは「命いのちの価値かちを勝手かってにつけられているように感かんじて、命いのちの差さを作つくっている国くにの制度せいどは理不尽りふじんで、憤いきどおりを感かんじます。子こどもの進路しんろを、夫おっとが亡なくなったことで諦あきらめさせるようなことは絶対ぜったいにしたくないです」と話はなしました。

女性じょせいは、被害ひがい者しゃ支援しえん団体だんたいとともに、国くにに対にたいして被害ひがい者しゃや遺族いぞくの経済けいざい的てきな不安ふあんを少すこしでもなくすために、制度せいどを改善かいぜんして十分じゅうぶんな支援しえんをしてほしいと訴うったえています。

「犯罪はんざい被害ひがい給付きゅうふ制度せいど」では、支給しきゅう額がくは、▽被害ひがい者しゃの年齢ねんれいや、▽収入しゅうにゅう、▽扶養ふよう家族かぞくの有無うむなどをもとに算定さんていされます。

このうち、収入しゅうにゅうについては被害ひがいにあった当時とうじの額がくがベースとなるため、女性じょせいの夫おっとのように一時いちじ的てきに仕事しごとを辞やめ、職場しょくば復帰ふっきを目指めざしていた人ひとでも、事件じけん当時とうじ、収入しゅうにゅうがなければ、収入しゅうにゅうがあった場合ばあいに比くらべ、支給しきゅうされる金額きんがくが少すくなくなってしまいます。

女性じょせいは、こうした現状げんじょうについて「被害ひがい者しゃの命いのちの価値かちに違ちがいは無ないのに、国くにによる制度せいどで違ちがいが出でるのはおかしい」として、収入しゅうにゅうにかかわらず、犯罪はんざい被害ひがい者しゃへの補償ほしょうを、一般いっぱんの人ひとの平均へいきん給与きゅうよ額がくか年齢ねんれい別べつの平均へいきん給与きゅうよ額がくを基準きじゅんに支給しきゅう額がくが算定さんていされる自賠責しばいせき保険ほけんの水準すいじゅんにしてほしいと訴うったえ、4月つきに支援しえん団体だんたいと共とともに国くにに要請ようせいをしています。

犯罪はんざいの被害ひがい者しゃや遺族いぞくは加害かがい者しゃに対にたいして、民事みんじ裁判さいばんで損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめることもできますが、今回こんかいの放火ほうか事件じけんでは容疑ようぎ者しゃも死亡しぼうし、賠償ばいしょうを求もとめることができない状況じょうきょうです。

賠償ばいしょう命令めいれいが確定かくていした場合ばあいでも、加害かがい者しゃから賠償ばいしょう金きんが支払しはらわれずに被害ひがい者しゃや遺族いぞくの精神せいしん的てき、経済けいざい的てきな苦くるしみが続つづくケースも多おおいということで、女性じょせいは、支援しえん団体だんたいとともに、国くにが賠償ばいしょう金きんを立て替たてかえるなどの新あらたな支援しえんの仕組しくみ作づくりをしてほしいと求もとめています。

犯罪はんざい被害ひがい者しゃへの補償ほしょうをめぐってはほかの被害ひがい者しゃ団体だんたいも国くにに対策たいさくを求もとめる声こえをあげていて、自民党じみんとうの有志ゆうしによる議員ぎいん連盟れんめいも5月つき、抜本ばっぽん的てきな支援しえんの強化きょうかに関にかんする提言ていげん案あんをまとめています。

事務じむ担当たんとう者しゃの会議かいぎを開ひらき、迅速じんそくに裁定さいていするなど、運用うんようの改善かいぜんについて各地かくちの警察けいさつに指導しどうしているということです。

警察けいさつではこのほか、

▽居住きょじゅうや雇用こようの安定あんていを図はかるために必要ひつような情報じょうほうの提供ていきょうや、

▽相談そうだん体制たいせいの確保かくほ、

▽さらなる犯罪はんざいに遭あわないための安全あんぜんの確保かくほなどの支援しえん策さくを通をつうじて、一いち人にん一いち人にんに寄り添よりそったきめこまやかな支援しえんを行おこなっているとしています。

警察庁けいさつちょうは「犯罪はんざい被害ひがい者しゃ等とうの思おもいに寄り添よりそい、権利けんり利益りえきを保護ほごするという犯罪はんざい被害ひがい者しゃ等とう基本きほん法ほうの理念りねんにのっとり、さまざまなご意見いけんに真摯しんしに耳みみを傾かたむけながら、支援しえんする取り組とりくみのさらなる推進すいしん・充実じゅうじつに努つとめてまいりたい」としています。

また、遺族いぞくの女性じょせいが犯罪はんざい被害ひがい者しゃへの補償ほしょうは交通こうつう事故じこの自動車じどうしゃ損害そんがい賠償ばいしょう責任せきにん保険ほけんの補償ほしょうよりも少すくなく不十分ふじゅうぶんだと訴うったえていることについては、「犯罪はんざい被害ひがい者しゃと交通こうつう事故じこの被害ひがい者しゃで補償ほしょうの違ちがいが出でるというのはおかしな話はなしで、せめて同おなじ基準きじゅんにすべきだ。その基準きじゅんとして自賠責しばいせき並なみの補償ほしょうというのは考かんがえられる」と話はなしました。

そのうえで、「国くには国民こくみんを犯罪はんざい被害ひがいから守まもることができなかった責任せきにんを感かんじて経済けいざい的てき支援しえんを行おこない、加害かがい者しゃからも確実かくじつに賠償ばいしょうさせる仕組しくみを整ととのえるなど、現在げんざいの補償ほしょう制度せいどそのものを見直みなおすべきだ」と話はなしています。