この日はマーケットが荒れそうなことが予想されたので、朝早くから市場関係者への取材を重ねていました。
午前10時ごろには20年ぶりの円安水準となる1ドル=135円台をつけたため、大手銀行のディーリングルームから中継リポートで円安の背景を伝えました。
円安をもたらしたのは案の定、FRBの金融政策に対する市場の思惑でした。 日本時間の16日(木)未明に予定されているFOMC=連邦公開市場委員会でFRBはインフレを抑制するために大幅な利上げに踏み切るのではないかという見方が広がっていたためです。
しかし、ある市場関係者は別の見方を教えてくれました。 「確かにCPIは円相場など金融市場を動かす大きな材料だった。しかし、市場がひそかに着目したのはアメリカの消費者心理の変化を捉えた調査だ」
ミシガン大学が一般の消費者を対象に景況感などを調査するもので、1966年を100として指数化したものです。 発表によりますと、足元の6月の速報値は50.2と、過去最低を更新。 消費者の半数近くがインフレを景況感悪化の理由にあげていて、特にガソリン価格の高騰が重荷になりました。 5年先の物価の見通し=予想インフレ率の上昇も、大きな材料となりました。 6月は3.3%と、5月から0.3ポイント上昇し、2008年6月以来、およそ14年ぶりの高い水準となりました。 これはすなわち、消費者がこの先もかなりのインフレが続くと感じていることを示しています。
通常の3倍にあたる大幅な利上げです。 このミシガン大学の調査について、FRBのパウエル議長は記者会見で「とても目を引く物で、非常に重く受け止めなければならない」と話していました。
「FRBはミシガン大の消費者態度指数をみて、このままだと消費者にインフレマインドが染みついてしまい、ちょっとやそっとでインフレを抑え込むことができなくなることを恐れたのではないか」。 FRBの大胆な決断の背景には消費者心理の変化も要因としてあったようで、それが円安にも影響したことがうかがえます。
1ドル=134円50銭台からわずか2時間で132円30銭台に、2円以上も円高が進行し、日付を越えた17日午前1時前には131円台半ばまで円が買われました。 きっかけはスイスの中央銀行による実質利上げでした。 インフレの抑制に向けて、政策金利をマイナス0.75%から0.5%引き上げて、マイナス0.25%にすると発表したのです。 利上げは実に15年ぶりのことです。 この“衝撃の利上げ”でスイスフランが急騰。 なぜか円もつられて円高が進みました。 この円高の背景には「キャリートレード」と呼ばれる取り引きの影響も無視できないと市場関係者は語ります。 日本円とスイスフランはいずれも金利が低いという共通項があります。 キャリートレードはこの円やフランを低金利で調達し、ドルなど金利が高い国の資産に投資して運用する取り引きです。 スイスの金利が上昇すると「低金利で調達」といううまみがなくなるため、投資家はこの取り引きを解消するため、外貨を売ってスイスフランを買い戻す動きに出たというわけです。 市場関係者は「外国人投資家を中心に、『共通項がある日本円でも同じようなポジション解消が迫られるのではないか』との思惑が広がったこと、さらには『日銀も何らかの政策の修正をするのではないか』といった観測まで出て、円買いが一気に入った」と話しています。
「何らかの政策の修正」はなく、再び円安方向に動いています。(17日午後6時時点) ふだん目にしない経済指標や取り引き形態が複雑に絡み合い、為替相場を動かしていることに改めて気づかされました。
住宅の販売はその後の家具や家電などの消費に波及するほか、アメリカでは新築よりも中古の販売の方が市場規模が大きいため注目されています。 この販売件数は、4月まで3か月連続で前の月を下回っており、アメリカの景気はどうなのか、点検する上で注目を集めそうです。
消費者心理の変化?
インフレマインド定着を恐れたか?
スイスフランショックで今度は円高に
注目予定