そのうえで、今月23日に緊急の委員会を開くと発表し、今回の感染の広がりが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に該当するかどうかを検討することを明らかにしました。
英語では「Public Health Emergency of International Concern」というもので、頭文字をとってPHEIC(フェイク)と呼ばれ、過去6回、出されています。
サル痘は、中央アフリカなどでは散発的にみられる感染症でしたが、いま、ヨーロッパなどに定着することが懸念されています。
また、ナイジェリアでは1人が死亡したとしています。
主な国では、イギリスが524人、スペインが313人、ドイツが263人、ポルトガルが241人、カナダが159人、フランスが125人、オランダが80人、アメリカが72人などとなっています。 (WHOはこれまで、サル痘の感染がときおりみられてきたアフリカ中西部の諸国と、5月以降に感染が相次いで判明した欧米諸国と分けて集計していましたが、今月17日の発表から統一しました。アフリカ地域の6か国の64人が感染者として計上されています。) ウイルスの遺伝子解析の結果、広がっているのは比較的病原性が低い、西アフリカ系統のウイルスだとされています。
徐々に膨らんで水疱(水ぶくれ)になり、うみが出て、かさぶたとなり、発症から2~4週間で治癒するということです。 多くの場合は、軽症で自然に回復しますが、肺炎や敗血症などの合併症を引き起こすことがあり、年齢が低いほど重症化する可能性があるとされています。 WHOによりますと、今回の感染拡大では、発疹が性器や肛門の周辺など一部にとどまっているケースや、発熱などの前に発疹が出るケースが特徴的だということです。
しかし、通常の状態でこのウイルスを持っている自然宿主は、サルではなく、げっ歯類だと考えられています。 WHOは現在、「サル痘」という名称について、変更を検討しているということです。 人への感染は、1970年にコンゴ共和国で最初に確認され、その後、中央アフリカや西アフリカの熱帯雨林地域で散発的に感染が広がりました。 2003年にはアフリカからペットとして輸入された小動物を通じてアメリカにウイルスが持ち込まれ、71人が感染しました。 アフリカでは、現在もサル痘の感染が頻繁に起きています。 2022年1月以降6月8日までに、コンゴ民主共和国やナイジェリアなど8か国で、疑い例も含めて1500人余りが報告され、72人が死亡しています。 ナイジェリアなど西アフリカと、コンゴ民主共和国など中央アフリカの地域では別々の系統のウイルスが広がっているとされています。 中央アフリカでみられるサル痘の方が重症化しやすく、致死率は数%から10%程度に上ると報告されています。 近年、アフリカ以外で確認されたケースは、すべてナイジェリアからの帰国者が発症するパターンで、年間に数人程度、確認されていました。 アフリカ以外では死亡した人は報告されていません。
また、感染した人の発疹や体液、かさぶた、患者が使った寝具や衣類などに接触したり、近い距離で飛まつを浴びたりすることで、誰もが感染する可能性があると指摘されています。 今回、感染が広がっていることについて、WHOやECDC=ヨーロッパ疾病予防管理センターは、密接な接触によって誰もが感染する可能性があるとしたうえで、これまでの追跡調査で確認された患者の多くについては、男性どうしでの性的な接触があったとしています。 一部の専門家はヨーロッパ各地で開かれた大規模なイベントを介して感染が広がった可能性を示唆していて、今後、夏に向けてこうしたイベントがさらに増えるとみられることから各国は注意を呼びかけています。 一方で、感染経路が特定できない、いわゆる「市中感染」とみられる患者や、女性の患者も確認されているとして、特定のグループの人々の病気としてとらえずに、警戒すべきだとしています。 WHOはサル痘にかかった人と密接に接触したことのある人は誰もが感染するリスクがあるとして「病気を理由に不当な扱いを受ける人がいてはならない」としています。 WHOは症状が出ている人は検査を受け、他の人との密接な接触を避けて、医療機関にかかるよう呼びかけています。 ECDCは「可能性は非常に低い」としたうえで、ヒトからヒトへの感染が続けば、ヒトからいずれ動物に感染、動物の間でも広がってヨーロッパに定着する可能性を指摘しています。 WHOでシニアアドバイザーを務める進藤奈邦子さんは、今月18日に横浜市で開かれた学会で取材に応じ「これまで分かっている範囲では、感染の広がりのほとんどは男性どうしで性的な接触を行った人たちの中にとどまっているが、感染のすそ野がどれだけ広がっているのか全くわかっていない。ただ、新型コロナウイルスのようには広がるものではない。直接の身体の接触が主な感染経路となり、講演会の会場のような場所で広がるようなことはない」と話していました。
ただ、天然痘はワクチン接種が積極的に行われた結果、1980年に地球上から根絶されています。
天然痘のワクチンは、日本には効果が高く、副反応も小さいとされるワクチンがあり、テロ対策の一環として国家備蓄されています。 サル痘に対する薬の開発は進められていますが、いまのところ特効薬のような治療はなく、各国では対症療法で対応しています。
しかし、患者と接触していても、ワクチンの接種を希望する人が少ないことも課題になりつつあります。 イギリスの保健当局が6月2日に公表した報告書では、ワクチンの接種の希望を聞かれた医療従事者の69%が接種を希望したのに対し、患者と接触した人では14%しかワクチンの接種を希望しなかったとされています。 報告書では「根絶という目標を達成するためには、患者の迅速な発見や感染経路の追跡が必要不可欠だ。定期的な検査などワクチン以外の対策についても検討すべきだ」としています。
サル痘は感染症法上、狂犬病などと同じ「4類感染症」に指定され、診断した医師は患者の発生を保健所に届ける必要があります。 厚生労働省は5月20日と6月1日に都道府県などに対し事務連絡を出し、疑わしい患者があれば報告し、指定医療機関への入院体制を確保するよう求めています。 また、サル痘の検査は水疱に含まれている液体などから新型コロナウイルスと同じようにPCR検査で調べることができることから、国立感染症研究所のほか、各自治体の地方衛生研究所でも検査体制の整備が進められています。
A:このまま感染者が増え、3000人に達するのは確実だと思います。 ただ、増加のペースは200から300人ぐらいだった当初の頃からあまり変わらず、予想を超えたスピードにはなっていません。 Q:WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」と判断するかが焦点となっています。 A:今の状況をみるかぎり、私はそれを出すレベルに達していないと思います。
1については(今回の感染拡大による)死亡者はおらず、WHOとしてもリスク評価を中程度としています。 今のところ、公衆衛生上、深刻な状況は生まれていないと言えますので、当てはまりません。 2については感染の広がりの予測は、ある程度できているので当てはまりません。 3については、感染拡大が40か国くらいまで広がっているので、当てはまりますが、4の国際間の交通の制限はWHOとして推奨しないとしていて、当てはまりません。 ただ、今後、感染経路が変わってきた場合、例えば輸血を通じた感染みたいなことが起きると、状況は変わるかもしれません。 Q:研究はどこまで進んできたのでしょうか A:サル痘ウイルスの遺伝子配列の細かい情報が出てきました。 感染が拡大しているウイルスについて西アフリカ由来ということぐらいしか分かっていませんでしたが、遺伝情報の解析によると、今回のウイルスが1人の患者さんから欧米など各地に広がった可能性があるようです。 一方、遺伝子変異によってサル痘ウイルスが感染しやすくなったかどうかについては、どちらかというと否定的な見方が出ています。 Q:今後、何が焦点となってくるでしょうか A:アフリカ以外の動物にサル痘の感染が広がってしまうことを最も危惧しています。 WHOはサル痘の患者に対して、家庭で飼育しているペットに接触するなと呼びかけていますが、それはサル痘ウイルスはいろいろな動物にも感染するからです。 いまはヨーロッパ、北米大陸、そのほかいくつの地域で感染者が出ていますが、人から人への感染を完全に遮断すれば、収束するはずです。 しかし、野生動物の間で感染が広がってしまいますと、完全に排除することは難しくなり、常在国になってしまうので、警戒しています。 Q:日本国内に流入するおそれはあるのでしょうか A:当然、潜伏期間中の感染者が日本に入ってきて、発症するリスクはあります。 海外からの観光客の受け入れが再開し、感染した人が海外から来て発症するということもありえると思います。 Q:どのような対策で備えるべきでしょうか A:もし国内で感染者が出た場合、濃厚接触者の方を含めて検査が必要になってきます。 医療機関では、海外から入国した人で発熱や発疹が出た人はサル痘を疑うべきだと思います。
各国の感染状況は
発疹が特徴的なサル痘 今回の感染では
“サル痘”名前の由来とこれまでの感染
感染経路は
天然痘ワクチンが高い効果
欧米ではワクチン接種の動きも
日本では感染の報告なし
今後は 予防法は
感染が確認された人は2000人を超えました。
日本国内では確認されていませんが、今後入ってくるおそれはあります。
WHO=世界保健機関は今月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」にあたるかどうか判断することにしています。
サル痘は、新型コロナと同じような警戒が必要な感染症なのか。
私たちはどう対応していけばいいのか。
わかってきたことをまとめました。
(6月21日現在)
“過去にない異常なふるまい” WHO 緊急事態に該当するか検討へ