アメリカの
ティラーソン国務長官は、
シリアの
アサド政権に対するミサイル攻撃について、
化学兵器の
使用をやめさせるための
措置だと
強調する
一方で、まずはアサド
政権を
倒すことよりも、シリアなどで
活動を
続ける
過激派組織IS=
イスラミックステートの
排除を
優先する
考えを
示しました。アメリカのティラーソン
国務長官は、
9日に
放送された
ABCテレビのインタビューで、シリアのアサド政権の
軍事施設に対して
行ったミサイル
攻撃について、「
女性や
子どもに
化学兵器を
使用したことへの
対応だ」と
述べ、アサド
政権に
化学兵器の
使用をやめさせるための
措置だと
強調しました。
一方で、アサド政権の転覆を目指すのかと問われたのに対し、「独裁政権を倒したあと混乱が続くリビアの現状から教訓を得なければならない」と指摘するとともに、「われわれの最優先は過激派組織ISを倒し、排除することだ」と述べ、まずはアサド政権を倒すことよりも、シリアなどで活動を続けるISの排除を優先する考えを示しました。
さらに、ティラーソン長官は、アサド政権の後ろ盾となっているロシアについて、「今回の最大の失敗は、2013年にロシアとアサド政権が約束した化学兵器を廃棄するという合意が守られなかったことだ」と述べて、ロシアの責任を指摘しました。
そして、今週、ロシアを訪問する際、シリアの化学兵器の廃棄を強く働きかける考えを明らかにするとともに、ロシアがアサド政権との関係を見直すことに期待を示しました。
一方、安全保障担当のマクマスター大統領補佐官は、FOXテレビのインタビューで、ISへの軍事作戦と平行し、アサド政権の退陣に向けた政治的なプロセスも検討する必要があると強調し、ロシアがこのプロセスで役割を果たす必要があるという認識を示しました。
ロシアとイラン 米を批判し協力を確認
アメリカによるシリアのアサド政権への軍事攻撃を受けて、ともにアサド政権の後ろ盾となっている、ロシアのプーチン大統領とイランのロウハニ大統領は9日、電話で会談を行いました。
ロシアの大統領府によりますと、会談で両首脳は「国際法に違反した主権国家への侵略行為は許されない」と、アメリカによる攻撃を批判したということです。
また、イランの大統領府によりますと、会談の中でロウハニ大統領が「アメリカの攻撃はシリアのテロリストを利するものだ」と述べたのに対し、プーチン大統領も「今回の攻撃も含めて、アメリカがシリア情勢の解決に貢献することはない」と応じ、シリア情勢の解決に向けて、イランとロシアが緊密な協力を続けていくことが重要だという認識で一致したということです。
さらに、両首脳は、シリアで化学兵器が使用された疑いについて、客観的で先入観にとらわれない調査の実施を求めていく立場を確認しました。
シリアでは各地で空爆や戦闘続く
シリアでは、9日も、各地でアサド政権側による空爆が続いているほか、政権側と反政府勢力の間で戦闘も行われています。
内戦の情報を集めている団体、シリア人権監視団によりますと、反政府勢力が支配している北西部のイドリブ県では、9日、政権側による空爆が続き、民間人に死傷者が出ているということです。
また、首都ダマスカス近郊でも、アサド政権側が反政府勢力の支配地域に対して空爆を続けているほか、南部のダラアと中部のハマでは、政権側と反政府勢力の間で戦闘が続いているということです。
このうち、ダラアでの戦闘の状況について、シリア国営通信は、政府軍が反政府勢力の戦闘員75人以上を殺害したと伝えています。