その結果、大会経費の総額を予備費を除いて1兆3850億円とし、このうち、東京都と組織委員会がそれぞれ6000億円、政府が1500億円を負担することで合意しました。
一方、東京都外の自治体については、輸送や警備などを担うことで合意したものの、350億円とする経費については今後、業務内容や金額などを精査して協議を続けることになりました。
費用負担をめぐっては当初、3者による協議で去年秋頃までに結論を出す予定でしたが、小池知事が競技会場の見直しを提案したことで作業が遅れ、結論が先送りされていました。
今回の合意で3者と自治体が施設整備や大会運営など多岐にわたる準備作業で何をどこまで担うのかそれぞれの役割が固まったことになり、大会準備はようやく本格化することになります。
丸川五輪相「経費縮減や効率化 互いに努力を」
丸川オリンピック・パラリンピック担当大臣は記者団に対し、「準備がギリギリ間に合う段階で決まったのではないか。今回がスタート地点であり、さらにこれから詳細な役割分担の具体化を図っていく必要がある。経費の縮減や効率化についてはお互いに努力し、関係者が協力して大会の準備を加速させることを呼びかけ、自分自身も努力していきたい」と述べました。
小池知事「地は固まった 準備急がないと」
東京都の小池知事は、合意について記者団に対し、「地は固まった。大会を3年後に控えて準備を急がないといけない。まとまってよかった」と述べました。
そのうえで「これまで予備費を除いて1兆5000億円と見込んでいた大会経費の総計が1兆3800億円ほどと1000億円余り縮減したことは大きい。経費が膨張しないような組織を作ることも大きな成果だ。引き続き、細かく削れるところは削り、レガシーとして残すところは残すメリハリをつけていく」と述べました。
また、今後、協議を続ける350億円の経費については「試算として350億円の規模は明示させてもらった。それぞれの会場の営業補償の期間などに伴い数字は動いていく。合意をベースにしながらそれぞれの県との協議を続けて精査していく」と述べました。
森会長「数歩前進 施錠が外れた」
組織委員会の森会長は、東京都以外の自治体と金額の分担までは至らなかったものの基本的な考え方を大枠で合意したことについて、「一歩どころか、数歩、前に進んだ。鍵がかかっていた、その施錠が外れたということだと思う。各県の準備が加速すればもっといろんなことができるんじゃないか」と述べ、大会の準備が進むことに期待を寄せました。
そのうえで、今後も議論の焦点となる都以外の自治体の運営費については、「このオリンピックは東京都が主催する。東京都が各県の皆さんに協力をお願いしている。それが基本的な姿勢、スタンディングポイントだと思う」と話し、東京都の姿勢が重要であることを強調しました。
また、組織委員会の武藤事務総長は、出席した知事や市長が立候補ファイルや開催基本計画の原則を強調したことについて、「そこが最大のポイントだったと思う。立候補ファイルや開催基本計画を見れば、いろいろなことが書いてある。その考え方を基本的に踏まえるということが決まったから、あとは十分に意見交換していけば、数字についても合意できるだろうと私は思っている」と話しました。
埼玉県 上田知事「原則を確認できた」
埼玉県の上田知事は、今回の合意について、「立候補ファイルなど原理原則を踏まえて負担するということが確認できてよかった。紛れもなく日本のオリンピックなので、遅れた分、東京都を全力で応援していきたい」と歓迎しました。
そのうえで、今後、協議を続ける350億円の経費について、上田知事は、「警察による警備など、通常の行政サービスに含まれるものもあると思うが、そういったものは埼玉県が負担することになる。しかし、基本は立候補ファイルに基づいて精査するという考え方なので、われわれに迷惑がかからないと思う」と述べました。
千葉県 森田知事「右往左往はやめてもらいたい」
千葉県の森田健作知事は、合意について、記者団に対し、「いろいろな混乱があったが、やっと元に戻ってスタート台に立ったという感じだ。これからは、小池都知事にしっかりとリーダーシップをとってもらい私たちもしっかり協力していく」と述べました。
その一方で、森田知事は、東京都のこれまでの対応について、「東京都には誘致した責任がありしっかりやってもらわないと困る。一般の人から『なぜ、けんかばかりしているのか。オリンピックをやめればいいのではないか』といった声が出るのは本当に、ゆゆしきことだ。もう、私たち協力県が右往左往するようなことはやめてもらいたい」と述べました。
千葉市の熊谷俊人市長は合意について、記者団に対し「時間はかかったが、原理原則をようやく確認できたことはよかった。一歩下がって、一歩前進し、スタートライン。これに1年かかったということだ」と述べました。
そのうえで、熊谷市長は、「今後は、実務的にスピードアップし、とにかく時間がないので、成功に向けて、東京都や組織委員会と一緒になって取り組んでいきたい」と述べました。
費用分担 議論の経緯
東京オリンピック・パラリンピックの大会経費については、去年3月、組織委員会、東京都、それに政府の3者でどう分担するか、議論を進めることで合意し、去年9月頃までに結論を出す予定でした。
しかし、東京都の舛添知事が辞任し、新たに就任した小池知事がボートなどの競技会場の見直しを提案したことで、議論は事実上、中断されました。
議論再開のきっかけとなったのは競技会場の見直しが元の場所で整備するという形で決着した去年12月に組織委員会が大会経費の試算を公表したことでした。
この試算では、大会経費を最大1兆8000億円とし、組織委員会が5000億円、組織委員会以外が残りを負担する案が示されました。
組織委員会以外の負担分には、招致段階では組織委員会が受け持つことになっていた仮設整備費や運営費が含まれていたため新たに負担を求められる形となった競技会場のある都以外の自治体が強く反発しました。
このため年明けから再開された議論では、こうした自治体にある施設の仮設整備費や運営費をどう分担するかが焦点となりました。
当初は、ことし3月末までの決着を目指しましたが結論が出ず、今月になって都が最大3000億円の予備費を除いて去年12月に組織委員会が公表した試算より1100億円削減した総額1兆3900億円という新たな試算を示しました。
この中では組織委員会と東京都が6000億円ずつ、政府が1500億円を負担するとし、仮設整備費は都以外の施設を含めすべて都と組織委員会が受け持つことで合意しました。
一方で、残りの400億円は、都以外の施設の警備や輸送などの運営費として自治体が負担すると試算しましたが、自治体側は、金額の根拠が説明されていないなどとして再び反発しました。
その後、都は、負担額を400億円から350億円に減らし、30日には、自治体に負担を割りふらず、来月以降も関係機関で精査していくといういわば、結論を先送りする案を新たに提示するなど、ぎりぎりまで調整が続いていました。