アメリカは、トランプ大統領が自身のツイッターで「北朝鮮に対する過去最大の経済制裁だ。非常に大きな財政的な打撃を与える」と評価し、ヘイリー国連大使が各国に着実な実行を求めました。
一方、中国の劉結一国連大使は「この決議は、外交的な手段で解決策を探る6か国協議の再開を目指すものだ」と述べ、今回の制裁決議をてこに、2008年12月以来開かれていない6か国協議の再開の道を探るべきだという考えを示しました。
また、ロシアのネベンジャ国連大使も「6か国協議を再開することがこの問題の行き詰まりを打破する出発点になる」と述べ、圧力を強める構えのアメリカに対し、中国とロシアは制裁とともに6か国協議を通じて北朝鮮と対話を行う重要性を強調しています。
トランプ大統領 採択を評価
アメリカのトランプ大統領はみずからのツイッターに、「中国とロシアもわれわれと一緒に投票した。非常に大きな財政的な打撃を与える!」と書き込み、全会一致での採択を評価しました。そのうえで、「単独では北朝鮮に対する過去最大の経済制裁であり、10億ドル以上の損失を北朝鮮に与える」として、新たな制裁の効果に期待を示しました。
中国外相「最終的な目的は制裁ではない」
中国の王毅外相は、訪問先のマニラで記者団の取材に応じ、「安保理決議に違反し、ミサイルの発射を繰り返す北朝鮮に対し必要な対応で、効果的に核・ミサイル開発を阻止するためのものだ」などと評価しました。一方で、王毅外相は「この決議で非常に重要なのは6か国協議の再開を呼びかけていることだ。最終的な目的は制裁ではなく、朝鮮半島の核問題を対話のテーブルに戻すことだ」と述べて、関係各国は対話によって緊張した局面を打開すべきだと訴えました。
韓国外務省「国際社会の意志表明」
韓国外務省はコメントを発表し、「国際社会が北の核とミサイル開発を決して容認しないという断固とした意志を表明したもので、平和と安全を脅かす無謀な挑発にふさわしい制裁措置だ」と歓迎しました。そのうえで、「今回の制裁決議は北の外貨収入を大幅に削減する効果があるものと予想される。北に対する決議を忠実に履行しながら、北を根本的に非核化し、朝鮮半島に平和を定着させるための努力をしていく」として、この機会をとらえて事態の打開を目指していく姿勢を強調しました。
制裁の着実な履行を
韓国のカン・ギョンファ(康京和)外相は、6日、フィリピンで行われたASEAN=東南アジア諸国連合との会談で、制裁の着実な履行についても話し合ったと見られます。
韓国のカン・ギョンファ外相は6日午前、フィリピンの首都マニラでASEAN各国の外相と会談しました。この中で、北朝鮮が先月、2回にわたってICBM=大陸間弾道ミサイルだとする発射実験を行ったことをめぐって、国連の安全保障理事会が石炭や海産物などの輸出を一切、禁止する内容の新たな制裁決議を全会一致で採択したことに関連し、制裁の着実な履行についても話し合ったと見られます。
一方、北朝鮮のリ・ヨンホ外相は7日行われるARF=ASEAN地域フォーラムに出席するため、6日未明、マニラに到着しました。北朝鮮は、アメリカも参加するARFの場で制裁決議に強く反発するとともに、改めて核とミサイルの開発を正当化するものと見られます。
米中ロ 国連大使の発言
制裁決議の採択を主導したアメリカのヘイリー国連大使は、安保理の会合後、記者団に「われわれの世代で最強の制裁の1つだ」と強調し、「次のステップは完全に北朝鮮次第だ」と述べ、さらに圧力を強める姿勢を示しました。その一方で、「北朝鮮が挑発をやめれば、喜んで対話に応じる」と述べ、核やミサイル開発を停止すれば、2008年12月以来開かれていない6か国協議が再開されるという考えを示しました。
中国の劉結一国連大使は、安保理の会合での発言で、対話の再開に向けて努力するとしたうえで、「アメリカが北朝鮮の政権転覆や崩壊を求めず、朝鮮半島の統一を急がず、南北の軍事境界線を越えて米軍を投入することはないと主張していることに留意している」と述べました。また、アメリカと北朝鮮の対話の実現に向け、北朝鮮が核実験と弾道ミサイルの発射を停止するのと同時に、アメリカが韓国との大規模な合同軍事演習を中止するという、中国とロシアからの提案を受け入れるようアメリカに呼びかけました。
この提案について、ロシアのネベンジャ国連大使は安保理の会合での発言で、「決議の草案に盛り込まれたわれわれの提案が、支持されなかったことを懸念している」と述べました。また、「制裁と圧力だけでは朝鮮半島の問題は解決できない。追加制裁だけで終わるのではなく建設的な対話への手段とするべきだ」と訴えました。
決議採択までの経緯
北朝鮮の核・ミサイル開発はアメリカへの直接の脅威だとして圧力強化を急ぐアメリカ。一方で、朝鮮半島の緊張緩和に向けて北朝鮮だけでなく、アメリカも具体的な措置を取るべきだとして追加制裁に慎重な姿勢を示す中国やロシア。対立していた双方は、先月28日に北朝鮮がICBMだとする発射実験を再び行ったあと、歩み寄りを始めたと見られます。
30日、アメリカのヘイリー国連大使は「話し合いのときは終わった。中国は最終的に重大な措置を取りたいのか決めなければならない」とする声明を発表し、北朝鮮への圧力を強めるのかどうか、中国に決断を迫りました。国連外交筋は、中国が、北朝鮮の行動を変えるには制裁を強めることもやむをえないという判断に傾いていったと言います。
一方、北朝鮮がICBMだと発表した2回の発射実験について、いずれもICBMではなく中距離弾道ミサイルだと主張し、追加制裁に慎重な姿勢を示したのがロシアでした。ロシアのネベンジャ国連大使は、3日の時点では、議論はまだこれからだと話していましたが、事態は4日、急転します。この日、アメリカは新たな制裁決議案を安保理のすべてのメンバー国に示し、翌日の5日に採決にかけることが決まります。アメリカの国連外交筋は北朝鮮が2回目の発射実験を強行したことに、ロシアも危機感を募らせており、制裁決議に反対はしないだろうと話していました。アメリカは同時に、ロシアが中距離弾道ミサイルという主張にこだわっていることを踏まえ、制裁決議の文言は「北朝鮮が述べたところのICBMに重大な懸念を表明する」として、ICBMと断定する表現は避け、ロシアの立場に配慮したものと見られます。
一方の日本。日本の外交筋は、先月28日に発射されたICBMだとされる弾道ミサイルが、北海道から150キロ離れた近海に落下したと見られることから、安保理メンバーの国々に北朝鮮の脅威が高まっていることを繰り返し訴えたと話しています。別所国連大使は安保理の会合のあと、記者団に「日本にとっても150キロのところで落ちたということで、積極的に発言してきた。日本は最も利害があり、努力が報われたと思っている」と述べ、日本の外交努力が安保理メンバー国を結束に向かわせる一因になったという認識を示しました。ロシアのネベンジャ国連大使も決議採択後の各国発言の中で、「警告なしに発射された弾道ミサイルが、地域の船舶や航空機に対する重大な脅威になっているという近隣国の認識を共有している」と述べ、日本の危機感に理解を示しました。