東芝は売却を急がせたい政府や取引銀行の強い意向も受け、31日までに半導体事業で提携するアメリカのウエスタンデジタルを売却先に決めることを目指して交渉を進めてきました。
しかしウエスタンデジタルの経営への関与の度合いをめぐり両社の主張には隔たりが残ったままで、合意のめどは立っていません。
このため東芝は31日の取締役会で、ウエスタンデジタルのほか、日本とアメリカのファンドや韓国の半導体メーカーなどでつくる “日米韓連合”、台湾のホンハイ精密工業の、3つのグループと交渉を継続する方針を確認したと発表しました。
東芝は来年3月末までに売却を完了できるように「可及的速やか」に売却先を決め、契約を結ぶことを目指すとしています。
半導体事業の売却に向けて東芝はことし6月、政府が主導してまとめた “日米韓連合” と優先的に交渉することを決めましたが、ウエスタンデジタルの強い反発で交渉は行き詰まりました。
こうした事態を打開するためとはいえ、ウエスタンデジタルに売却先を転換する戦略は東芝にとっていわば苦肉の策でした。
これに対して巻き返しを図る “日米韓連合” 側はアメリカのアップルを加えた新たな枠組みを提案し、ホンハイも買収に強い意欲を見せています。
交渉相手を絞り込むこともできないまま東芝に残された時間は少なくなっていて、半導体事業の売却の行方はなお曲折が予想されます。
東芝とウエスタンデジタル 出資比率めぐり大きな溝
東芝が半導体子会社「東芝メモリ」の売却に向けたウエスタンデジタルとの交渉では、ウエスタンデジタルが「東芝メモリ」の経営にどれだけの影響力を持つかという点で両社の主張に大きな隔たりが残っています。
これまでの交渉でウエスタンデジタル側は2兆円規模の買収額を提示しています。
この提案では、ウエスタンデジタルは将来、議決権を持つ株式に転換することができる社債を引き受けて1550億円の資金を提供するとしています。
またアメリカのファンド「KKR」は将来、議決権を持つ株式に転換することができる優先株を引き受けて3000億円の資金を提供します。
このほか日本の官民ファンドの産業革新機構と政府系金融機関の日本政策投資銀行も出資することを前提としています。
産業革新機構と日本政策投資銀行は現在は売却先の受け皿として政府が主導してまとめた “日米韓連合” に参加していますが、東芝がウエスタンデジタル側を売却先に選んだ場合は出資に応じる方針です。
半導体事業の売却を急ぐ東芝はこの提案を前向きに検討してきましたが、ウエスタンデジタルが将来KKRが保有する株式を買い取ることで「東芝メモリ」の経営に大きな影響力を持つことを懸念しています。
こうした懸念を払しょくするため、ウエスタンデジタル側は将来にわたって株式の議決権は3分の1を超えないようにして経営に関する重要事項の拒否権を持たないようにする考えを東芝に伝えています。
これに対して東芝側は、日本の独占禁止法にあたる各国の競争法の審査をクリアするためには、出資比率を10年間にわたって15%以下にすることを契約に盛り込むよう求めています。
しかしウエスタンデジタル側は契約に明記することを了承しておらず、今のところ双方が折り合う見通しは立っていません。