建設現場でアスベストを
吸い込み
肺の
病気になった
神奈川県の
元作業員と
遺族が
起こした
裁判で、
2審の
東京高等裁判所は
訴えを
退けた
1審判決を
取り消し、
国と
建材メーカー
4社に
賠償を
命じる
判決を
言い渡しました。
住宅などの
建設現場で
大工や
塗装工などとして
働いていた
神奈川県内の
元作業員と
遺族合わせて
89人は、
建材に
含まれていたアスベストを
吸い込んで
肺がんなどの
病気になったとして
国と
建材メーカー
43社に
合わせて
28億8000万円余りの
賠償を
求めました。
1審の
横浜地方裁判所は「
国の
対策などが
遅れたとは
言えない」として
元作業員などの
訴えを
退け、
原告側が
控訴していました。
27日の2審の判決で東京高等裁判所の永野厚郎裁判長は1審の判決を取り消し、国と建材メーカー4社に賠償を命じました。
建設現場でのアスベスト被害をめぐり全国で起こされた集団訴訟では、地裁で賠償を命じる判決が相次いでいて、高裁では初めてとなった27日の判決でも国と建材メーカーの責任が認められました。
判決について、厚生労働省は「判決内容の詳細は把握していないが、今回の判決では、国の主張が認められなかった点もあり、厳しい判決であると認識している。今後は、判決内容を十分検討するとともに、関係省庁と協議したうえで対応してまいりたい」とするコメントを出しました。
賠償を命じられた建材メーカーの1つ、「ニチアス」は「判決の詳細は確認できていませんが、当社の主張が一部、裁判所に認められなかったことは遺憾です」というコメントを出しました。
地裁で賠償命じる判決相次ぐ
アスベストをめぐる裁判では、工場の元労働者について国の責任を認める判決が確定しているほか、建設現場の元作業員についても地裁で賠償を命じる判決が相次いでいます。
かつてアスベストを含む建材などを製造していた工場の元労働者や、建材を扱っていた建設現場の元作業員は、アスベストが原因で肺がんなどになったとして、責任を問う裁判を各地で起こしました。
このうち工場の元労働者については、大阪・泉南地域の元作業員や遺族が訴えた裁判で、3年前に最高裁判所が国の責任を認める判決を言い渡し、確定しました。判決では、工場に排気装置の設置を義務づける規制が遅かったと指摘し、国に対して、昭和33年から昭和46年までの間に工場で働いていた人や遺族に賠償するよう命じました。その後、別の工場の元労働者なども相次いで裁判を起こし、国は、最高裁の判断に従って和解しています。
一方、多くの人たちが従事していた建設現場でのアスベストの被害をめぐっては、元作業員や遺族が国と建材メーカーに賠償を求めて起こした集団訴訟が各地で続いています。原告団によりますと、これまでに全国6か所で裁判が起こされ、先月の時点で、800人余りが原告となっています。
このうち、京都地方裁判所は去年、防じんマスクの着用を求める警告などを怠ったとして、国の責任を認めたほか、業界でのシェアがおおむね10%以上の建材メーカー9社についても責任を認め賠償を命じました。
さらに今月24日には横浜地方裁判所が今回の裁判のあとに起こされた集団訴訟で、国の責任に加え、健康に影響を与えた建材を製造したメーカー2社の責任を認め、合わせて3億円余りの賠償を命じています。
このほかにも東京や大阪など4つの地方裁判所でも国の責任を認める判決が相次いでいて、一連の集団訴訟で高等裁判所としては初めての27日の判決が注目されていました。