旧きゅう統一とういつ教会きょうかいに献金けんきん返かえすよう求もとめる裁判さいばん 初はじめて最高裁さいこうさいで弁論べんろん

焦点しょうてんは 元もと信者しんじゃが “教団きょうだんに返金へんきんを求もとめない” と書かいた念書ねんしょ

原告げんこくの女性じょせいは、長野ながの県けんに住すんでいて信者しんじゃだった母親ははおやが違法いほうな勧誘かんゆうで高額こうがくな献金けんきんなどをさせられたとして、母親ははおやとともに教団きょうだんなどに対にたいし、1億おく8000万まん円えん余あまりの賠償ばいしょうを求もとめて、7年ねん前まえに裁判さいばんを起おこしました。

1審しんの東京とうきょう地方ちほう裁判所さいばんしょと2審しんの東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょは、母親ははおやが裁判さいばんを起おこす2年ねん前まえ、86歳さいの時ときに「教団きょうだんに返金へんきんを求もとめない」などとする念書ねんしょを書かき、動画どうがにも収おさめられていたことなどから訴うったえを退しりぞけました。

母親ははおやは裁判さいばん中ちゅうに亡なくなり、娘むすめが上告じょうこくしていました。

10日にち、最高さいこう裁判所さいばんしょ第だい1小しょう法廷ほうていで弁論べんろんが開ひらかれ、原告げんこく側がわは「母親ははおやは高齢こうれいで、念書ねんしょを作成さくせいしたおよそ半年はんとし後ごに認知にんち症しょうと診断しんだんされ、十分じゅうぶんな判断はんだん能力のうりょくを持もっていなかった。信者しんじゃの不安ふあんや恐怖きょうふをあおったうえで献金けんきんさせる行為こういは違法いほうだ」などと主張しゅちょうしました。

一方いっぽう、教団きょうだん側がわは、「念書ねんしょは有効ゆうこうで、元もと信者しんじゃが自分じぶんの意思いしで献金けんきんしたことは明あきらかだ。被害ひがいの認識にんしきがなかった元もと信者しんじゃに損害そんがい賠償ばいしょうを求もとめる権利けんりがあると認みとめるならば、すべての宗教しゅうきょうの信者しんじゃが損害そんがい賠償ばいしょうを請求せいきゅうできることになってしまう」と反論はんろんしました。

判決はんけつは7月つき11日にちに言い渡いいわたされることになりました。

教団きょうだんの勧誘かんゆうや献金けんきんをめぐり、最高裁さいこうさいで弁論べんろんが開ひらかれたのは初はじめてです。

弁論べんろんは判決はんけつを変更へんこうする際さいに必要ひつような手続てつづきで、訴うったえを退しりぞけた判断はんだんが見直みなおされる可能かのう性せいがあります。

教団きょうだん側がわ提出ていしゅつの映像えいぞう 元もと信者しんじゃが “自分じぶんのことばで意思いしを表明ひょうめい”

教団きょうだん側がわが裁判さいばんに提出ていしゅつした映像えいぞうをNHKは入手にゅうしゅしました。

映像えいぞうでは、教団きょうだんの担当たんとう者しゃが手元てもとの用紙ようしを見みながら「念書ねんしょは自分じぶんの認識にんしきと一致いっちするか」などと質問しつもんし、原告げんこくの女性じょせいの母親ははおやが「はい」と答こたえる様子ようすが映うつされています。

また、娘むすめが教団きょうだんに返金へんきんを求もとめていることについて問とわれると、「絶対ぜったいやってもらったら困こまると思おもっています」と話はなしていました。

担当たんとう者しゃはさらに「家庭かてい連合れんごうに返金へんきん請求せいきゅうすることは断だんじて嫌いやだということで手続てつづきしたということですね」と確認かくにんし、母親ははおやは「はい」と答こたえていました。

1審しんと2審しんの判決はんけつでは映像えいぞうは母親ははおやが「返金へんきんを求もとめない」とする念書ねんしょを書かいた後のち、教団きょうだんの施設しせつで信者しんじゃに依頼いらいして撮影さつえいしてもらったと認定にんていされ、「返金へんきんを求もとめる意思いしがないことを自分じぶんのことばで述のべており、やりとりや母親ははおやの様子ようすに不審ふしんな点てんは見受みうけられない」とされました。

一方いっぽう、原告げんこく側がわは、「訴うったえを起おこされないようにするために地元じもとの教団きょうだん幹部かんぶらが共謀きょうぼうして念書ねんしょを作つくらせ、ビデオも撮影さつえいされた」として、念書ねんしょの作成さくせいと映像えいぞうの内容ないようは母親ははおやの意思いしではなく、無効むこうだと主張しゅちょうしています。

原告げんこく女性じょせい “母ははは作成さくせい強要きょうようされた” “教団きょうだんの念書ねんしょは無効むこうと判断はんだんを”

念書ねんしょなどをもとに、1審しんと2審しんで訴うったえを退しりぞけられている原告げんこくの女性じょせいは、「被害ひがい者しゃのため教団きょうだんの念書ねんしょは基本きほん的てきに無効むこうだという判断はんだんを出だしてほしい」と訴うったえています。

原告げんこくの女性じょせいは、別居べっきょしていた母親ははおやが2004年ねんごろから旧きゅう統一とういつ教会きょうかいの信者しんじゃとなり、父親ちちおやの資産しさんや土地とちなどの財産ざいさんを献金けんきんしていたため、母親ははおやと相談そうだんして2017年ねんに返金へんきんを求もとめて一緒いっしょに訴うったえを起おこしました。

高額こうがく献金けんきんに気付きづくのに時間じかんがかかった理由りゆうについて、女性じょせいは「母ははは口止くちどめされていて、購入こうにゅうした物品ぶっぴんなどはわたしが帰省きせいする時ときに教団きょうだんの関係かんけい者しゃが運び出はこびだし、教会きょうかいの空あき部屋へやに隠かくしていた。2015年ねんに母ははが打ち明うちあけるまで気付きづかなかった」と述のべました。

1審しんと2審しんの判決はんけつでは、争点そうてんになっている念書ねんしょは母親ははおやの希望きぼうで教団きょうだん関係かんけい者しゃが作成さくせいし、地元じもとの公証こうしょう役場やくばで署名しょめい・押印おういんしたとされました。

念書ねんしょには、寄付きふや献金けんきんは教団きょうだんの職員しょくいんや会員かいいんによる不当ふとうな働はたらきかけによるものではなく自由じゆう意思いしで行おこなったとされ、返還へんかん請求せいきゅうなどをしないことを約束やくそくすると書かかれています。

女性じょせいは念書ねんしょについて、「書かいた当時とうじ、母親ははおやは86歳さいで、こんな言葉ことばづかいで書かくことはありえません」などとして、教団きょうだん側がわに作成さくせいを強要きょうようされたと主張しゅちょうしています。

一方いっぽう教団きょうだん側がわは、「教団きょうだん関係かんけい者しゃが念書ねんしょの作成さくせいを指示しじしたことはない。母親ははおやが正常せいじょうな判断はんだんで真意しんいに基もとづき署名しょめいし、押印おういんしたものだ」と主張しゅちょうし、1審しんと2審しんはともに教団きょうだん側がわの主張しゅちょうを認みとめました。

母親ははおやは、裁判さいばんの途中とちゅうで亡なくなりました。

女性じょせいは、「司法しほうが念書ねんしょについてお墨付おすみつきを与あたえたら、教団きょうだんは多おおくの場面ばめんで念書ねんしょを取とることが予想よそうされる。被害ひがい者しゃのため、教団きょうだんの念書ねんしょは基本きほん的てきに無効むこうだという判断はんだんを出だしてほしい」と話はなしていました。

弁護べんご団だん “念書ねんしょは教団きょうだんの防衛ぼうえい手段しゅだん 無効むこうの判断はんだんなら影響えいきょうは大おおきい”

最高さいこう裁判所さいばんしょでの弁論べんろんの後のち、原告げんこくの女性じょせいと弁護べんご団だんが都内とないで会見かいけんを開ひらきました。

原告げんこくの女性じょせいは、7月つきに言い渡いいわたされる判決はんけつに向むけ、「被害ひがいを認みとめて、念書ねんしょは無効むこうだという正ただしい判断はんだんをしてほしいです。教団きょうだんから念書ねんしょを書かかされた人ひとを、母はは以外いがいにも知しっています。そうした人ひとたちも諦あきらめずに被害ひがい回復かいふくにつなげてもらいたい」と話はなしました。

山口やまぐち広ひろ弁護士べんごしは最高裁さいこうさい判決はんけつの影響えいきょうについて、「念書ねんしょは教団きょうだんにとって、組織そしきを防衛ぼうえいする手段しゅだんとなっている。仮かりに最高裁さいこうさいが無効むこうと判断はんだんすれば旧きゅう統一とういつ教会きょうかいだけでなく、宗教しゅうきょう団体だんたいが献金けんきんや勧誘かんゆうをする場合ばあいの注意ちゅうい喚起かんきにもつながる。影響えいきょうは大おおきい」と話はなしていました。

開廷かいてい前まえ 傍聴ぼうちょう希望きぼう者しゃが長ながい列れつ

最高さいこう裁判所さいばんしょでは、弁論べんろんを傍聴ぼうちょうしようと多おおくの人ひとが集あつまり、長ながい列れつを作つくっていました。

最高裁さいこうさいによりますと、38席せきの傍聴ぼうちょう席せきに対にたいして89人にんが集あつまり、倍率ばいりつは2.34倍ばいでした。

元もと信者しんじゃを支援しえんしている60代だいの男性だんせいは、「念書ねんしょがあることで旧きゅう統一とういつ教会きょうかいからの被害ひがいに対にたいして声こえを上あげられない人ひとたちがいます。無効むこうとする判断はんだんを示しめして被害ひがい回復かいふくにつなげてほしいです」と話はなしていました。

一方いっぽう、旧きゅう統一とういつ教会きょうかいの現役げんえき信者しんじゃだという60代だいの男性だんせいは、「1審しんと2審しんは賠償ばいしょうを認みとめない判決はんけつでしたが、最高さいこう裁判所さいばんしょが世論せろんに流ながされる判断はんだんをしないか気きになって傍聴ぼうちょうに来きました。裁判所さいばんしょには筋すじの通とおった判断はんだんを期待きたいしたいです」と話はなしていました。