この中で、イニエスタ選手はヴィッセルと今シーズン終了まで契約が残るなか7月1日のリーグ戦を最後に退団することを明らかにし、その理由について「自身とクラブの歩む道が分かれ始め、監督の優先順位も違うところにあると感じ始めた。その現実と、プレーし続けたいという自身の情熱と掛け合わせてクラブを去ることがベストだと決断した」と話しました。
そのうえでヴィッセルに在籍したおよそ5年間について「大きな喜びと誇りの感情が沸き上がってくる。素晴らしい仲間に囲まれ、人としても選手としても大きく成長することができた。様々な歴史を刻むとともに、苦しい時期もあったが、そういった経験がチームと仲間たちをより強くしてくれた」などと、時折、涙を流しながら話しました。
2018年にスペイン1部リーグの強豪、バルセロナからヴィッセルに電撃移籍し、2020年元日に決勝が行われた天皇杯で初のタイトルをもたらすなどチームを躍進させましたが、チームが低迷した昨シーズン途中からイニエスタ選手に頼らない戦術をとるようになり、今シーズンは、出場機会が大きく減っていました。 また、イニエスタ選手は、移籍先について「自分もわからない」としたうえで「プレーしながら引退したいという気持ちが強い。そういった形で引退できる場所を見つけたい」と話しました。 イニエスタ選手は来月6日に国立競技場で行われる古巣のバルセロナとの親善試合や7月1日にホームで行われるリーグ戦でファンに別れや感謝を伝えることにしています。
身長1メートル71センチとサッカー選手としては小柄ながらドリブルやパスワークなどで卓越した技術を持ち、状況判断にも優れた世界屈指のミッドフィルダーです。 2018年までスペイン1部リーグの強豪、バルセロナの主力として活躍し、リーグ優勝9回、ヨーロッパチャンピオンズリーグで優勝4回など多くのタイトル獲得に貢献しました。 スペイン代表でもワールドカップに2006年のドイツ大会から4大会連続で出場し2010年、南アフリカ大会の決勝では延長戦の後半にみずからゴールを決めてチームを初優勝に導きました。
スペイン時代から変わらぬ高い技術で日本のファンの心をつかみ、2020年の元日に決勝が行われた天皇杯で優勝してヴィッセルに初めてのタイトルをもたらしました。
その後、リハビリを経て復活したイニエスタ選手は、2021年にJリーグで自己最多に並ぶ6得点をあげ、チームをJ1で過去最高となる3位に押し上げました。
5月11日に39歳になったイニエスタ選手はおよそ5年在籍したヴィッセルを退団し新たな活躍の場を求める決断をしました。 J1では、113試合に出場し21得点の成績を残しています。
イニエスタ選手が来日した2018年、その姿を見たいとヴィッセルのホームゲームの入場者数が前の年より大きく増えました。 よくとしの2019年を含め、およそ5万人多い年間36万人あまりが来場しました。 これにともない、入場料や広告などのスポンサー収入を柱とするヴィッセルの営業収益も大きく跳ね上がりました。 2019年には、114億円あまりとなり、Jリーグのクラブではじめて年間100億円を突破しました。 こうしたイニエスタ選手の営業面での効果はヴィッセルだけにとどまらず、アウェーの試合でもイニエスタ選手目当ての来場者が増えました。 J1全体でも2019年に過去最高の入場者数となるおよそ640万人を記録、営業収益も過去最高となりました。
▽2017年31万0625人 ▽2018年36万7716人 ▽2019年36万5349人 《ヴィッセル営業収益》 ▽2017年52億3700万円 ▽2018年96億6600万円(Jリーグ最高) ▽2019年114億4000万円(Jリーグ最高更新) ※2020年以降は新型コロナの感染対策で入場制限実施。
来日2年目の2019年にサッカースクールを立ち上げ、神戸や大阪で展開。 みずからの経験を伝えることで日本サッカーの将来を担う人材を育てることを目指し、信頼するコーチをスペインから呼び寄せるとともにイニエスタ選手自身も定期的に指導にあたってきました。 さらに世界的なスーパースターでありながら気さくな性格で、地元、神戸の人たちに身近な存在として親しまれてきました。 2021年は、神戸を拠点に、右太ももの大けがからのリハビリに取り組み、六甲山でのトレーニング中にはファンからの声かけに笑顔で応じる姿がありました。
現在、スコットランドリーグの強豪、セルティックでプレーする古橋亨梧選手です。 古橋選手は大学卒業後、J2のクラブからプロのキャリアをスタートさせましたが、2018年にヴィッセルに移籍するとイニエスタ選手と絶妙のコンビネーションを発揮し2019年から3年連続でふた桁得点をマークしてJリーグを代表するストライカーへと成長しました。 その後、海外移籍を果たした古橋選手は、今シーズン、リーグ戦で25得点をあげスコットランドリーグの得点王になりました。 古橋選手はヴィッセル在籍当時、イニエスタ選手から「自分がボールを持ったら迷わず相手のディフェンスの裏へ走り出せ」と指導を受けたと話しています。 古橋選手がその才能を開花させるうえで、イニエスタ選手は欠かせない存在だったと言えます。
退団ということにはなるが今後もクラブとの関係は続き有形無形の大きな貢献をしてくれるのではないかと期待している」と話しました。
このうち、神戸市の40代の女性は「イニエスタ選手はずっと神戸にいてくれると思っていたので寂しいです。サッカー選手だとプレーしたいと思うのは当然で応援するべきだと思います。神戸に来てくれてありがとうと伝えたいです」と話していました。 また、60代の男性は「イニエスタ選手のプレーが神戸で見られなくなるので残念です。現役を引退したらまた神戸に帰ってきて次の若い世代を育ててもらいたいです」と話していました。
神戸市中央区の繁華街にあるヴィッセル神戸の公式グッズショップではチームに所属する選手のレプリカユニフォームやタオルマフラーなどを取り扱っています。 店の入り口付近に設けられたイニエスタ選手のコーナーには公式グッズのほかにサイン入りのユニフォームが飾られていて店を訪れた人が写真を撮ったり商品を購入したりしていました。 イニエスタ選手のタオルマフラーを購入した神戸市の40代の男性は「退団のニュースを見てお店に来ました。イニエスタ選手は日本のサッカーを変えてくれた人で、退団が決まって悲しいです。きょう買ったグッズを持ってイニエスタ選手のヴィッセル神戸での最後の試合を応援しに行きたいです」と話していました。
イエニスタ選手とは
ヴィッセル在籍で大きな効果
日本でのサッカー普及にも尽力
飛躍を遂げた古橋亨梧選手
ヴィッセル 三木谷浩史会長「大きな財産になった」
地元・神戸では