離婚後の子どもの養育制度見直しへ中間試案たたき台法制審 - Easy News

親おやが離婚りこんしたあとの子こどもの養育よういくをめぐる制度せいどの見直みなおしに向むけて19日にち開ひらかれた法制ほうせい審議しんぎ会かいの部会ぶかいで、中間ちゅうかん試案しあんのたたき台たたきだいが示しめされました。

日本にっぽんでは採用さいようされていない離婚りこん後ごも父母ちちはは双方そうほうを親権しんけん者しゃとする「共同きょうどう親権しんけん」を選えらべる案あんが盛り込もりこまれています。

離婚りこん後ごの親権しんけんについて、日本にっぽんでは、父母ちちははのいずれかが親権しんけん者しゃとなる「単独たんどく親権しんけん」が採用さいようされていますが、近年きんねん、年間ねんかん20万まん組くみ前後ぜんごが離婚りこんしていて、子こどもの養育よういく費ひの不払ふばらいや、親子おやこの交流こうりゅうの断絶だんぜつなど、さまざまな問題もんだいが出でています。

制度せいどの見直みなおしに向むけて去年きょねん3月つきから議論ぎろんしている法制ほうせい審議しんぎ会かいの家族かぞく法制ほうせい部会ぶかいは、来月らいげつ末まつに中間ちゅうかん試案しあんをまとめることにしていて、19日にちの会合かいごうで、そのたたき台たたきだいが示しめされました。

まず、親子おやこ関係かんけいの基本きほん的てきな規律きりつについて

▽父母ちちはは双方そうほうが子こどもを養育よういくする責務せきむを負おうことや

▽子こどもの最善さいぜんの利益りえきを考慮こうりょしなければならないことなどを明確めいかく化かするとしています。

そのうえで、離婚りこん後ごの親権しんけん者しゃをめぐっては、

▽父母ちちはは双方そうほうが親権しんけんを持もつ「共同きょうどう親権しんけん」か、いずれか一方いっぽうとするいまの「単独たんどく親権しんけん」を選えらべる案あんと、

▽「単独たんどく親権しんけん」を維持いじする案あんが併記へいきされています。

また、子こどもの養育よういく費ひや、離はなれて暮くらす親子おやこが定期ていき的てきに会あう「面会めんかい交流こうりゅう」などについても考え方かんがえかたが示しめされました。

いまは、養育よういく費ひなどの取り決とりきめをしなくても離婚りこんできますが、たたき台たたきだいには、

▽必要ひつような取り決とりきめをしなければ原則げんそく離婚りこんできないとする案あんと

▽要件ようけんとはせずにこれまでの制度せいどを維持いじし、取り決とりきめを促うながす方策ほうさくを引き続ひきつづき部会ぶかいで検討けんとうしていくとする案あんが盛り込もりこまれています。

また、父母ちちははの協議きょうぎが整ととのわないまま離婚りこんしたり、別居べっきょ状態じょうたいになったりして、養育よういく費ひの不払ふばらいなどが想定そうていされることから、一定いってい額がくの養育よういく費ひを支払しはらう義務ぎむが発生はっせいする「法定ほうてい養育よういく費ひ制度せいど」を新設しんせつする案あんも明記めいきされています。

家族かぞく法制ほうせい部会ぶかいでは、このたたき台たたきだいをもとに中間ちゅうかん試案しあんを取とりまとめ、9月つき以降いこうにパブリックコメントを行おこなって広ひろく意見いけんを募つのったうえで、議論ぎろんを続つづけることにしています。

議論ぎろんの背景はいけいは

厚生こうせい労働ろうどう省しょうの人口じんこう動態どうたい統計とうけいによりますと、離婚りこんの件数けんすうは統計とうけいを取とり始はじめた昭和しょうわ22年ねんには8万まん件けんを下回したまわっていましたが、平成へいせいに入はいって倍増ばいぞうし、おととしには年間ねんかんおよそ20万まん件けんにのぼっています。

こうした中なか、離婚りこん後ごの子こどもの養育よういくに関にかんして司法しほうの場ばで争あらそわれるケースは大幅おおはばに増ふえています。

司法しほう統計とうけいによりますと、おととし裁判所さいばんしょに審判しんぱんや調停ちょうていが申し立もうしたてられた件数けんすうは、

▽養育よういく費ひに関にかんしてが2万まん727件けん、

▽子こどもと定期ていき的てきに会あう「面会めんかい交流こうりゅう」が1万まん4868件けん、

▽「子こどもの引き渡ひきわたし」が4040件けんで、

平成へいせい11年ねんと比くらべるとこの20年ねん余あまりでそれぞれ

▼1.7倍ばい、

▼6.8倍ばい、

▼7倍ばいに増加ぞうかしています。

法務省ほうむしょうによりますと、調停ちょうていなどで養育よういく費ひや面会めんかい交流こうりゅうに関にかんする取り決とりきめをしても、守まもられないケースが多おおくなっているということです。

家族かぞく法ほうが専門せんもんで法制ほうせい審議しんぎ会かいの部会ぶかいの委員いいんを務つとめる早稲田わせだ大学だいがくの棚たの村むら政行まさゆき教授きょうじゅは「少子しょうし化かや、共働ともばたらきの増加ぞうかで父親ちちおやも積極せっきょく的てきに育児いくじに関かかわるようになり、社会しゃかいや家族かぞくの在り方ありかたが変かわっているのに、離婚りこんしたあとの子こどもの養育よういくについてはルールが明確めいかくになっておらず、争あらそいが起おきやすい状態じょうたいになっている。いま一いち度ど、法ほう制度せいどを見直みなおす必要ひつようがある」と指摘してきします。

そのうえで「離婚りこん後ご、親おやどうしは他人たにんになるにしても子こどもとの関係かんけいは続つづく。立場たちばの違ちがいで意見いけんの対立たいりつがある問題もんだいだが、子こどもにとって非常ひじょうに重要じゅうようなことを決きめるので、社会しゃかい全体ぜんたいで関心かんしんを持もってほしい」と話はなしています。

「共同きょうどう親権しんけん」で何なにが変かわる

民法みんぽうで定さだめる親権しんけんとは、子こどもの利益りえきのために身の回みのまわりの世話せわや教育きょういくをしたり、財産ざいさんを管理かんりしたりする権限けんげんで、義務ぎむでもあるとされています。

親権しんけんを持もつ人ひとは子こどもに関かかわる重要じゅうような事柄ことがらを決きめる権限けんげんがあり、例たとえば、子こどもが住すむ場所ばしょを決きめたり、子こども名義めいぎの財産ざいさんを管理かんりしたりできるほか、進学しんがく先さきや大おおきな病気びょうきやけがをしたときに受うけさせる医療いりょう行為こういの選択せんたくなども含ふくまれます。

日本にっぽんでは現在げんざい、離婚りこんしたあとの未み成年せいねんの子こどもの親権しんけんは父ちちか母ははのどちらか一方いっぽうが持もつ「単独たんどく親権しんけん」を採用さいようしていますが、「共同きょうどう親権しんけん」が選えらべるようになると、子こどもを育そだてるうえで必要ひつような決定けっていに双方そうほうの親おやが関かかわることができるようになります。

「単独たんどく親権しんけん」の場合ばあい、決定けっていにあたってもう一方いっぽうの親おやの同意どういが必要ひつようないため、スムーズに意思いし決定けっていできるというメリットがありますが、親権しんけんを持もたない親おやが子育こそだてに関かかわりづらく、子こどもとの交流こうりゅうが絶たたれたり、親おやとしての責任せきにん感かんが薄うすくなり養育よういく費ひの支払しはらいが滞とどこおったりするなどのデメリットも指摘してきされています。

一方いっぽう、「共同きょうどう親権しんけん」の場合ばあい、離婚りこんしたあとも父ちちと母ははの双方そうほうが子こどもの成長せいちょうに関かかわれるというメリットがありますが、合意ごういに時間じかんがかかり子こどもが板いたばさみになる可能かのう性せいや、DVや虐待ぎゃくたいなどのおそれがあるケースでは子こどもの安全あんぜんを守まもれないと懸念けねんする声こえもあります。

「共同きょうどう親権しんけん」期待きたいする声こえ

法制ほうせい審議しんぎ会かいの議論ぎろんについて、離婚りこんしたあとも子こどもの養育よういくに関かかわることを望のぞむ人ひとたちからは法ほう改正かいせいに期待きたいする声こえが上あがっています。

部会ぶかいの委員いいんで、別居べっきょや離婚りこんしたあとも子こどもとの面会めんかいが自然しぜんにできる社会しゃかいを目指めざして活動かつどうしている「親子おやこの面会めんかい交流こうりゅうを実現じつげんする全国ぜんこくネットワーク」代表だいひょうの武田たけだ典のり久ひささんは「男性だんせいの育児いくじ参加さんかは一般いっぱん的てきとなり、離婚りこん後ごも子こどもの成長せいちょうに関かかわりたいと考かんがえる親おやはますます増ふえると想定そうていされる。離婚りこん後ごも子こどもの養育よういくに責任せきにんを持もつことを明あきらかにする意味いみでも、共同きょうどう親権しんけんを認みとめることが必要ひつようだ」と訴うったえます。

武田たけださんの団体だんたいが子こどもと別居べっきょ状態じょうたいにある親おやを対象たいしょうに先月せんげつから行おこなっているアンケートによりますと、これまでに回答かいとうした400人にん余あまりのうち「面会めんかい交流こうりゅう」について調停ちょうていなどで取り決とりきめをしていても「実施じっしされていない」、または「取り決とりきめ以下いかの実施じっし」と答こたえた人ひとは合あわせて35.8％にのぼるということです。

武田たけださんは取り決とりきめがあっても十分じゅうぶんに実施じっしされていない現状げんじょうがうかがえるとして「法律ほうりつで責任せきにんを明確めいかくにすることで養育よういく費ひの支払しはらいや面会めんかい交流こうりゅうの状況じょうきょうも改善かいぜんしていくと思おもう。『離婚りこんは親子おやこの別わかれ』ではなく『離婚りこん後ごも子こどもの成長せいちょうに責任せきにんを持もつ』という新あたらしい価値かち観かんに対応たいおうし、子こどもの利益りえきにつながるような法ほう改正かいせいに期待きたいしたい」と話はなしていました。

「共同きょうどう親権しんけん」懸念けねんの声こえ

選択せんたく的てきであっても「共同きょうどう親権しんけん」を認みとめることには慎重しんちょうな意見いけんもあります。

ひとり親おやの支援しえん団体だんたいでつくる「シングルマザーサポート団体だんたい全国ぜんこく協議きょうぎ会かい」では先月せんげつ下旬げじゅんから今月こんげつ上旬じょうじゅんにかけてひとり親おやを対象たいしょうにインターネットでアンケート調査ちょうさを行おこないました。

それによりますと、離婚りこんを決断けつだんした理由りゆうについて複数ふくすう回答かいとうで尋たずねたところ、2200人にん余あまりの回答かいとうで最もっとも多おおかったのが「子こどもによくない影響えいきょうがあった」で37.2％でした。

具体ぐたい的てきな内容ないようとしては「夫婦ふうふの口論こうろんなどを子こどもに見みせたくなかった」が58.8％で最もっとも多おおく、次ついで「自分じぶんへの暴力ぼうりょくや暴言ぼうげんを子こどもが見みていた」が54.9％、「相手あいてが子こどもを虐待ぎゃくたいすることがあった」が33.5％などとなっています。

団体だんたいでは離婚りこん後ごの共同きょうどう親権しんけんが子こどもにとってよいとは言いい切きれず、虐待ぎゃくたいやDVなどから逃にげた子こどもやひとり親おやが十分じゅうぶん守まもられないおそれがあると懸念けねんしています。

団体だんたいの代表だいひょうで、法制ほうせい審議しんぎ会かいの部会ぶかいの委員いいんも務つとめる赤石あかし千せん衣子きぬこさんは「子こどもの安心あんしん・安全あんぜんが守まもられていない状況じょうきょうで、進路しんろや医療いりょうの方針ほうしんなどさまざまな決定けっていを父親ちちおやと母親ははおやが共同きょうどうでやることは不可能ふかのうだ。養育よういく費ひについては子こどもの貧困ひんこん対策たいさくから早はやく議論ぎろんを進すすめるべきだと思おもうが、面会めんかい交流こうりゅうや共同きょうどう親権しんけんについてはより慎重しんちょうな議論ぎろんが必要ひつようだ」と話はなしています。

子こども支援しえんするNPOは

親おやが離婚りこんした子こどもたちの支援しえんなどにあたるNPO法人ほうじん「ウィーズ」の理事りじ長ちょうで、みずからも子こどものときに親おやの離婚りこんを経験けいけんしている光本みつもと歩あゆみ理事りじ長ちょうは、中間ちゅうかん試案しあんのたたき台たたきだいについて「『子こどもの気持きもちに配慮はいりょする』という文言もんごんは盛り込もりこまれているものの、具体ぐたい的てきにどうやって子こどもから意見いけんを聞きき、どのように配慮はいりょするのかという議論ぎろんはされていないので、もう少もうすこし知恵ちえを出し合だしあう必要ひつようがある」と指摘してきします。

そのうえで、たたき台たたきだいで示しめされている共同きょうどう親権しんけんを選択せんたくできる案あんについては「子こどもがいちばん嫌いやがり、傷きずつくのは、父親ちちおやと母親ははおやが争あらそうことだ。子こどもの気持きもちを考かんがえた時ときに、選択せんたく的てき共同きょうどう親権しんけんになったら父母ちちははの争あらそいが長引ながびかなくて済すむのか、逆ぎゃくに争あらそいが長引ながびく火ひだねになるのかを冷静れいせいに見みていく必要ひつようがある。ケースによって抱かかえる問題もんだいが違ちがうので、それぞれの子こどもに合あわせた支援しえんやサポートが必要ひつようだ」としています。

また、子こどもたちの支援しえんを通をとおして感かんじていることとして「子こどもに会あおうとしない親おやや、相手あいてと関かかわりを持もちたくないと養育よういく費ひを拒こばむ親おやも少すくなからずいる。こうした問題もんだいも含ふくめて、子こどもを育そだてるとはどういうことなのか、家族かぞくという社会しゃかいの最小さいしょう単位たんいがどうあるべきか、日本にっぽん全体ぜんたいで目めを向むけるべき問題もんだいだと思おもう」と話はなしています。