ロシア・ラブロフ外相「南部や南東部の掌握も視野」
また「欧米側はウクライナに射程の長い兵器を供与し、状況を悪化させている。地理的な目標は、今後さらに広がるだろう」と述べ、ウクライナへの軍事支援を強める欧米をけん制しました。
プーチン政権はこれまで、ロシア系住民の保護を名目として東部2州の掌握を作戦目標に掲げてきましたが、ラブロフ外相の発言は、支配地域の目標を拡大するもので、東部2州以外への攻撃も正当化するとともに、掌握した地域を将来、一方的にロシアに併合することも視野に入れ、南部などで「ロシア化」を進めたい思惑もあるとみられます。
一方、ウクライナ軍はロシア側が掌握したと主張する南部ヘルソン州などで反撃を続けています。 ヘルソン州の親ロシア派勢力の幹部は、ロシアのメディアに対し、ウクライナを縦断するドニプロ川にかかる要衝の橋が、ウクライナ側に攻撃されたと明らかにしました。 親ロシア派勢力は、橋の攻撃に、アメリカが供与した高機動ロケット砲システム=ハイマースが使われたと主張した上で、「被害は深刻だ」としています。 イギリス国防省は20日、この橋は、ロシア軍が物資を補給し、部隊を移動させるために必要なルートだったと指摘し、ドニプロ川を渡る手段をめぐる攻防が、今後の南部の戦況をうらなう重要な要素になると分析しています。
こうした中、ドイツ国内でパイプラインを運営する事業者は20日、供給が再開される予定だと発表する一方で、供給量は40%にとどまるという見通しを示しました。 ロシア側は先月、国外に修理に出したタービンが制裁の影響で戻ってこないとして供給量を40%にまで削減していて、プーチン大統領は、20日、タービンが依然、戻っていないとしたうえで「設備が戻らなければ供給量は大幅に減る」とドイツ側をけん制しました。 さらに、今月末には別のタービン1台も修理に出す予定だと主張しました。 これに対してドイツ政府のホフマン副報道官は20日、記者会見で「ガスプロムには供給者としての義務がある」と述べ、供給の全面再開を強く求めましたが、ロシアが契約どおりの十分な量のガスを供給するかどうかは不透明です。
この会合はウクライナへの軍事支援を協議するため、アメリカが主催しているもので、20日、オンライン形式で開かれた4回目の会合には、およそ50か国の国防相らが参加しました。 会合にはウクライナのレズニコフ国防相も出席し、ロシア軍がウクライナ東部で掌握する地域を広げようと、激しい砲撃を続けていると説明しました。 これを受けてアメリカのオースティン国防長官は「戦争は重要な局面にあり、ウクライナに対する団結した支援は不可欠で、緊急なものだ」と強調した上で、ウクライナに高機動ロケット砲システム=ハイマースを、追加で4基、供与する方針を明らかにしました。
オースティン長官は会合のあとの記者会見で「ロシアは執ような砲撃を続けており、第1次世界大戦の恐怖を思い起こさせる残酷な戦術だ。ウクライナには砲撃に耐え、反撃するための火力が必要で、支援の勢いを維持し、強化するために、われわれは力強く後押ししていく」と強調しました。
そのうえで「本来は望まないことだが、武器の供与をお願いしなくてはならない。空爆や砲撃で人々が死なずにすむよう、防空システムを供与してほしい」と訴えました。 オレーナ氏は、ウクライナで子どもたちが犠牲になったりけがをしたりしていることに触れ「大統領夫妻としてではなく、子どもたちの親としてお願いしている」と述べ、いっそうの軍事支援を求めました。 ウクライナへの軍事支援をめぐっては、ウクライナの国防次官が先月「求めた兵器のうち、10%しか受け取れていない」と述べるなど、供与された兵器を、いかに早く戦闘の前線に届けるかが課題となっています。
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