1審しんと2審しんは死刑しけいを言い渡いいわたしましたが、加藤かとう死刑しけい囚しゅう側がわは、死刑しけいは重おもすぎるなどと主張しゅちょうして上告じょうこくしました。

2015年ねん（平成へいせい27年ねん）2月つき、最高さいこう裁判所さいばんしょは「犯行はんこうの動機どうきに酌量しゃくりょうの余地よちは見みいだせない」と指摘してきし、上告じょうこくを退しりぞける判決はんけつを言い渡いいわたし、刑けいが確定かくていしていました。

そして、26日にち午前ごぜん、収容しゅうようされていた東京とうきょう拘置こうち所しょで、加藤かとう死刑しけい囚しゅうに刑けいが執行しっこうされました。

死刑しけいが執行しっこうされたのは去年きょねん12月つき以来いらいで、岸田きしだ内閣ないかくでは2回かい目めです。

そのうえで「突然とつぜんの凶行きょうこうにより命いのちを奪うばわれた被害ひがい者しゃはもちろん、ご遺族いぞくの方々かたがたにとっても無念むねんこのうえない事件じけんだ。裁判さいばんで十分じゅうぶんな審理しんりを経へたうえで、最終さいしゅう的てきに死刑しけい判決はんけつが確定かくていしたもので、法務ほうむ大臣だいじんとして慎重しんちょうな上うえにも慎重しんちょうな検討けんとうを加くわえたうえで、死刑しけいの執行しっこうを命令めいれいした」と述のべました。

また、古川ふるかわ大臣だいじんは死刑しけい制度せいどの存廃そんぱいをめぐる議論ぎろんに関連かんれんして「凶悪きょうあく犯罪はんざいがいまだあとをたたないことをかんがみると、死刑しけいはやむをえず、廃止はいしは適当てきとうではない」と述のべました。

宮崎みやざき市しに住すむ元もとタクシー運転うんてん手しゅの湯浅ゆあさ洋ひろしさん(68)は、14年ねん前まえ、仕事しごと中ちゅうに東京とうきょう・秋葉原あきはばらで起おきた無む差別さべつ殺傷さっしょう事件じけんの現場げんばを通とおりかかり、けがをして倒たおれている人ひとに駆け寄かけよったところを後うしろから刺さされ、4日にちにわたり意識いしき不明ふめいの重体じゅうたいとなりました。

湯浅ゆあささんは26日にちの午前ごぜん、自宅じたくでインターネットのライブ配信はいしんを通つうじ、死刑しけいの執行しっこうについての古川ふるかわ法務ほうむ大臣だいじんの記者きしゃ会見かいけんの様子ようすを見みていました。

湯浅ゆあささんは「二度にどとこのような事件じけんを起おこさないよう調しらべるために、もっとやるべきことがあったのではないかと思おもうと、なんで、きょうなのかという思おもいがある。なぜあんな事件じけんを起おこしたのか、なぜ、無む差別さべつだったのか、本人ほんにんも結論けつろんが出でないままだったのではないかと思おもう。残念ざんねんだ」と話はなしました。

そのうえで事件じけんで亡なくなった大学生だいがくせいのことに触ふれ「あの事件じけんさえなければどんな社会しゃかい人じんになっていたのか。その後そのご、家庭かていを持もって子こどもが産うまれてという人生じんせいがあったのではないか。あの事件じけんさえなければという思おもいばかりです」と話はなしました。

加藤かとう死刑しけい囚しゅうは青森あおもり県けんの出身しゅっしんで、地元じもとの進学校しんがくこうを卒業そつぎょうしたあと岐阜ぎふ県けんの短大たんだいに進学しんがくし、事件じけんを起おこした当時とうじは工場こうじょうで派遣はけん社員しゃいんとして働はたらいていました。

事件じけんから1年ねん半はん余あまりがたった2010年ねん1月つきの初はつ公判こうはんでは起訴きそ内容ないようを認みとめ、「亡なくなられた方ほう、けがをされた方ほう、ご遺族いぞくには大変たいへん申し訳もうしわけないことをしました。せめてものつぐないとして私わたしにできることはどうして今回こんかいの事件じけんが起おきたのかを明あきらかにすることです」と述のべました。被告ひこく人じん質問しつもんでは事件じけんを起おこした理由りゆうとしてインターネットの掲示板けいじばんで嫌いやがらせを受うけたことなどを挙あげ、「現場げんばに着ついた後のち、意思いしとは別べつに体からだが拒否きょひして交差点こうさてんに進入しんにゅうできず、このまま戻もどろうとも考かんがえたが、自分じぶんの居場所いばしょがどこにもないと気付きづいて結局けっきょくやるしかないと思おもった」と述のべました。

2審しんでは法廷ほうていに1度ども姿すがたを見みせず、遺族いぞくからは「反省はんせいやおわびの気持きもちがあるとは思おもえない」という批判ひはんの声こえが上あがりました。この頃ころには、遺族いぞくや被害ひがい者しゃに送おくっていた謝罪しゃざいの手紙てがみは途絶とだえ、被害ひがい者しゃから拘置こうち所しょで面会めんかいを求もとめられても応おうじませんでした。2審しんの東京とうきょう高等こうとう裁判所さいばんしょでも死刑しけいが言い渡いいわたされ、弁護士べんごしは「死刑しけいは重おもすぎる」として上告じょうこくしましたが、2015年ねん2月つき、最高さいこう裁判所さいばんしょが上告じょうこくを退しりぞけ、死刑しけいが確定かくていしました。

加藤かとう死刑しけい囚しゅうは1審しん判決はんけつのあとから判決はんけつ確定かくていまでの間まに本ほんを4冊さつ出版しゅっぱんし、事件じけんの再発さいはつ防止ぼうしのためには何なにが必要ひつようか、自分じぶんなりの主張しゅちょうをつづっています。上告じょうこく中ちゅうに出版しゅっぱんされた2冊さつ目めの巻末かんまつには、「社会しゃかいに対にたいしての説明せつめい責任せきにんを果はたせたなら、後のちは、ご遺族いぞくや被害ひがい者しゃの方ほうのことだけを考かんがえ、殺ころされる日ひを待まつだけです」と記しるしていました。

休日きゅうじつでにぎわう秋葉原あきはばらの歩行ほこう者しゃ天国てんごくで、通行人つうこうにんが突っ込つっこんできたトラックに次々つぎつぎにはねられました。トラックを運転うんてんしていたのは派遣はけん社員しゃいんだった加藤かとう智さとし大だい死刑しけい囚しゅう。車くるまから降おりると、準備じゅんびしていたナイフで近ちかくにいた人ひとたちの腹はらや背中せなかなどを次々つぎつぎに刺さし、19歳さいから74歳さいまでの男女だんじょ7人にんの命いのちを奪うばい、10人にんに重軽傷じゅうけいしょうを負おわせました。買い物かいものなどで通とおりかかった人ひとたちを無差別むさべつに襲おそった事件じけんは、社会しゃかいに大おおきな衝撃しょうげきを与あたえました。

また、加藤かとう死刑しけい囚しゅうが携帯けいたい電話でんわを使つかってインターネットの掲示板けいじばんに生活せいかつや職場しょくばに対にたいする不満ふまんや犯行はんこう予告よこくを書き込かきこんでいたことも注目ちゅうもくを集あつめました。

事件じけんを起おこす前まえの月つきには勤務きんむ先さきの工場こうじょうの派遣はけん契約けいやくが終了しゅうりょうすると言いわれ「300人にん規模きぼのリストラだそうです。やっぱり私わたしは要いらない人ひとです」などと投稿とうこう。犯行はんこう直前ちょくぜんには「秋葉原あきはばらで人ひとを殺ころします」「車くるまでつっこんで、車くるまが使つかえなくなったらナイフを使つかいます」と犯行はんこうを予告よこくする内容ないようを書き込かきこんでいました。加藤かとう死刑しけい囚しゅうは動機どうきについて裁判さいばんで「掲示板けいじばんで『なりすまし』や『荒あらし』などの嫌いやがらせを受うけ、重大じゅうだい事件じけんを起おこすことでやめさせようとした」と述のべ、掲示板けいじばんについては「建て前たてまえではなく本音ほんねで語り合かたりあえる場ばで、生活せいかつの中なかで心こころのよりどころだった」と説明せつめいしました。1審しん判決はんけつは事件じけんの動機どうきとして掲示板けいじばんについて挙あげたうえで「家族かぞく、友人ゆうじん、仕事しごとなどを失うしないどこにも居場所いばしょがないという非常ひじょうに強つよい孤独こどく感かんを感かんじていたことも背景はいけいにある」と指摘してきしました。さらに、白昼はくちゅうの歩行ほこう者しゃ天国てんごくで起おきた事件じけんは、警備けいびが比較的ひかくてき緩ゆるやかで不ふ特定とくてい多数たすうの人ひとが集あつまる場所ばしょの安全あんぜん確保かくほやテロ対策たいさくについて、議論ぎろんが進すすむ契機けいきとなりました。