このため、本来ほんらいは担任たんにんを持もたないはずだった「教務きょうむ主任しゅにん」がクラス担任たんにんを兼務けんむし、2人にん分ぶんの仕事しごとに追おわれているというのです。

「教務きょうむ主任しゅにん」の田中たなか秀明ひであき教諭きょうゆ。本来ほんらいは担任たんにんを持もたずに学校がっこう全体ぜんたいのカリキュラムを考かんがえるのが仕事しごとです。しかし、産休さんきゅうに入はいった先生せんせいの代かわりに3年生ねんせいのクラスの担任たんにんを兼務けんむしています。

先月せんげつ（7月つき）中旬ちゅうじゅん、田中たなか先生せんせいの一いち日にちに密着みっちゃくさせてもらいました。

そのため、田中たなか先生せんせいが担任たんにんとして授業じゅぎょうをしている間ま、校長こうちょうや教頭きょうとうなどが一部いちぶの業務ぎょうむを肩代かたがわりしていて、校長こうちょうが新任しんにんの担任たんにんの授業じゅぎょうを見みて回まわり助言じょげんをしていました。

一方いっぽう、授業じゅぎょうを終おえた田中たなかさん。午後ごご2時半じはんごろに児童じどうが下校げこうすると「教務きょうむ主任しゅにん」の仕事しごとにとりかかります。

まず栄養えいよう教諭きょうゆなどと9月つきの給食きゅうしょくの献立こんだての会議かいぎを行おこないます。

午後ごご5時じ前まえに職員しょくいん室しつに戻もどると、不ふ在中ざいちゅうにほかの教員きょういんからの伝言でんごんメモが4件けんたまっていて、しばらくその処理しょりに追おわれていました。

職員しょくいん会議かいぎの資料しりょうや夏休なつやすみの日程にってい表ひょうの作成さくせい、教育きょういく委員いいん会かいからの通知つうちの配布はいふなどを終おえると、時刻じこくは午後ごご8時じ40分ふん。

校内こうないの戸締とじまりを確認かくにんして職員しょくいん室しつの鍵かぎを閉しめた時ときには午後ごご11時じを回まわっていました。

「もう毎日まいにちギリギリで、担任たんにんとしてできているのは70％から80％くらい、教務きょうむ主任しゅにんとしては50％から60％くらいです。どちらも100％やりたい思おもいはありますが、限かぎられた時間じかんでは厳きびしく、もう1人にん自分じぶんが必要ひつようです。教材きょうざい研究けんきゅうの時間じかんもとれず、子こどもたちに合あった授業じゅぎょうを考かんがえる時間じかんがほしいです。もし、もう1人にん減へったら、学校がっこうは回まわらなくなってしまうと思おもいます」

その結果けっか、ことし5月つき時点じてんで▽小学校しょうがっこうで1487人にん、▽中学校ちゅうがっこうで778人にん、▽高校こうこうで214人にん、▽特別とくべつ支援しえん学校がっこうで321人にんと合あわせて2800人にん不足ふそくしていることがわかりました。

国くにの去年きょねんの調査ちょうさ結果けっかから735人にん、率りつにして36％増ふえています。

把握はあくしている範囲はんいで、小学校しょうがっこうで学級がっきゅう担任たんにんが足たりないケースが生しょうじていると回答かいとうした教育きょういく委員いいん会かいは32あり、このうち少すくなくとも12は、校長こうちょうや教頭きょうとうといった管理かんり職しょくが代かわりに担任たんにんをしているケースがあると答こたえました。

しかし、先月せんげつ中旬ちゅうじゅんに、新あらたにフルタイムで働はたらける非ひ常勤じょうきん講師こうしが見みつかったため、笠原かさはらさんは、8月つきから再ふたたび別べつの教員きょういんが不足ふそくしている小学校しょうがっこうに異動いどうすることになりました。

学年がくねん集会しゅうかいで校長こうちょうから、笠原かさはら先生せんせいの異動いどうと、2学期がっきから新あたらしい先生せんせいが来くることが伝つたえられると、突然とつぜんのことに驚おどろいて泣なき出だしてしまう児童じどうもいました。

「私わたし自身じしんも寂さびしいし離はなれたくないし、児童じどうにとっても1年間ねんかん同おなじ先生せんせいの方ほうがいいとは思おもいます。しかし、代かわりの先生せんせいが見みつかるまで、子こどもたち、保護ほご者しゃ、先生せんせい方かたの不安ふあんをなくす役割やくわりで派遣はけんされているので、残のこり3日間にちかん、悔くいのないように子こどもとの信頼しんらい関係かんけいを作つくって終おわれればと思おもっています」

高谷たかや昌あきら校長こうちょう

「子こどもたちにとっては担任たんにんがころころ代かわるのがいちばん困こまると思おもいますし、半年はんとしですでに3人にん目めの担任たんにんになるので、保護ほご者しゃも学校がっこうに不信ふしん感かんを持もたないかとても心配しんぱいです。現場げんばはいつ破綻はたんしてもおかしくない状況じょうきょうで、バタバタと補強ほきょう態勢たいせいを作つくって毎日まいにちをどうにかやり過やりすごしているのが現状げんじょうです。教員きょういん不足ふそくで空あき時間じかんがなく、ほかの人ひとの仕事しごともしなければならず余裕よゆうもない。そのしわ寄しわよせで教員きょういんたちが潰つぶれないでほしいと心配しんぱいしています」

Q結果けっかをどのように受け止うけとめる？

「去年きょねんより教員きょういん不足ふそくの状況じょうきょうが深刻しんこく化かしていることが明あきらかになったが、何なにの対策たいさくも打うたれなければ、来年らいねん再来さいらい年ねんはもっと深刻しんこく化かする可能かのう性せいが高たかい。結果けっかとして子こどもたちにもっと大おおきな負担ふたん、しわ寄しわよせが及およぶことになる。当たり前あたりまえのように続つづいてきた教育きょういくシステムが根本こんぽん的てきに揺ゆらいでいるともいえる非常ひじょうに深刻しんこくな状況じょうきょうだ」

Qどうして教員きょういん不足ふそくに？背景はいけいは？

「正規せいき教員きょういんの数かずが減へらされ非ひ正規せいきの人ひとも枯渇こかつして人手ひとで不足ふそくになった結果けっか、みんなの労働ろうどう量りょうが増ふえてしまいますます教員きょういんになりたい人ひとが減へるという悪あく循環じゅんかんにある。先生せんせいになりたいと思おもってくれる人ひとを増ふやすため働はたらき方かた改革かいかくも大切たいせつだが現場げんばの努力どりょくでは限界げんかいがあり根本こんぽん的てきには人手ひとでを増ふやさないと仕事しごとの量りょうは減へらない」

Qどうすれば？

「国くには地方ちほう自治体じちたいが正規せいきの教員きょういんを長期ちょうき的てきに増ふやしていくための計画けいかくを立たてられるよう財政ざいせい的てきな支援しえんをしていくことが重要じゅうようだ。どこに住すんでいても等ひとしく教育きょういくを受うけられるよう、国くにも地方ちほう自治体じちたいも一丸いちがんとなって取り組とりくんでいく必要ひつようがある」

まず「給きゅう特とく法ほう」という法律ほうりつにより月つきの給料きゅうりょうの4％が上乗うわのせされる代かわりに、時間じかん外がい手当てあてが出でない待遇たいぐうの改善かいぜんをあげた自治体じちたいが多おおくありました。

また「年度ねんど途中とちゅうで欠員けついんが増ふえることなどを想定そうていした定数ていすうの増加ぞうか」や「教員きょういんの業務ぎょうむを支援しえんするスタッフの増加ぞうか」、それに「再さい任用にんようの教員きょういんの給与きゅうよ改善かいぜんなど、人ひとを増ふやして働はたらき方かた改革かいかくにつなげるための予算よさんの増加ぞうか」が挙あげられました。

このほか「教員きょういん免許めんきょが取とれる大学だいがくの学部がくぶの定員ていいんを増ふやしてほしい」という意見いけんもありました。

ことし5月つき時点じてんの教員きょういん不足ふそくが145人にんと去年きょねんの1.7倍ばいに増加ぞうかした神奈川かながわ県けんでは、教員きょういん免許めんきょを持もちながらも現場げんばを離はなれている人材じんざいを掘り起ほりおこそうと「ペーパーティーチャー研修けんしゅう講座こうざ」を去年きょねん5月つきから始はじめました。

学校がっこう現場げんばの最新さいしん状況じょうきょうや授業じゅぎょうの進め方すすめかたなどを伝つたえたうえで、教員きょういんの不足ふそくが生しょうじたときに臨時りんじで働はたらくことを希望きぼうする人ひとを県けんの名簿めいぼに登録とうろくしていて、講座こうざの開設かいせつ以降いこう、190人にんが受講じゅこうし、すでに12人にんが臨時りんじ的てき任用にんよう教員きょういんなどで採用さいようされたということです。

しかし講座こうざで生徒せいとどうしに議論ぎろんさせて考かんがえさせる最新さいしんの学校がっこうの授業じゅぎょうの様子ようすを学まなんだほか、正規せいき教員きょういんの採用さいよう試験しけんを受うけるまで学校がっこう現場げんばで働はたらくための手続てつづきを知しることができ、高校こうこうの教員きょういんとして働はたらく決心けっしんがついたといいます。

ことし4月つきからは、休やすみに入はいった教員きょういんの代かわりに通常つうじょうの国語こくごの授業じゅぎょうに加くわえ部ぶ活動かつどうの顧問こもんもしているほか、夏休なつやすみの期間きかん中ちゅうも教おしえるなど正規せいき教員きょういんと同おなじ役割やくわりを担になっています。

川崎かわさきさんは「教員きょういん免許めんきょは取とったものの24年ねんも前まえの話はなしで、いま免許めんきょがどんな状態じょうたいになってるのかわからないし、高校こうこうの授業じゅぎょうのスタイルも全まったくわからなかったので、講座こうざに参加さんかしていなかったら、4月つきから高校こうこうで教おしえることもなかったと思おもいます。今いままでの経験けいけんを少すこしでも生徒せいとたちに還元かんげんし、わくわくする授業じゅぎょうをやっていきたいです」と話はなしていました。

一方いっぽうで、教育きょういく委員いいん会かいでは効果こうかは実感じっかんしつつも教員きょういん不足ふそくに対応たいおうするには、自治体じちたいだけの努力どりょくでは限界げんかいがあるとしています。