東日本大震災の
被災地では
震災の
記憶や
教訓を
伝えるため、
被災した
建物を
震災遺構として
保存し、
展示室などを
設けて
津波が
襲った
時の
映像を
見せている
所もあり、
訪れた
人にどの
程度刺激の
強い
映像を
見せるべきか
議論が
続いています。
東日本大震災から
9年となるのを
前に、
NHKが
岩手・
宮城・
福島の
被災者およそ2000
人にアンケートを
行ったところ、
7割が「
津波が
襲った
時の
様子をありのままに
伝えるため
配慮を
最小限にとどめた
映像」を
見せるべきだと
回答しました。
NHKは、
去年12
月からことし
1月にかけて、
岩手・
宮城・
福島の
被災者や
原発事故の
避難者など4000
人余りを
対象に
アンケートを
行い、48%にあたる1965
人から
回答を
得ました。
この中で、震災遺構の展示室などで見せる津波が襲った時の映像はどのような映像が適切だと思うか尋ねたところ、
▽「津波が襲った時の様子をありのままに伝えるため配慮を最小限にとどめた映像」が70%と最も多く、
▽「心理的なショックを与えないよう最大限配慮し刺激を抑えた映像」の24%と、▽「津波が襲った時の映像は見せるべきではない」の4%を大きく上回りました。
こうした傾向は、配偶者や子ども、親、きょうだいといった家族を亡くした被災者や、家屋が全壊したり津波で流出した被災者に限って分析しても変わらず、いずれも「ありのままに伝えるための映像」が70%を超えました。
また、「ありのままに伝えるための映像」がいいと思う理由を尋ねたところ、
▽「震災の恐ろしさを十分伝えるために必要だから」が69%と最も多く、
▽次いで「被災の記憶が風化してきているから」が10%、
▽「被災した経験や記憶がない人が増えたから」が7%でした。
専門家「怖さ伝えるのが被災者の思い」
アンケートの分析にあたった社会心理学が専門の兵庫県立大学の木村玲欧教授は「大きな被害を受けた被災者の多くが、震災の被害をありのままに伝えることを望んでいるという今回の結果を私たちは真摯(しんし)に受け止めなければいけない。日本に住むかぎり避けようがない大きな危機について、その大きさや怖さをしっかり伝え、それを理解し受け止めてもらいたいという、被災者の思いの表れだと思う」と話しています。
自由記述欄に記された思い
アンケートの自由記述には伝承施設などで見せる津波が襲った時の映像について、さまざまな意見が寄せられました。
「津波が襲った時の様子をありのままに伝えるため配慮を最小限にとどめた映像」を見せるべきだと回答した人のうち、岩手県大槌町の50代の男性は「人は見たくないものからは目をそらし、自分の身に襲いかかるかもしれない災いは考えないようにし、経験した災害は早く忘れようとする。現実を見つめ、最悪の状況を想定し、精神的に耐えうる人は未来の人のために、つらい経験・貴重な体験を伝えることは、試練ではあるが、使命でもあると思う。震災経験者の『つらさからの逃避』は、未来の人の被災につながると感じる」とつづりました。
震災当時福島県浪江町に住んでいた須賀川市の70代の男性は「3.11災害体験や戦争体験など風化させないよう、細く長く次世代に映像を見せていってほしい」と書きました。
岩手県陸前高田市の女性は「震災をいつまでもわすれないでほしい。津波伝承館ができたことで全国から人がきています。つなみを忘れない所ができありがたいです」と記しました。
一方、「津波が襲った時の映像は見せるべきではない」と回答した人のうち、岩手県大槌町の70代の男性は、震災遺構を残すことには反対だとしたうえで、「強烈な津波映像も見せたくない。特に子ども、低学年や幼児にはインパクトが強すぎる。津波の恐ろしさを伝えるためには、口伝がいちばんよい、効果がある」と書きました。