一方、イスラエル軍は「戦争の次の段階に向けて攻撃を強化する」として、地上侵攻を含む大規模な軍事作戦も示唆していて、人道危機のさらなる悪化の懸念が続いています。
※22日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
ハマス “新たに2人解放の用意 イスラエルが拒否”と主張
イスラム組織ハマスは、拘束している女性2人を22日に新たに解放する用意ができているとSNSで発表しました。
20日に解放した2人と同じ手順で解放するとしていますが、イスラエルが受け入れを拒否したと主張しています。
これに対し、イスラエル首相府は声明で「ハマスによるプロパガンダに付き合うつもりはない」とハマス側の主張を否定したうえで「すべての人が帰れるために必要なことはすべて行う」としています。
国連事務次長「新たにトラック20~30台がガザ入りの可能性」
ガザ地区への継続的な人道支援物資の搬入が求められる中、OCHA=国連人道問題調整事務所のトップを務めるマーティン・グリフィス国連事務次長はロイター通信の取材に応じ、「現在、交渉しているところだが、22日に新たに20台から30台のトラックがガザ地区に入れるかもしれないと聞いている」と話し、支援物資を継続的に搬入するための話し合いが続けられていると明らかにしました。
バイデン大統領「検問所の運用維持へすべての当事者と協力」
アメリカのバイデン大統領は21日、声明を発表し、ガザ地区への人道支援物資の搬入について「最高レベルによる外交の成果だ」としてエジプトのシシ大統領やイスラエルのネタニヤフ首相、国連に感謝の意を示しました。
そして「アメリカはガザの人たちがハマスによる横流しを受けずに、食料や水、医療、そしてそのほかの支援を確実に受けられるよう取り組んでいく」と強調しました。
その上で「ラファ検問所の運用を維持出来るようすべての当事者と協力していく」としています。
一方、イスラエル軍による地上侵攻が近いともされるなか、バイデン大統領は21日、地元の東部デラウェア州で記者団から「地上侵攻を遅らせるようイスラエルに促しているのか」と問われたのに対し「イスラエルとは協議している」と応じるにとどめました。
5つの国連機関“人道状況は壊滅的 支援継続を” 共同声明
WHO=世界保健機関やUNICEF=国連児童基金などの5つの国連機関は21日、ガザ地区に人道支援物資が到着したことを歓迎する一方で、人道状況は壊滅的だとして支援の継続を訴える共同声明を出しました。
声明では、「今回の物資は、必需品を絶たれたガザ地区の数十万人の民間人の命のため、緊急に必要なものを提供する一方、ほんの始まりにすぎず、十分とは言いがたい」として、ガザ地区で支援を必要とする160万人以上の人たちを支えるには、足りないとしています。
そして、ガザ地区では、食料が底をつきかけているほか、病気の流行や医療の不足で死亡率が急上昇するのも時間の問題だと指摘しました。
その上で、一連の衝突の前から絶望的な人道状況にあったガザ地区が、今では壊滅的な状況にあるとして停戦を求めるとともに、人道支援が滞りなく継続して出来るよう当事者に協力を呼びかけています。
イスラエル軍参謀総長「ガザ地区に突入」地上侵攻迫ること示唆
イスラエル軍が大規模な地上侵攻への準備を進めるなか、21日夜、イスラエル軍トップのハレビ参謀総長がガザ地区周辺に展開している精鋭部隊を視察しました。
このなかでハレビ参謀総長は「ガザ地区に突入する。そしてハマスの工作員や施設を破壊する作戦を始める。われわれは2週間前の安息日に犠牲となった人々の姿や光景を思い起こすだろう」と述べ、地上侵攻が迫っていることを示唆しました。
そのうえで「ガザ地区は込み入った人口密集地で、敵も多くの準備をしているだろうが、我々もまた準備ができている」と集まった部隊の指揮官たちにげきを飛ばしました。
「カイロ平和サミット」各国の間で立場に隔たり
人道危機が深刻化するガザ地区の情勢などについて話し合う国際会議「カイロ平和サミット」が、21日、エジプト・カイロで行われ、合わせて30以上の国や国際機関などの代表が参加しました。
会議の冒頭、エジプトのシシ大統領が「争いが続いている現状を変えよう」などと参加者に呼びかけ、イスラエル・パレスチナ情勢の緊張緩和やガザ地区の人道状況の改善に向けた協力などについて参加者の間で意見が交わされました。
会議では、ガザ地区が深刻な人道危機に直面していて、一刻も早く、継続した人道支援物資の搬入が求められているという意見が多く出た一方で、ハマスとイスラエルを巡っては参加した各国の間で立場の隔たりが見られました。
このうちイラクのスダニ首相は「パレスチナでは住宅、教会、病院が攻撃され、民間人に対する、ジェノサイドが行われている」として、イスラエルを非難しました。
一方でEU=ヨーロッパ連合やドイツなどはあくまでハマスがテロ攻撃を行ったことが今回の一連の衝突の原因だと批判し、フランスのコロナ外相は「今回のようなテロが繰り返されないためにも、イスラエルには国際法の範囲内で自衛の権利がある」と述べました。
今回の会議で共同声明などは発表されませんでしたが、今後各国が立場の隔たりを越え、事態の緊張緩和や、ガザ地区への継続的な人道支援物資の搬入を実現できるかが注目されます。
支援物資に30万人分の医薬品など 搬入許可待ちの食料も
ガザ地区に到着した支援物資は、トラック20台分の医薬品や食料、それに水などです。
支援物資の中身について、パレスチナ赤新月社は21日に「トラック20台分の医薬品や食料などを受け取った」と発表し、WHO=世界保健機関は、支援物資には、30万人分の医薬品などが含まれているとしています。
また、UNICEF=国連児童基金は、2万2000人の1日分にあたる4万4000本以上の飲料水が検問所を通過したとしています。
このほか、WFP=世界食糧計画は、食料60トン分を積んだトラックが検問所を通過し、検問所の外では930トン分の食料が搬入の許可を待っているということです。
支援物資は、住民への配布に向けてガザ地区にあるUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関の倉庫に運び込まれたということです。
ガザ地区に支援物資到着も イスラエル軍 大規模な軍事作戦を示唆
ハマスによる大規模攻撃を受けたイスラエルがガザ地区を完全に封鎖し、人道危機が深まる中、21日、エジプトとの境界にあるラファ検問所が開放され、人道支援物資を載せたトラックが入りました。
これについてハマスが実効支配するガザ地区の当局は声明を発表し「限られた数のトラックではガザ地区の人道危機は改善できない」として、不足している燃料を含むすべての必要な物資の搬入を要求しています。
一方、イスラエル軍の報道官は21日、軍事目的で使用される可能性のあるガソリンなどの燃料については支援物資に含めることを認めない考えを示しました。
ガザ地区で必要とされる支援物資については国連が1日あたりトラック100台分の搬入が必要だとする一方、今回ガザ地区に入ったのは20台で、次の物資が到着するめども現時点で立っておらず人道危機が深刻化する中で十分な物資を安定的に行き渡らせることができるかが課題となっています。
こうした中、21日もガザ地区では激しい空爆が続いていて、イスラエル軍の報道官は「戦争の次の段階に向けてガザ地区北部にあるハマスの拠点への攻撃を強化する」と述べて、地上侵攻を含む大規模な軍事作戦に移ることを示唆した形です。
これに対して、ハマス側も報復として中部テルアビブなどに向けてロケット弾を発射しています。
今月7日からの一連の衝突では、イスラエル側で少なくとも1400人が死亡し、外国人を含む210人が人質にとられている一方、ガザ地区では少なくとも4385人が死亡し、双方の死者は5700人を超えています。
イスラエル軍がガザ地区への地上侵攻に踏み切れば犠牲者の増加は避けられず、人道危機のさらなる悪化の懸念が続いています。
イスラエル政府 エジプトとヨルダン滞在の自国民に出国を勧告
パレスチナのガザ地区への大規模な空爆で多くの住民が犠牲になる中、イスラム諸国などでイスラエルに対する抗議活動が強まっていることを受けて、イスラエル政府はエジプトとヨルダンに滞在している自国民に対し、ただちに出国するよう勧告しました。
勧告はイスラエル首相府とイスラエル外務省が21日に発表したもので、エジプトとヨルダン、そしてモロッコの3か国について渡航に関する警戒レベルを引き上げています。
このうちエジプトとヨルダンについては最も高い警戒レベル4とし、イスラエル国民に対し渡航を控えるとともに、滞在している人はただちに出国するよう求めています。
またモロッコについては警戒レベル3とし不要不急な渡航を避けるよう勧告しています。
このほかトルコやUAE=アラブ首長国連邦など中東の国々や、イスラム教徒が多いインドネシアなどについても滞在を避けることを推奨しています。
声明では「戦争が続くなか反イスラエルの抗議活動の著しい増加を、ここ数日、中東のアラブ諸国を中心に世界各国で目撃している」として、反イスラエル感情が各国で広がり、その矛先が海外にいるイスラエル国民に向かうおそれがあるとして警戒を呼びかけています。