“戸籍こせき上じょうの性別せいべつ変更へんこうに手術しゅじゅつは必要ひつようか” きょう最高裁さいこうさいが判断はんだん

性せい同一どういつ性せい障害しょうがいの人ひとの戸籍こせき上じょうの性別せいべつについて定さだめた特例とくれい法ほうでは、▽生殖せいしょく機能きのうがないことや▽変更へんこう後ごの性別せいべつに似にた体からだの外観がいかんを備そなえていることなど複数ふくすうの要件ようけんを満みたした場合ばあいに限かぎって性別せいべつの変更へんこうを認みとめていて、事実じじつ上じょう、手術しゅじゅつが必要ひつようとされています。

この要件ようけんについて戸籍こせき上じょうは男性だんせいで、女性じょせいとして社会しゃかい生活せいかつを送おくる当事者とうじしゃは「手術しゅじゅつの強制きょうせいは重大じゅうだいな人権じんけん侵害しんがいで憲法けんぽう違反いはんだ」として、手術しゅじゅつ無なしで性別せいべつ変更へんこうを認みとめるように家庭かてい裁判所さいばんしょに申し立もうしたてましたが、家裁かさいと高等こうとう裁判所さいばんしょは認みとめませんでした。

この申し立もうしたてについて最高さいこう裁判所さいばんしょ大だい法廷ほうていは9月つき、当事者とうじしゃ本人ほんにんが意見いけんを述のべる手続てつづきを経へて弁論べんろんを開ひらきました。そして25日にち、決定けっていを出だします。

最高さいこう裁判所さいばんしょは2019年ねん、別べつの人ひとの申し立もうしたてで、生殖せいしょく機能きのうをなくす手術しゅじゅつの要件ようけんは憲法けんぽうに違反いはんしないとして手術しゅじゅつ無なしの性別せいべつ変更へんこうを認みとめませんでした。

今回こんかいのケースは15人にんの裁判官さいばんかん全員ぜんいんによる大だい法廷ほうていで審理しんりされていて、新あらたな憲法けんぽう判断はんだんが示しめされる可能かのう性せいもあり、注目ちゅうもくされます。

特例とくれい法ほうの要件ようけんと過去かこの判断はんだんは

2004年ねんに施行しこうされた性せい同一どういつ性せい障害しょうがい特例とくれい法ほうでは、戸籍こせき上じょうの性別せいべつ変更へんこうを認みとめる要件ようけんとして、専門せんもん的てきな知識ちしきを持もつ2人にん以上いじょうの医師いしから性せい同一どういつ性せい障害しょうがいの診断しんだんを受うけていることに加くわえ、▽18歳さい以上いじょうであること▽現在げんざい、結婚けっこんしていないこと▽未み成年せいねんの子こどもがいないこと▽生殖せいしょく腺せんや生殖せいしょく機能きのうがないこと▽変更へんこう後ごの性別せいべつの性器せいきに似にた外観がいかんを備そなえていることの5つを定さだめていて、すべてを満みたしている必要ひつようがあります。

このうち▽生殖せいしょく腺せんや生殖せいしょく機能きのうがないことと▽変更へんこう後ごの性別せいべつの性器せいきに似にた外観がいかんを備そなえていることの2つが事実じじつ上じょう手術しゅじゅつが必要ひつようとされています。

司法しほう統計とうけいによりますと、2022年ねんまでに全国ぜんこくの家庭かてい裁判所さいばんしょで1万まん1919人にんの性別せいべつ変更へんこうが認みとめられました。

一方いっぽう、「手術しゅじゅつ無なしで性別せいべつ変更へんこうを認みとめてほしい」という申し立もうしたてもあり、最高さいこう裁判所さいばんしょはその1つに対にたいし、2019年ねん1月つき、「変更へんこう前まえの性別せいべつの生殖せいしょく機能きのうによって子こどもが生うまれると、社会しゃかいに混乱こんらんが生しょうじかねない」として4人にんの裁判官さいばんかん全員ぜんいん一致いっちで憲法けんぽうに違反いはんしないと判断はんだんし、申し立もうしたてを退しりぞけました。

ただ4人にんのうち2人にんは「手術しゅじゅつは憲法けんぽうで保障ほしょうされた身体しんたいを傷きずつけられない自由じゆうを制約せいやくする面めんがあり、現時点げんじてんでは憲法けんぽうに違反いはんしないが、その疑うたがいがあることは否定ひていできない」という補足ほそく意見いけんを述のべました。

「撤廃てっぱい」「必要ひつよう」 双方そうほうの団体だんたいから意見いけん

性別せいべつ変更へんこうの手術しゅじゅつ要件ようけんに関にかんする最高さいこう裁判所さいばんしょの審理しんりをめぐっては、要件ようけんを撤廃てっぱいすべきだという団体だんたいと、必要ひつようだとする団体だんたいの双方そうほうが要請ようせい活動かつどうを行おこなうなど、さまざまな意見いけんが出でています。

「LGBT法ほう連合れんごう会かい」のメンバーなどは10月つき5日にち、最高裁さいこうさいを訪おとずれて違憲いけん判断はんだんを求もとめました。団体だんたいでは「体からだの負担ふたんが大おおきい手術しゅじゅつをしなければ性別せいべつを変かえられないのは人権じんけん侵害しんがいだ。戸籍こせき上じょうの性別せいべつが違ちがう人ひとたちの不ふ利益りえきを改善かいぜんしてほしい」などと主張しゅちょうしています。

一方いっぽう「女性じょせいスペースを守まもる会かい」などの団体だんたいも10月つき17日にちに最高裁さいこうさいを訪おとずれ、憲法けんぽうに違反いはんしないとする判断はんだんを求もとめました。団体だんたいでは「要件ようけんがなくなると手術しゅじゅつを受うけなくても医療いりょう機関きかんの診断しんだんで性別せいべつ変更へんこうが可能かのうになり、女性じょせいが不安ふあんを感かんじるほか、法的ほうてきな秩序ちつじょが混乱こんらんする」と主張しゅちょうしています。

手術しゅじゅつを受うけた当事者とうじしゃは

性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつを行おこない戸籍こせき上じょうの性別せいべつを変更へんこうした男性だんせいに、手術しゅじゅつに至いたった経緯けいいやその後そのごの体からだの影響えいきょうについて聞ききました。

映像えいぞうクリエーターの木本もくほん奏そう太ふとしさん（32）は7年ねん前まえ、25歳さいの時ときに性別せいべつ適合てきごう手術しゅじゅつを受うけ、戸籍こせき上じょうの性別せいべつを女性じょせいから男性だんせいに変かえました。その経験けいけんや手術しゅじゅつ後ごの生活せいかつなどについてSNSなどで情報じょうほう発信はっしんしています。

手術しゅじゅつを受うけようと思おもったのは10代だいの後半こうはんのころで、その理由りゆうについて、「自分じぶんを隠かくして生いきるのがつらくて、このままでは生いきている意味いみがないのではと悩なやみ、手術しゅじゅつをすれば生いきていけるように感かんじた。手術しゅじゅつを受うけることが目標もくひょうになっていた」と話はなしていました。

現在げんざいは保険ほけんの適用てきようとなるケースもありますが、当時とうじは手術しゅじゅつ費用ひようを自分じぶんでまかなうしかなかったため20代だい前半ぜんはんのときに2年間ねんかん、アルバイトに明け暮あけくれ、200万まん円えんをためました。

その貯金ちょきんで先さきに胸むねの膨ふくらみを取とる手術しゅじゅつを受うけ、1週間しゅうかん程度ていどは動うごくことができないぐらいの痛いたみが続つづいたということです。

その後そのご、子宮しきゅうと卵巣らんそうを取り出とりだす手術しゅじゅつを受うけ、おなかに10センチくらいの傷痕きずあとができ、痛いたみもしばらく残のこったといいます。

その時ときの状況じょうきょうについて、「胸むねがなくなった時ときは自分じぶんがいやだったものが無なくなったのでうれしさもあったが、子宮しきゅうと卵巣らんそうを取とる手術しゅじゅつをした実感じっかんは痛いたさだけだった」と話はなしていました。

家庭かてい裁判所さいばんしょなどでの手続てつづきを終おえ、戸籍こせき上じょうの性別せいべつが変更へんこうされたことを知しらせる通知つうちを受うけました。

木本きもとさんは「人生じんせいに悩なやんだ時期じきもあり、ずっと頑張がんばって貯金ちょきんをしたり手術しゅじゅつを受うけたりした。この紙かみ1枚まいのために25年間ねんかん過すごしてきたのかと思おもったら、『嬉うれしい』という気持きもちより、虚無きょむ感かんや脱力だつりょく感かんという方ほうが大おおきかった」と振り返ふりかえっていました。

そのうえで「法律ほうりつの要件ようけんがなければ手術しゅじゅつのために2年間ねんかんアルバイトをする生活せいかつはしなかったし、健康けんこうな体からだにメスを入いれるのは望のぞんでいなかった。自分じぶんの意思いしで手術しゅじゅつをしたい人ひとは選択せんたくできる制度せいどであるべきだが、金銭きんせん的てきな問題もんだいなどで手術しゅじゅつを受うけられず、戸籍こせきを変更へんこうできない人ひともいる。手術しゅじゅつ要件ようけんがなくなる方向ほうこうの判断はんだんが、最高さいこう裁判所さいばんしょで出でたら良よいと思おもう」と話はなしていました。