財務省の
決裁文書の
書き換え
問題をめぐり、
国会では
27日、
佐川前国税庁長官の
証人喚問が
行われます。
書き換えが、
なぜ、
誰の
指示で
行われたのかや、
国有地売却も
含め
政治家の
影響や
関与があったのか
など、
一連の
経緯が
どこまで
明らかに
なるのかが
焦点です。
森友学園への
国有地売却に関する
財務省の
決裁文書の
書き換え
問題をめぐり、
国会では
27日、
書き換え
当時、
財務省で
理財局長を
務めていた
佐川前国税庁長官の
証人喚問が
衆参両院の
予算委員会で
行われます。
証人喚問では、書き換えが、なぜ、誰の指示で行われたのかや、佐川氏に加え組織的な関与がどの程度あったのか、さらに国有地売却も含め、安倍総理大臣や夫人の昭恵氏、それにほかの政治家の影響や関与があったのかなど、一連の経緯がどこまで明らかになるのかが焦点です。
安倍総理大臣は26日、自民党の役員会で「地検の捜査にも協力しながら、政府として徹底した調査を急がせたい。しっかりと全容を解明し、うみを出し切ることが重要だ」と強調しました。政府・与党は、問題の全容解明を進めるとともに、再発防止策に取り組むことで早期の収束につなげたい考えです。
一方、立憲民主党など野党5党は26日、文書の書き換えや、国有地の大幅な値引きの経緯などを、連携して追及していく方針を確認しました。野党側は、佐川氏の証人喚問をきっかけに、真相を明らかにするため、安倍総理大臣夫人の昭恵氏らの証人喚問も求めていくことにしています。
証人喚問は、衆参両院が持つ国政調査権として憲法で定められた制度で、議院証言法に基づいて行われ、虚偽の証言をした場合は偽証罪に問われる可能性があります。去年3月、森友学園への国有地売却をめぐって、学園の籠池前理事長に対して行われて以来、およそ1年ぶりとなります。
佐川氏証人喚問の流れ
佐川氏の証人喚問は、午前9時半から参議院予算委員会で、午後2時から衆議院予算委員会で、それぞれ2時間余り行われます。
このうち午前の参議院では、佐川氏に本人確認を行ったあと、佐川氏が真実を述べることを誓う「宣誓」をし、宣誓書に署名・なつ印します。
そして、質疑にあたる尋問に移り、金子委員長が「総括尋問」を行ったうえで、各会派が割り当てられた時間の範囲内で尋問します。午後の衆議院でも、参議院と同様に、宣誓などに続いて河村委員長や各会派が佐川氏に尋問することになっています。
証人喚問とは
「証人喚問」は、憲法62条で定められた国会の国政調査権を行使する方法として議院証言法で定められた制度で、国会が関係者を出頭させ事実を問いただします。
国会が委員会審議に関係者らの出席を求める方法としては、27日に行われる「証人喚問」より、審議の参考にするために意見などを聞く「参考人招致」のほうが頻繁に行われていますが、「参考人招致」は任意のため出席を拒むことができるほか、うその発言をした場合の罰則もありません。
これに対し、「証人喚問」で国会から証人として出頭を求められた人は、刑事訴追を受けるおそれがある場合など、正当な理由がない限り、出頭や証言を拒むことはできません。
また、正当な理由がなく出頭や証言を拒んだ場合や、うその証言をした場合の罰則が設けられていて、偽証罪などに問われる可能性があります。このため、国会では「証人喚問」は「参考人招致」より重い意味を持つとされています。
過去の証人喚問
証人喚問が行われるのは、去年3月、大阪・豊中市の国有地が学校法人「森友学園」に鑑定価格より低く売却されたことをめぐって、学園の籠池前理事長の証人喚問が、衆議院予算委員会と参議院予算委員会で行われて以来です。
その前には、平成24年4月に、企業年金の運用に失敗して1000億円を超える巨額の損失を出した「AIJ投資顧問」の社長らの証人喚問が、衆議院財務金融委員会と参議院財政金融委員会で行われました。
証人喚問は、これまでもロッキード事件やリクルート事件、東京佐川急便事件など、世間の注目を集める事件の際に行われ、中曽根康弘元総理大臣や竹下登元総理大臣、細川護煕元総理大臣の証人喚問が行われたこともあります。
また、証人喚問でうその証言をした場合には、偽証罪に問われる可能性があり、最近では、北海道の業者から賄賂を受け取った受託収賄などの罪に問われた鈴木宗男元衆議院議員や、防衛装備品をめぐる汚職事件で、収賄などの罪に問われた守屋武昌元防衛事務次官らが偽証罪で告発され、有罪判決を受けています。
証人喚問では、正当な理由がないのに出頭や証言を拒んだ場合の罰則も設けられていて、過去にはこうした理由で告発されたケースもあります。一方、出頭が困難な場合には、2人以上の議員や委員を派遣して証言を求めることも認められていて、過去には、入院中や勾留中の証人に証言を求めたケースもあります。
「森友学園」をめぐる問題の経緯
「森友学園」をめぐる問題は、大阪・豊中市の国有地が8億円余り値引きされて学園に売却されたことが明らかになったのを受け、去年2月以降、国会審議でたびたび取り上げられました。
野党側は、安倍総理大臣夫人の昭恵氏が、学園が開校を計画していた小学校の名誉校長を一時務めていたことなどから追及を続けてきたのに対し、安倍総理大臣は、みずからや昭恵氏が売却に関与したことは一切ないと繰り返し強調してきました。
また、佐川・前国税庁長官は、財務省の理財局長だった当時、値引きは国有地から大量のゴミが見つかったことが理由で、適正な価格での売却だったと説明し、学園側との事前の価格交渉を一貫して否定したほか、学園側との交渉記録を「廃棄した」と答弁しました。
その後、去年11月に、会計検査院が「値引き額の算定方法には十分な根拠が確認できない」などとする検査結果を国会に提出しました。
また、財務省は、ことしに入って、情報公開請求や国会の要求に応じる形で、学園側との交渉のいきさつなどが記された文書を開示・提出しましたが、「廃棄した」と答弁した交渉記録ではないと説明しました。
これに対し、野党側は、佐川氏の罷免や証人喚問を求めましたが、政府・与党は「適材適所の人事だ」としたうえで、「現在の理財局長が責任を持って答弁するのが適当だ」として、国会招致も拒否してきました。
こうした中、今月2日、財務省近畿財務局が作成した決裁文書と、国会議員らに去年開示された文書の内容に違いがあり、書き換えられた疑いがあると報じられ、9日には佐川氏が、決裁文書を国会に提出した時の担当局長だったことなどを理由に国税庁長官を辞任。
財務省は、その3日後の12日に、決裁文書などを書き換えていたことを認め、麻生副総理兼財務大臣らが謝罪しました。
その後、財務省は書き換えについて「佐川氏の答弁に合わせて行われた」、「佐川氏の関与の度合いは大きい」といった見方を示し、27日、佐川氏の証人喚問が行われることになりました。
佐川氏の経歴 「森友学園」問題との関わり
佐川宣寿氏は福島県出身で60歳。東京大学を卒業したあと、昭和57年に当時の大蔵省に入りました。予算編成などを担当する主計局総務課を振り出しに、銀行局や主計局などでキャリアを重ね、平成13年4月から2年余りにわたって、当時の塩川正十郎財務大臣の秘書官を務めました。
その後、主計局の主計官をへて税制の企画や立案を担う主税局に移り、課長ポストを3つ担当したうえで、大阪国税局長や本省の関税局長を務め、おととし6月、理財局長に就任しました。
理財局長時代には、森友学園への国有地売却をめぐる問題で、たびたび国会で答弁に立ちました。
野党側は国有地が大幅に値引きされて学園側に売却された背景に、政治家への便宜やそんたくがあったのではないかと追及しました。これに対して、佐川氏は「学園との交渉記録は廃棄した」と繰り返し答弁したほか、政治の関与も一切なく、価格も適正だったと強調していました。
財務省は、去年5月に書き換えられた国有地の売買契約の決裁文書を国会に提出しましたが、この時の責任者も理財局長だった佐川氏でした。佐川氏は去年7月、国税庁長官に就任。しかし、歴代の国税庁長官が開いていた記者会見は行いませんでした。
その後、森友学園と財務局との協議を録音した音声記録の存在が明らかになったほか、学園との交渉経緯がわかる財務省の内部文書が見つかるなどしました。このため、野党はこれまでの佐川氏の答弁は虚偽だったのではないかと批判を強め、佐川氏を国会へ招致すべきだという意見が相次ぎました。これに対して、安倍総理大臣や麻生副総理兼財務大臣は、佐川氏の国税庁長官就任は「適材適所の人事だ」などとしてきました。
しかし、森友学園をめぐる決裁文書の書き換えが明らかになり、今月9日、理財局長時代の国会対応に丁寧さを欠き、国会審議の混乱を招いたことや、書き換えられた決裁文書を国会に提出した時の担当局長だったなどとして、みずからの辞任を申し出ました。