「所有しょゆう者しゃ不明ふめい土地とち」利用りよう可能かのう新法しんぽう 成立せいりつ

今いまの法律ほうりつでは、こうした土地とちであっても自治体じちたいなどが買収ばいしゅうするには、所有しょゆう者しゃ全員ぜんいんの了解りょうかいが必要ひつようなため、公共こうきょう事業じぎょうがストップしたり、荒あれた土地とちが増ふえるなどの問題もんだいが各地かくちで起おきています。

６ろく日にち参議院さんぎいん本ほん会議かいぎで成立せいりつした新あらたな法律ほうりつは、所有しょゆう者しゃ不明ふめい土地とちを条件じょうけん付つきで所有しょゆう者しゃが見みつからなくても利用りようできるようにすることが目的もくてきです。

具体ぐたい的てきには、ＮＰＯえぬぴ-お-や企業きぎょうなどが地域ちいきの公園こうえんやイベントなど公共こうきょう性せいの高たかい事業じぎょうであれば、都道とどう府県ふけん知事ちじの認可にんかの下した、こうした土地とちを10年間ねんかん利用りようできるようにするとしています。

その場合ばあい所有しょゆう者しゃが見みつかることを想定そうていし、法務局ほうむきょくに供託きょうたく金きんを預あづける仕組しくみを設もうけます。

もし期間きかん中ちゅうに所有しょゆう者しゃが見みつからなければ、継続けいぞくして利用りようすることも可能かのうです。

このほか新あらたな法律ほうりつには、自治体じちたいなどが所有しょゆう者しゃを見みつけやすくするため同おなじ役所やくしょの中なかでも、これまで個人こじん情報じょうほう保護ほごのため認みとめられなかった固定こてい資産しさん税ぜいの納税のうぜい者しゃ情報じょうほうを利用りようできるようにすることも盛り込もりこまれています。この法律ほうりつは、来年らいねん夏なつまでに施行しこうされます。

抜本ばっぽん的てき対策たいさくも必要ひつよう

新あらたな法律ほうりつについて、専門せんもん家かの中なかでは、これまで手てがつけられなかった所有しょゆう者しゃ不明ふめい土地とちの利用りようが、一定いってい程度ていど進すすむと評価ひょうかする意見いけんがある一方いっぽう、さらなる抜本ばっぽん的てきな対策たいさくが必要ひつようだと指摘してきする意見いけんもあります。

民間みんかんの研究けんきゅう会かいは、このまま対策たいさくが進すすまなければ2040年ねんには、その面積めんせきが今いまより1.75倍ばいの720万まんヘクタールに広ひろがり、経済けいざい的てきな損失そんしつも年間ねんかん3100億おく円えんまで膨ふくらむと試算しさんしています。

政府せいふは相続そうぞくの際さいの登記とうきの義務ぎむ化かや、所有しょゆう者しゃが見みつからない場合ばあい、所有しょゆう権けんが放棄ほうきされたと見みなし、活用かつよう可能かのうとする制度せいど改正かいせいを検討けんとうしていますが、憲法けんぽうが保障ほしょうする個人こじんの「財産ざいさん権けん」を侵害しんがいするおそれもあり、慎重しんちょうな検討けんとうを求もとめる意見いけんもあります。

「所有しょゆう者しゃ不明ふめい土地とち」の問題もんだいに詳くわしい早はや稲田いなだ大学だいがくの山野目やまのめ章夫あきお教授きょうじゅは、「今いままでこの問題もんだいに正面しょうめんから向き合むきあう法律ほうりつがなにもなかったので、そういう意味いみでは、第だい一いち歩ほといっていいのではないか。一方いっぽう、所有しょゆう者しゃ不明ふめい土地とちを解消かいしょうし、新あらたに生しょうじないようにする抜本ばっぽん的てきな対策たいさくについては、今回こんかいの法律ほうりつでは本格ほんかく的てきな対処たいしょが用意よういされておらず、さらなる検討けんとうが必要ひつようだ」と話はなしています。