ガソリン価格の値上がりは8週連続で、160円台となったのは2014年11月以来3年11か月ぶりです。
これは、アメリカのトランプ政権が各国に対して来月までにイラン産原油の輸入を停止するよう求めている影響で、国際的な原油価格がやや高い水準となっていることが、主な要因です。
今後の見通しについて石油情報センターは「世界的な株安を受けて原油価格はいったん下がっており、来週はガソリン価格も値下がりする可能性がある。しかし中長期的には、産油国であるサウジアラビアのジャーナリストが死亡した事件の影響がどのように広がるかなど、先行きは不透明だ」と話しています。
運送会社の経営圧迫
原油価格の高止まりを受けてトラック業界も大きな影響を受けています。全日本トラック協会によりますと、トラック業界では深刻な人手不足で人件費が上昇しているうえ、燃料費の値上がりが加わり、特に中小の運送会社の経営を圧迫しているということです。
東京・板橋区にある運送会社は、およそ20台のトラックで食料品などの配送を行っています。
この会社は月に2万リットルの軽油を使っていますが、軽油の価格は1年前と比べ20%近く値上がりし、先月の燃料費は250万円ほどと、去年の同じ時期よりおよそ50万円増えました。1か月の売り上げが平均およそ2000万円のこの会社にとって、大きな出費です。
このため、会社では区内の運送会社で作る組合で軽油を共同購入しているほか、ガソリンスタンドを使わずに会社の敷地内に設けた給油所を利用するなどして、仕入れにかかるコストを抑えています。
さらに、トラックに走行データを記録する機器を搭載し、省エネ運転を行った従業員に手当を出すなどして、軽油の節約に取り組んでいますが、それでも値上がり分を補うのは難しいということです。
山一運輸の山口正社長は「使用量を抑える努力をしても利益が出ない厳しい状況です。同業者からもこれ以上燃料費が値上がりするとやっていけないという声が出ていて、さらに価格が上がれば廃業を考える会社が増えてくると思う」と話しています。
ガソリンスタンドの利用者は
東京・世田谷区にあるガソリンスタンドを訪れた80代の男性は「来るたびに値段が上がっている感じがします。サウジアラビアやいろいろな国際問題があり、先行きが暗い感じがします」と話していました。
営業の仕事で車を使うという20代の女性は「会社では、上司が毎日ガソリン価格をチェックしていて、少しでも安くなったタイミングで給油するよう指示されています」と話していました。
また、別の女性は「ガソリンが高いので、いままで満タンで入れていたのを、最近は価格を決めて入れています。実家に帰る際にも電車を使おうかなと考えてしまいます」と話していました。
専門家 今後も160円近い価格続くか
原油価格の動向に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員は「ガソリン価格はおよそ4年ぶりの高値で、消費者からすれば高いという感じが強まる水準になっている。今後もガソリン価格は1リットル当たり160円近い価格帯が続くのではないか」と話しています。
その要因となっている国際的な原油価格について芥田主任研究員は「原油相場は高値圏で推移しやすいと思う。アメリカのトランプ政権が経済制裁でイラン産原油の輸入停止を各国に求めていることを受けて、来月、実際にイラン産原油の供給がどの程度減るのかわかる。思った以上に減ることになれば原油価格がさらに上昇することもありえる」と話しています。
また産油国であるサウジアラビアをめぐりジャーナリストが死亡した事件については「トランプ政権としては事を荒だてたくないところだと思う。サウジアラビアに対して経済制裁などが行われ、原油マーケットに影響する可能性は今のところ低いのではないか。ただ、アメリカの議員の中には、サウジアラビアに強硬な姿勢を見せる人もいて、動向を注視しないといけない」と話していました。