韓国かんこく最高裁さいこうさい 長崎ながさき県けんで盗難とうなんの仏像ぶつぞう 対馬つしま市しの寺てらの所有しょゆう権けん認みとめる判決はんけつ

7年ねん半はんにわたった裁判さいばんは判決はんけつが確定かくていすることになります。

「観音寺かんのんじ 1973年ねんの時点じてんで所有しょゆう権けんを取得しゅとく」韓国かんこく最高裁さいこうさい

2012年ねんに長崎ながさき県けん対馬つしま市しの観音かんのん寺てらから盗ぬすまれその後そのご韓国かんこくで見みつかった、県けんの有形ゆうけい文化財ぶんかざいに指定していされている仏像ぶつぞう「観世音かんぜおん菩薩ぼさつ坐像ざぞう」をめぐっては、韓国かんこく中部ちゅうぶにあるプソク（浮石うきいし）寺てらが「中世ちゅうせいの時代じだいに倭やまと寇に略奪りゃくだつされたものだ」として所有しょゆう権けんを主張しゅちょうし、仏像ぶつぞうを保管ほかんする韓国かんこく政府せいふに引き渡ひきわたしを求もとめて2016年ねん4月つきに韓国かんこくで裁判さいばんを起おこしました。

1審しんの地方ちほう裁判所さいばんしょは、プソク寺てらへの仏像ぶつぞうの引き渡ひきわたしを命めいじましたが、2審しんの高等こうとう裁判所さいばんしょはことし2月つき、観音かんのん寺てらが20年ねん以上いじょう公然こうぜんと仏像ぶつぞうを所有しょゆうしてきたとして、1審しんとは逆ぎゃくに、引き渡ひきわたしは認みとめられないとする判決はんけつを言い渡いいわたし、原告げんこく側がわがこれを不服ふふくとして上告じょうこくしていました。

韓国かんこくの最高さいこう裁判所さいばんしょは26日にち「日本にっぽんの民法みんぽう上じょう、観音かんのん寺てらが法人ほうじん格かくを得えてから20年ねんたった1973年ねんの時点じてんで、仏像ぶつぞうの所有しょゆう権けんを取得しゅとくしたと認みとめられる」として、原告げんこく側がわの訴うったえを退しりぞけ、仏像ぶつぞうの所有しょゆう権けんは観音かんのん寺てらにあると認みとめる判決はんけつを言い渡いいわたしました。

7年ねん半はんにわたった裁判さいばんは判決はんけつが確定かくていすることになり、これを受うけて日本にっぽん政府せいふは、韓国かんこく政府せいふに対にたいして日本にっぽん側がわへの仏像ぶつぞうの早期そうき返還へんかんを求もとめていく方針ほうしんです。

《これまでの経緯けいい》

2012年ねん10月つき 仏像ぶつぞう盗ぬすまれる

事件じけんが発生はっせいしたのは11年ねん前まえの2012年ねん10月つき。

対馬つしま市しの神社じんじゃや寺てらから国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざいの「銅どう造みやつこ如来にょらい立像りつぞう」と、県けんの指定してい有形ゆうけい文化財ぶんかざいの「観世音かんぜおん菩薩ぼさつ坐像ざぞう」が盗ぬすまれているのが発覚はっかくしました。

警察けいさつは窃盗せっとう事件じけんとして捜査そうさしていましたが、翌年よくねん、意外いがいな場所ばしょで発見はっけんされます。

韓国かんこくの警察けいさつは仏像ぶつぞうを盗ぬすんだとして韓国かんこく人じんの窃盗せっとう団だんを検挙けんきょ。

容疑ようぎ者しゃたちの供述きょうじゅつに基もとづいて2つの仏像ぶつぞうが回収かいしゅうされたのです。

仏像ぶつぞうを証拠しょうこ品ひんとして保管ほかんする韓国かんこく政府せいふは、当初とうしょ、本物ほんものと確認かくにんされれば、国際こくさい条約じょうやくに基もとづいて日本にっぽん側がわに返還へんかんするとしていました。

しかし、2体たいの仏像ぶつぞうのうち、観音寺かんのんじから盗ぬすまれた「観世音かんぜおん菩薩ぼさつ坐像ざぞう」について、韓国かんこく中部ちゅうぶにあるプソク寺てらの関係かんけい者しゃが「仏像ぶつぞうはもともと倭やまと寇に略奪りゃくだつされたものだ」として仏像ぶつぞうの所有しょゆう権けんを主張しゅちょう。

日本にっぽん側がわに返還へんかんしないよう求もとめ、韓国かんこくの裁判所さいばんしょは、仏像ぶつぞうが日本にっぽんに渡わたった経緯けいいが明あきらかになるまでは日本にっぽんに返還へんかんできないとする仮かり処分しょぶんを出だしました。

対馬つしま市しや観音かんのん寺てらは、仏像ぶつぞうは朝鮮ちょうせん半島はんとうとの交流こうりゅうの中なかで、仏教ぶっきょうの普及ふきゅうに伴ともなってもたらされたものだなどと主張しゅちょう。

日本にっぽん政府せいふも、韓国かんこく政府せいふに対にたいして返還へんかんを求もとめてきましたが、返還へんかんのめどは立たたず、対馬つしま市しでは、30年ねん以上いじょう続つづけられてきた日にち韓かん友好ゆうこうのイベントが一時いちじ、中止ちゅうしになるなど、影響えいきょうが広ひろがりました。

2015年ねん 「銅どう造みやつこ如来にょらい立像りつぞう」対馬つしま市しに返還へんかん

そうした中なか2015年ねん、2つの仏像ぶつぞうのうち「銅どう造みやつこ如来にょらい立像りつぞう」については、韓国かんこくの検察けんさつが、「日本にっぽんの神社じんじゃが正当せいとうな管理かんり者しゃであることを認みとめる」として、対馬つしま市しに返還へんかんされました。

2016年ねん プソク寺てら「観世音かんぜおん菩薩ぼさつ坐像ざぞう」の引き渡ひきわたし求もとめる訴うったえ

しかし、一方いっぽうの「観世音かんぜおん菩薩ぼさつ坐像ざぞう」については、プソク寺てら側がわが「仏像ぶつぞうは中世ちゅうせいの高麗こうらい時代じだいに自分じぶんたちの寺てらでつくられ、日本にっぽんの倭やまと寇に略奪りゃくだつされたものだ」として仏像ぶつぞうの引き渡ひきわたしを求もとめる訴うったえを起おこしました。

2017年ねん 韓国かんこくの地裁ちさい 韓国かんこくの寺てらへの引き渡ひきわたし命めいじる判決はんけつ

翌年よくねん1月つき、1審しんの地方ちほう裁判所さいばんしょは「仏像ぶつぞうは過去かこ、正常せいじょうではない形かたちで対馬つしまに渡わたったとみられる」などとして、韓国かんこくの寺てらへの引き渡ひきわたしを命めいじる判決はんけつを言い渡いいわたします。

これに対にたいして韓国かんこく政府せいふは判決はんけつを不服ふふくとして控訴こうそ。

2022年ねん6月つき 韓国かんこくの高裁こうさい審理しんりに観音かんのん寺てらの住職じゅうしょくが初はじめて参加さんか

高等こうとう裁判所さいばんしょでの審理しんりには去年きょねん6月つき、観音寺かんのんじの田中たなか節たかし竜りゅう住職じゅうしょくが初はじめて参加さんかし、「観音寺かんのんじは平穏へいおんかつ公然こうぜんと仏像ぶつぞうを占有せんゆうしてきており、日本にっぽんの民法みんぽうでも韓国かんこくの民法みんぽうでも所有しょゆう権けんはわれわれにある」と訴うったえました。

2023年ねん2月つき 韓国かんこくの高裁こうさい “所有しょゆう権けんは観音寺かんのんじ” プソク寺てら側がわは上告じょうこく

そして、ことし2月つき、高等こうとう裁判所さいばんしょは観音かんのん寺てらは20年ねん以上いじょう公然こうぜんと仏像ぶつぞうを所有しょゆうしてきたもので所有しょゆう権けんは観音かんのん寺てらにあると認定にんていし、1審しんとは逆ぎゃくに寺てら側がわの訴うったえを退しりぞけ、引き渡ひきわたしの要求ようきゅうを認みとめないとする判決はんけつを言い渡いいわたしました。

これに対にたいしてプソク寺てら側がわは「所有しょゆう権けんがないという高裁こうさいの認定にんていは受け入うけいれられない」として、最高さいこう裁判所さいばんしょに上告じょうこくし審理しんりが続つづいていました。

《関係かんけい者しゃの反応はんのうは》

観音寺かんのんじ 檀家だんかの総代そうだい長ちょう「必かならず戻もどってきてほしい 強つよく願ねがっていた」

仏像ぶつぞうが盗ぬすまれた観音かんのん寺てらの檀家だんかの総代そうだい長ちょうを務つとめる村瀬むらせ辰たつ馬ばさんは当時とうじを振り返ふりかえり「仏像ぶつぞうがなくなっていたことがわかったときはそもそも美術びじゅつ品ひんとして価値かちがあると考かんがえていなかったのでまさかという気持きもちでした」と話はなしていました。

村瀬むらせさんは仏像ぶつぞうについて、地元じもとの人々ひとびとにとって心こころの支ささえだったとして「島しま外がいに出でて就職しゅうしょくしたり結婚けっこんしたりした人ひとも、帰かえってきたら拝おがみに来くるような存在そんざいでした。盗ぬすまれたことで、悲かなしみに暮くれて泣なく人ひともいました」と話はなしていました。

そして「11年ねんという長ながい間まに諦あきらめた時ときもありました。自分じぶんたちのご本尊ほんぞん様さまなので、必かならず戻もどってきてほしいと強つよく願ねがっていました」と話はなしていました。

観音かんのん寺てらの住職じゅうしょく「早期そうき返還へんかんしてもらうよう求もとめる」

判決はんけつを受うけて、仏像ぶつぞうが盗ぬすまれた長崎ながさき県けん対馬つしま市しにある観音かんのん寺てらの住職じゅうしょくを務つとめる田中たなか節たかし竜りゅうさんは「差し戻さしもどしになるかもしれないと思おもっていたので安あんどした。地域ちいきの人ひとには1つの区切くぎりがついたこと、そして、これからも返還へんかんに向むけて進すすんでいくことを報告ほうこくしたい。最終さいしゅう的てきには仏像ぶつぞうが対馬つしまに戻もどってきて地域ちいきの人ひとが安心あんしんするのを見みるのが一番いちばんの願ねがいだ。日にち韓かんの間まにもいろいろな事情じじょうがあると思おもうが、対馬つしまのことを一番いちばんに考かんがえて早期そうき返還へんかんしてもらうよう求もとめていきたい」と話はなしていました。

村井むらい官房かんぼう副ふく長官ちょうかん「早期そうき返還へんかんを韓国かんこく政府せいふに働はたらきかける」

村井むらい官房かんぼう副ふく長官ちょうかんは午前ごぜんの記者きしゃ会見かいけんで「裁判さいばんの過程かていでは仏像ぶつぞうを盗難とうなんされた観音かんのん寺てらが補助ほじょ参加さんか人じんとして『仏像ぶつぞうの所有しょゆう者しゃだ』と主張しゅちょうしてきており、こうした主張しゅちょうに沿そった判決はんけつだと考かんがえている。政府せいふとしては仏像ぶつぞうが観音かんのん寺てらに早期そうきに返還へんかんされるよう、韓国かんこく政府せいふに働はたらきかけるとともに観音かんのん寺てらを含ふくむ関係かんけい者しゃと連絡れんらくを取とりつつ適切てきせつに対応たいおうしていきたい」と述のべました。

プソク寺てら「野蛮やばんな判決はんけつ」

韓国かんこく最高裁さいこうさいの判決はんけつを受うけて、原告げんこくのプソク寺てら側がわは記者きしゃ団だんに対にたいし「武力ぶりょく的てきかつ不法ふほうな略奪りゃくだつを合法ごうほう化かした野蛮やばんな判決はんけつだ。仏像ぶつぞうを守まもるために倒たおれていった祖先そせんたちの子孫しそんである私わたしたちが、このような判決はんけつを認みとめることができるだろうか」と話はなしていました。