イスラエル軍がパレスチナのガザ地区で戦車などによる地上での軍事行動を拡大する中、イスラエルのネタニヤフ首相は「これは戦争の第2段階だ」と述べ、攻撃をさらに強化していく考えを示しました。
※29日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
国連安保理の緊急会合 日本時間の31日に開催へ
イスラエル軍がパレスチナのガザ地区で地上での軍事行動を拡大していることへの対応を協議するため、国連安全保障理事会の緊急会合が30日、日本時間の31日に開かれることが決まりました。
国連安保理では今月16日以降、4回、戦闘の一時停止などを求める決議案が採決にかけられましたが、常任理事国のアメリカ、ロシア、中国の拒否権行使などでいずれも否決されていて、安保理が一致した対応を示すことができるかどうかは不透明です。
イスラエル外相 “トルコ駐在の外交官に帰国指示”
イスラエルのコーヘン外相は28日、自身のSNSで「トルコからの重大な声明を踏まえて、2国間関係を見直すべく、外交団に帰国を命じた」と投稿し、トルコに駐在するイスラエルの外交官に帰国するよう指示したと明らかにしました。
ただ、具体的な内容については明らかにしていません。
一方、コーヘン外相の発表に先立ち、トルコではパレスチナに連帯を示す大規模な集会が開かれ、この中でエルドアン大統領が「イスラエルが戦争犯罪者だと世界に知らしめよう」などと激しく非難していたほか、今月25日にはハマスを擁護する発言もしていて、こうした一連の言動が影響したという見方も出ています。
ハマス ガザ地区トップ「受刑者釈放を条件に人質解放する用意」
イスラム組織ハマスのガザ地区のトップ、ヤヒヤ・シンワル氏は28日夜、声明を出し「イスラエルの刑務所に収監されているすべてのパレスチナ人受刑者の釈放を条件に、ただちにすべての人質を解放する用意がある」として大規模な人質解放をめぐる交渉の用意があると主張しました。
国連レバノン暫定軍本部に砲弾1発が着弾
レバノン南部に駐留しイスラエルとの国境地帯を監視する国連レバノン暫定軍は28日、暫定軍の本部に砲弾1発が着弾したと発表しました。砲弾は爆発せずけが人は出なかったものの、施設には被害が出たということで、暫定軍は砲弾を撤去したうえでどこから攻撃が行われたのか確認しているとしています。
暫定軍の本部が攻撃されたのは今月15日に続いて2回目で、ほかにもハマスによる大規模な攻撃が始まってからの3週間で、複数の拠点が被害を受けたということです。
国連レバノン暫定軍はSNSで、こうした被害について「いま活動している場所がぜい弱で、緊迫していて、極めて不安定な状況に置かれていることを示すものだ」としたうえで、直ちに停戦するよう改めて呼びかけています。
現場周辺では、ハマスが今月7日に大規模な攻撃を開始して以降、イスラエルとレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの間で散発的な衝突が起きていて、死者も出ています。
イスラエル軍参謀総長「次の段階に移行した」
イスラエル軍がガザ地区での軍事行動を拡大するなか、イスラエル軍のトップ、ハレビ参謀総長が28日、声明を発表しました。
このなかでハレビ参謀総長は「この戦争には複数の段階があり、きょう我々は次の段階に移行した。我々の部隊は現在、ガザ地区の地上で作戦任務にあたっている」と述べ、ガザ地区での軍事行動が新たな段階に入ったという認識を示しました。
そのうえで「地上部隊は現在、非常に重大で複雑な任務にあたっているこの戦争の目的は地上部隊なしに達成できない。達成にはリスクが伴うが、勝利に代償はつきものだ」と述べ、人質の救出や地下トンネルでの戦闘などでイスラエル側の犠牲者も覚悟しているとの認識を示しました。
また「人質を取り戻すことは国の最優先の目標であり、私や兵士全員がその達成に向けて全力を尽くしている」と述べ、軍事作戦の拡大で人質の安全を懸念する声もあるなか人質の家族に寄り添う姿勢を示しました。
ハマス報道官「想像よりも大きな敗北を味わわせる」
イスラム組織ハマスの軍事部門カッサム旅団の報道官は28日「われわれは地上作戦で脅しをかけてくる敵を待ち構えている。想像よりも大きな敗北を味わわせる」と述べ、イスラエル軍の地上侵攻には徹底抗戦すると強調しました。
一方で、イスラエルとの人質の解放に向けた交渉について「敵が交渉を1度でまとめるか、段階的に進めるか、どちらを望もうが、われわれにはその準備がある」として、交渉に応じる余地があるとの立場も示しました。
ネタニヤフ首相「これは戦争の第2段階だ」
イスラエルのネタニヤフ首相は28日、現地時間の午後8時半すぎに記者会見し「昨夜、さらに多くの地上部隊がガザ地区に入った。これは戦争の第2段階だ」と述べ、ガザ地区への攻撃を強化する考えを示しました。
さらに「われわれの戦いはまだ始まったばかりだ。ガザ地区での戦いは困難で長いものになる。これはわれわれにとって第2の独立戦争だ」と述べ、イスラエルにとっては国家の存亡をかけた戦いだという認識を示しました。
イスラエル軍は27日夜からガザ地区の北部を中心に激しい空爆を続けるとともに戦車などによる地上での軍事行動を拡大しています。
ネタニヤフ首相はこれが大規模な地上侵攻の始まりかどうかの明言は避けたものの、軍事作戦が新たな段階に入ったことを強調しました。
マスク氏 “衛星通信網 ガザ地区で活動の支援団体に提供”
アメリカの起業家イーロン・マスク氏は28日、パレスチナのガザ地区で、自らがCEOを務める「スペースX」社の衛星通信網「スターリンク」のサービスを提供するとソーシャルメディアのXに投稿しました。ガザ地区で活動する国際的な支援団体が対象だとしています。
ガザ地区では27日にイスラエル軍が軍事作戦を開始して以降もっとも激しい攻撃を行い、電話やインターネットの通信手段がほぼ途絶える事態になっています。
ただ、スターリンクを利用するには専用のアンテナなどが必要で、ガザ地区への物資の搬入が極めて厳しく管理されるなかイスラエルが機器の搬入を認めるかは不透明です。
ロンドン ガザ地区への攻撃をやめるよう訴えるデモ
イスラエル軍がガザ地区への攻撃を強化する中、イギリスの首都ロンドンでは28日、攻撃をただちにやめるよう訴える大規模なデモが、パレスチナの人々の権利を擁護するために活動するNGOなどの呼びかけで行われ、ロンドン警視庁の推定でおよそ10万人が参加しました。
参加者たちはパレスチナの旗や「パレスチナを解放しろ」などと書かれたプラカードを手に「ガザ地区への空爆をやめろ」とか「今すぐに停戦を」などと声を上げながら行進しました。
一方、参加者の中には、ガザ地区に住んでいる親戚や友人と連絡が取れないとして、不安を訴える人もいました。
このうち、母親のいとこがガザ地区にいて、自宅からの避難を余儀なくされているという男性は「連絡を取るのは非常に困難ではあるものの1日に1回程度連絡をとっていたが、この48時間近く何の連絡もない。インターネットも電話も完全に遮断されている。生きていることを祈るばかりだ」と話していました。
また、ガザ地区の友人たちと連絡が取れないというデモの主催者の男性は「一晩中、ガザ地区への攻撃が激化しているのを見た。現地の人々との連絡手段はなく、そこにいる人たちは、何が起きているのか、私たちに伝えることができない。イスラエルは夜の闇の中で国際法を破り、民間人を殺している」と憤りを示し、ただちに停戦するよう訴えました。
ロシア外相「国際人道法に反した行為には断固同意できない」
ロシアのラブロフ外相は28日にベラルーシの国営メディアが伝えたインタビューの中でイスラエルによるガザ地区への攻撃について「テロを非難する一方で、人質を含む民間人がいることが分かっている標的に対する無差別な武力行使など、国際人道法に反した行為でテロに対応することには断固同意できない」と述べました。
そして「ガザが破壊され、200万人がそこを追われれば、何十年もの間、大惨事がもたらされることになる」と述べたうえで、イスラエル側にロシアの立場を伝えていると強調しました。
ロシアはイスラエルと一定の関係を築いていますが、ガザ地区への攻撃で犠牲者が増え続けるなかイスラエルによる軍事行動への懸念を強めています。
一方、国営ロシア通信は28日、ロシアを訪問したイスラム組織ハマスの幹部アブマルズーク氏が、ロシア側からロシア国籍の人質8人のリストを受け取り、発見できしだい解放すると明らかにしたと伝えました。
イスラエル テルアビブで人質の解放訴える集会
イスラエルのテルアビブではイスラム組織ハマスに人質にとられている人たちの家族や支援者が連日、集会を開いていて、中心部の広場には28日、人質になっている220人以上の人たちの一刻も早い解放を訴えるため数百人が集まりました。
広場には人質の顔写真を大きく載せたポスターが至る所に貼られているほか、220人以上がいまだに人質になっていることを忘れてほしくないと、長いテーブルに人数分の食器が並べられました。また集まった家族や支援者はガザ地区への攻撃がさらに強まる中、平和を祈る歌を合唱するなどして人質の無事を祈っていました。
友人が人質となっているという女性は「きょうは無事だとしてもあすにはどうなるか分かりません。とにかく人質全員がいますぐ無事に帰ってくるよう政府にはできることをすべてしてほしい」と訴えていました。
また別の女性は「人質がいますぐ戻ってきてほしいし、ガザ地区の住民が犠牲になるのも耐えられません。一刻も早い停戦を望みます」と話していました。
ガザ地区 保健当局 “一連の衝突で7703人死亡”
ガザ地区の保健当局は28日、前日までの発表より377人多い7703人が今月7日からの一連の衝突で死亡したと発表しましたが、電話などの連絡手段が途絶えた状況が続いているため被害の全容は把握できていません。
こうしたなかイスラエルのガラント国防相は28日、ビデオ声明を発表し「我々は戦争の新たな段階に入った。昨夜、ガザの地面は揺れ、地上も地下も攻撃した。ガザ地区での作戦は次の命令があるまで続くだろう」と述べ、攻撃をさらに強化する考えを示しました。
イスラエル軍は28日も地上部隊がガザ地区内に残り、軍事行動を続けたとしていますがガラント国防相は、これが大規模な地上侵攻の始まりなのかどうかについては明言しませんでした。
またイスラエル軍の報道官は28日「ガザ地区の住民への緊急メッセージ」と題した動画をSNSに投稿し「行動できる時間はなくなろうとしている」と述べたうえで、ガザ地区北部から南部への早急な退避を通告しました。
専門家からはイスラエル軍はガザ地区を南北に分断し、当面は北部を中心にハマスの地下トンネルの破壊などを目指した徹底した軍事行動を進めていくとの見方も出ています。