豆まめン蜂長者はちちょうじゃ

ワレゴウシとワレワンという、二人ふたりの修行僧しゅぎょうそうが旅たびをしていた。途中とちゅう、でかい木きの下したで一休ひとやすみしていたら、ワレワンのほうが居眠いねむりをし始はじめた。

すると一匹いっぴきの豆まめン蜂はちが、ワレワンの耳みみのあたりを飛とび回まわっていた。ワレゴウシが豆まめン蜂はちを追おっ払ぱらいながら、ワレワンを起おこした。ワレワンは今迄夢いままでゆめを見みていたのだという。その内容ないようは、「この木きの下したに、小判こばんの入はいった壺つぼがあるから、おまえにやる。」という夢ゆめを見みたのだという。ワレワンはただの夢ゆめだと信しんじなかったが、ワレゴウシは、正夢まさゆめだと思おもい「これからは、別べつべつ々に旅たびをして３年後ねんごに、またあの木きの下したで会あわないか」と言いった。

ワレワンも承知しょうちして、二人べつは別べつべつ々になった。そのとたんワレゴウシは引ひき返かえし、木きの下したを堀ほり起おこした。すると、夢ゆめのお告つげのとおり、小判こばんの入はいった壺つぼがひとつ出でてきた。ワレゴウシは、思おもわず手てをあわせて喜よろこんだ。

それから３年後ねんご、あの木きの下したでは、大金持おおがねもちになった、ワレゴウシが、芸者げいしゃを引ひき連つれて酒盛さかもりをしていた。そこへ以前いぜんと全まったく変化へんかのないワレワンが、やって来きて二人ふたりは再会さいかいを果はたした。そしてワレゴウシが、あの時ときのいきさつを話はなし、掘ほり起おこした金かねで博打場ばくちじょうを開ひらいたというのだ。ワレゴウシはワレワンに、「もう坊主ぼうずなんかやめてしまえ！」と言いいながら壺つぼの小判こばんの半分はんぶんを渡わたそうとしうた。しかしワレワンは、すっかり呆あきれて断ことわった。ワレゴウシは、激怒げきどして引ひき上あげていった。

ひとりになったワレワンは、「確たしか夢ゆめでは、壺つぼは７つあると言いっていたな。」と思おもい出だし、もう一度掘いちどほってみたら、さらに下したの方かたに残のこり６つの小判こばんの入はいった壺つぼが出でてきた。ワレワンその金かねを元手もとでに長者ちょうじゃになり、困こまっている人ひとびと々にも金かねを分わけ与あたえたので、人ひとびと々から「豆まめン蜂長者はちちょうじゃ」と呼よばれるようになったという。