山本投手は、先発投手の主要なタイトル4つを史上初めて3年連続で獲得し、絶対的エースとしてチームをけん引してきました。しかし、日本シリーズではこれまで4試合に登板し勝ったことがありませんでした。
第1戦でも6回途中を投げてプロ7年間で自己最多に並ぶ7失点を喫して敗れました。それでも「第6戦は必ず来ると思っていた。2敗目は絶対しないと、集中を切らさずにいた」と雪辱を期すチャンスが来ると信じて準備を続けていました。
この日の試合、2回にホームランを打たれて先制されデッドボールも与えるなどコントロールが微妙にずれている様子でしたが、打線が逆転して以降は「調子を取り戻せた」と5回以降だけで持ち味の力のあるストレートと鋭いフォークボールで8つの三振を奪って得点を与えませんでした。
7回には中嶋監督がエースに直接、信頼を伝えていました。
「きょうはリリーフ投手を出さないから。球数制限もないよ」
ちょうどそのころ山本投手は「球数を数えていて最後まで行こうとしていた中、監督がそう声をかけてくれた。中嶋監督の優しさだったと思う」と振り返りました。こうしてエースは9回を1失点で完投し、1試合の奪三振の日本シリーズ記録を更新する14個を記録しました。
シリーズ初勝利に山本投手は「とりあえず3勝3敗のタイに戻せてよかった」とみずからについては多くは語らなかったものの満面の笑みを浮かべていました。
エースを大事な試合に送り出した中嶋監督は、グラウンドで行われたインタビューで「山本由伸が2回連続でやられるわけがないと思った。この試合を全部、由伸にかけていた」と全幅の信頼を寄せていることを明かし、会場のファンを沸かせました。
山本投手は「監督をあす、日本一の監督にしたい。皆で勝って締めくくりたい」と強く信頼する指揮官のためにチーム全員で戦う決意を語りました。
エースの日本シリーズ初勝利で勢いに乗ってきたオリックス。第7戦で勝てば2年連続の日本一を成し遂げます。