青葉真司被告(45)は、2019年7月、京都市伏見区の「京都アニメーション」の第1スタジオでガソリンをまいて火をつけ、社員36人を死亡させ、32人に重軽傷を負わせたとして殺人や放火などの罪に問われています。
6日、京都地方裁判所で開かれた裁判で最大の争点になっている責任能力について、検察の中間論告と弁護側の中間弁論が行われました。
「京アニに小説のアイデアを盗まれた」などと主張する被告に、妄想の影響があったかどうかについて、検察は、「犯行直前にためらうなど、犯罪だと理解したうえで計画を遂げるため、みずからの判断で行動していた」としたうえで、「動機は、小説の落選などうまくいかない人生に直面した結果、他者を攻撃するという思考や行動パターンがあらわれたもので、妄想の影響は小さく、完全な責任能力があった」と主張しました。
このあと、遺族と代理人の弁護士が被害者参加制度を利用して法廷に立ち、「被告は36人の命よりも自分の小説のことしか考えない極端に自己中心的な性格傾向があり、犯行に妄想が影響したとは考えられない」などと意見を述べました。
青葉被告は遺族のほうを向き、ときおり目をつむりながらじっと話を聞いていました。
一方、無罪を主張している弁護側は、「被告には犯行当時、重度の妄想性障害があった。小説の落選だけでは犯行にはつながらず、10年以上にわたる妄想の世界の中での体験や怒りこそが善悪の区別や行動を制御する能力を失わせた」と述べ、被告に責任能力はなかったとしました。
今後、裁判員と裁判官が非公開で中間評議を行い責任能力について判断したあと、刑の重さに関わる情状の審理に移り、12月、最終論告と求刑、最終弁論が行われ、判決は来年1月25日に言い渡される予定です。
遺族の思いは
“36人殺害でも無罪という主張は受け入れられない”
事件で亡くなったアニメーターの石田奈央美さん(当時49)の母親は、「法廷で現場の写真などを見ると当時のつらい気持ちが思い出されると思うので、傍聴に行くことはできませんが、裁判の内容はニュースで確認しています。被告の発言からは反省のかけらも見えず、謝罪のことばもなく、腹立たしい気持ちです。『過去の放火事件を参考にした』という話が出ていましたが、その事件ですら数人の方が亡くなって死刑判決が出ているのに、36人を殺害しても無罪だという主張は、気持ちとして受け入れられないです。計画的な犯行だったことを裏付ける発言もしていたので、責任能力はあったと思っています」と話していました。
“被告側の主張 認められてほしくない”
事件で亡くなった武本康弘さん(当時47)の、母親の千惠子さん(75)は、「裁判の内容には必ず目を通していますが、被告は全然反省していないのだろうなという印象です。遺族の代理人弁護士に逆質問をするなど、京都アニメーションに恨みしかないのではないかと思いました。自分のしたことを正当化しているので、謝罪の言葉は期待していないです。責任能力しか争えないのはわかりますが、被告側の主張が認められてほしくはないです」と話していました。