そのうえで元信者らに補償が必要になった場合の原資として、最大100億円を国に預ける方針を明らかにしました。
旧統一教会をめぐる問題では先月、文部科学省が教団への解散命令を請求しましたが、国会では教団側が命令の確定前に被害者救済に充てるべき財産を海外や別の団体に移転させるおそれがあるとして、財産を保全するための法整備の議論が行われています。
こうした中、7日、教団は都内で会見を開き、解散命令請求後初めて出席した田中富広会長は「献金に際し、家庭事情や経済的状況に対し配慮が不足していた」と述べ、法人の指導が行きわたっていなかったとしたうえで「国と国民を巻き込んだ事態になり深く反省している。私たちの不足さゆえに、つらい思いをしてきた2世や国民の皆様に心からおわび申し上げる」と述べました。
会見では、去年の安倍元総理大臣の銃撃事件以降の教団の対応について説明し、先月までにあった返金の要請のうち、664件、合わせて44億円を支払ったことを明らかにしました。
“60億円~最高100億円の特別供託金を準備”
また国会などで教団による「財産隠し」の懸念が示されていることについて触れたうえで「解散命令の裁判が確定するまで法人の資金を海外に移転することは考えていない。財産保全措置法の必要性は全くないと思う」と主張しました。
そして、解散命令は出ないと確信しているとしたうえで「それでも不安を持つ方のため60億円から最高100億円の『特別供託金』を提案したい。現行法では制度はないが、特別措置として国に制度を用意してもらえれば準備させていただく」と述べ、元信者らに補償が必要になった場合の原資として、最大100億円を国に預ける方針を明らかにしました。
教団所有の総資産については言及控える
会見の質疑の中では「心からおわび」と述べたことについて「『謝罪』と捉えていいのか」と記者に問われると「『謝罪』ということばとは距離を置かないといけない。『おわびの会見』だ」と述べたほか、「被害金額も不明なため『被害者』ということばは簡単に使わないようにしている」と述べる場面もありました。
一方で、教団が所有する総資産がどれほどあるのかについては、言及を控えました。
今回教団が示した「供託」について法務省は「将来起こりうる補償に充てる」という理由には法令上の根拠がないとしていて、今後、資金を国に預けるという対応が実際に進められるのか注目されます。
《2世信者は》
両親が信者 30代男性 “まず資産公表すべき”
両親がともに旧統一教会の信者だという30代の男性は、親が教団への献金を続けたことによって家庭が経済的に苦しく、進路や結婚など、人生のさまざまな局面で制約を受けてきたということです。
会見で教団が親の信仰が原因で苦しんできた「2世」に対しても「おわび」を表明したことについて、男性は、「これまでもタイミングはあったのに、解散命令請求が出たとたん、おわびをされても、命令を出されたくないという形だけのおわびにしか思えません」と話しました。
将来、元信者らへの補償が必要になった場合の原資として、教団が最大100億円を拠出するとしていることについては、「本当に被害者への謝罪の気持ちがあるのなら、国にいきなり金を預けるのではなく、教団が持っている資産を公表したうえで、高額献金の被害を訴える元信者や家族に返還を求める意思がないか確認するべきだ」と話していました。
《政界の反応は》
盛山文科相「コメントは差し控えたい」
盛山文部科学大臣は、閣議のあとの記者会見で「旧統一教会の動向について逐一コメントすることは差し控えたい。供託ができるかどうかについては法的な検討を関係者でしてもらわなければならないのではないかと思う。いずれにしろ詳しい内容が何もわからないので、それ以上のコメントはできない」と述べました。
小泉法相「電話相談など最大限活用し対応」
小泉法務大臣は閣議のあと記者団に対し「旧統一教会の方針や動向が報じられているがコメントは差し控えたい」と述べました。
そのうえで被害者への対応について「法テラスが行っている電話相談などを最大限活用し適切な体制を組んで対応していきたい」と述べました。
松野官房長官「供託は法令に沿って判断」
松野官房長官は午後の記者会見で「旧統一教会の主張や動向の一つ一つにコメントすることは 差し控える」としたうえで「一般論で言えば、供託は法令に規定されている場合のみ行うことができ、認められるか否かは具体の事実に即して法令に沿って判断される」と述べました。
そして「政府としては、速やかに被害者の救済が図られるよう、現行法上のあらゆる制度を活用し、被害者救済に最大限、取り組んでいく。議員立法の法案や被害者救済の実効性確保について与野党各党にさまざまな動きがあるので注視していきたい」と述べました。
自民 世耕参院幹事長「被害者救済に資する制度を」
自民党の世耕参議院幹事長は記者会見で「教団側の記者会見を聞く必要があるが、100億円の根拠が分からない。被害者救済をしっかり行うために必要なものを確保していくことが重要だ。議員立法は自民党内でも検討しているので被害者救済に資する制度をつくっていきたい」と述べました。
立民 安住国対委員長「法律つくらなければ責任放棄」
立憲民主党の安住国会対策委員長は党の代議士会で「旧統一教会は100億円を国に供託することで『財産保全の法案は勘弁してくれ』ということではないか。よもや自民党がこれに乗るとは思えないが、今国会で法律をつくらなければ責任放棄だ」と指摘しました。
そのうえで「法律がなければ解散命令が出たあと、被害者への補償が本当にできるのかという話になる。自民・公明両党はいろいろとあるのは分かるが、成立に向けて働きかけをしていきたい」と述べました。
維新 音喜多政調会長「財産保全を求める」
日本維新の会の音喜多政務調査会長は、記者会見で「60億円から100億円で十分な被害者救済ができるのか大いに疑問だ。裏にはもっと大きな資力があることが想定され、海外に散逸させない保証はどこにもない。政府・与党は、教団側のアクションに惑わされず、被害者の救済を第一にぶれずに対応してほしい。われわれは宗教法人法の改正による財産保全をしっかり求めたい」と述べました。
共産 小池書記局長「反省のない姿が浮き彫りに」
共産党の小池書記局長は、記者会見で「『解散請求逃れ、財産保全逃れ』のための、言い繕った記者会見で、全く法的責任を認めず、反省のない姿が浮き彫りになった。いよいよ解散命令を出すことが必要になってきているし、財産保全のための法整備が必要だ。与党が旗を振り、急いで政党間協議を行って特別な立法措置をとるべきだ」と述べました。
国民 玉木代表「一部供託では筋が通らない」
国民民主党の玉木代表は記者会見で「教団がまず最初にやるべきことは、寄付額や返還請求額を公開することだ。全体像を見せずに一部を供託して『許してください』では筋が通らない」と述べました。
そのうえで「教団の対応に惑わされず必要な立法作業は進めていくべきだ。財産を保全する法体系をつくるほうが国民や被害者のためになる。与野党協議の場で議員立法により憲法違反にならないような法案をつくり、速やかに成立させるのが筋だ」と述べました。