その後の調べに対し山上容疑者が「もともとは爆発物をつくって殺すつもりだったが、途中から銃を製造するようになった。銃はたくさんつくり数か月前にできあがった」という趣旨の供述をしていることが捜査関係者への取材で分かりました。
また「元総理を殺害しようと思い、ほかの遊説先にも行ったことがある。前日に岡山での遊説会場にも行った」という趣旨の話もしているということです。
山上容疑者はこれまでの調べに対し「元総理が奈良県を訪れることはホームページを見て把握した」と供述していて、警察当局は、爆発物から銃の製造に切り替えたいきさつを調べるとともに、以前から安倍元総理大臣を襲撃する機会をうかがっていた可能性もあるとみて捜査しています。
警察によりますと、これまでの調べに対し「特定の宗教団体に恨みがあり、安倍元総理がこの団体と近しい関係にあると思い狙った」などと供述しているということです。 また、その後の調べに対して「もともとはこの宗教団体の幹部を殺害しようとしたが、できなかったので、元総理を銃で撃つことにした」と供述していることが捜査関係者への取材で分かりました。 警察は、宗教団体への恨みがきっかけとなり、その後、近しい関係にあると思い込んだ安倍元総理大臣に襲撃対象を変更したとみて詳しいいきさつを調べています。
警備関係者によりますと、当時、現場には警視庁の専属のSPが1人配置されていたほか、奈良県警の私服の警察官なども含めると合わせて数十人の警備態勢でした。 安倍元総理の後ろ側にも警察官が配置され、周囲を360度警戒していたということです。 しかし、沿道にいた人が当時、撮影した動画では、容疑者が元総理の斜め後ろからゆっくりと歩いて近づく姿が写っていますが、銃声が鳴るまで警察官が制止する様子は確認できません。 これについて、複数の警備関係者はまず、容疑者が元総理に近づく前に制止できなかったことに問題があるとしたうえで、背後の警備態勢が不十分だったのではないかとしています。 このうちの1人は「これ以上近づけば不審者だと認識する距離がきちんと設定されていたのか、そして実際に不審者が近づいた時に制止する態勢がなぜとられていなかったのか、検証する必要がある」と話しています。 また、容疑者が近づいた後、1発目の銃声が聞こえた時点で警察官が身をていして元総理を守ったり、容疑者を取り押さえたりすることができなかったのかという点についても検証が必要だという声が上がっています。 一方で、選挙の遊説の警備について難しさを指摘する声もあります。 ある警備関係者は、遊説の際、候補者などの周囲には支援者や陣営の関係者が立つことが多く、SPがすぐそばで警戒にあたれない場合があることを理由の1つとして挙げています。 また、遊説の最中は壁を背にするなど背後に空間を作らないことが警備上は望ましいものの、さまざまな角度から見てほしいと考える候補者などもいるため、要望は尊重せざるをえないということです。 さらに、候補者などが有権者とのふれあいを重視する場合、それを止めることもできないとしています。 警察庁はこうした点を踏まえ、当時の警備態勢や対応について検証することにしています。
“特定の宗教団体に恨み” 安倍元首相に襲撃対象を変更か
警察当局の警備関係者 “背後の警備態勢が不十分”との見方も