「海上民兵」乗船か中国漁船の一部尖閣周辺でも航行 NHK分析 - Easy News

中国ちゅうごくが海洋かいよう進出しんしゅつを強つよめるなか、アメリカの研究けんきゅう機関きかんが「海上かいじょう民兵みんぺい」が乗のっている可能かのう性せいがあると特定とくていした中国ちゅうごく漁船ぎょせんの一部いちぶが、東シナ海ひがししなかいでも活動かつどうし、沖縄おきなわ県けんの尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんの海域かいいきを航行こうこうしていたことがNHKの分析ぶんせきでわかりました。中国ちゅうごく漁船ぎょせんに実際じっさい、「海上かいじょう民兵みんぺい」が乗のっていたかどうかは分わかりませんが、海上かいじょう保安庁ほあんちょうも漁船ぎょせんの動うごきを把握はあくしていて、活動かつどうを注視ちゅうししています。

10年ねん前まえの9月つき11日にち、日本にっぽん政府せいふが尖閣せんかく諸島しょとうを国有こくゆう化かして以降いこう、周辺しゅうへんの海域かいいきでは、中国ちゅうごく当局とうきょくの船ふねが、領海りょうかい侵入しんにゅうや日本にっぽん漁船ぎょせんへの接近せっきんを繰り返くりかえしています。

こうした中なか、アメリカのシンクタンク、CSIS＝戦略せんりゃく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょが注目ちゅうもくするのが、軍事ぐんじ的てきな訓練くんれんを受うけた「海上かいじょう民兵みんぺい」と呼よばれる人員じんいんが乗り組のりくむ中国ちゅうごくの大型おおがた漁船ぎょせんです。

これらの漁船ぎょせんは、通常つうじょうの漁業ぎょぎょう活動かつどうに加くわえて、海域かいいきに居座いすわる示威じい活動かつどうや偵察ていさつ・監視かんしなどを担になっているとされています。

南シナ海みなみしなかいでは、中国ちゅうごくと領有りょうゆう権けんをめぐって対立たいりつするフィリピン政府せいふが、自国じこくの排他はいた的てき経済けいざい水域すいいきとする海域かいいきで、去年きょねん3月つき、200隻せきを超こえる中国ちゅうごく漁船ぎょせんが停泊ていはくし続つづけ、アメリカ国務省こくむしょうは、漁船ぎょせんに「海上かいじょう民兵みんぺい」が乗り組のりくんでいるという見方みかたを示しめしていました。

この際さい、中国ちゅうごく外務省がいむしょうの報道ほうどう官かんは、「中国ちゅうごく側がわの漁船ぎょせんの作業さぎょうは合法ごうほうだ」などと正当せいとう性せいを主張しゅちょうしたうえで、「中国ちゅうごくの漁民ぎょみんをいわゆる『海上かいじょう民兵みんぺい』と呼よぶ理由りゆうがわからない。下心したごころと悪意あくいがある」と反発はんぱつしていました。

今回こんかい、NHKでは、CSISが中国ちゅうごく側がわの公開こうかい情報じょうほうなどをもとに、南シナ海みなみしなかいで活動かつどうし、「海上かいじょう民兵みんぺい」が乗のっている可能かのう性せいがあると特定とくていした漁船ぎょせん、122隻せきについて、船ふねの位置いち情報じょうほうを発信はっしんするAIS＝船舶せんぱく自動じどう識別しきべつ装置そうちのデータをもとに分析ぶんせきしました。

その結果けっか、去年きょねん1年間ねんかんでこのうちの10隻せき余あまりが、尖閣せんかく諸島しょとうから200キロ以内いないの東シナ海ひがししなかいでも活動かつどうしていたことがわかりました。

中なかには尖閣せんかく諸島しょとうの領海りょうかいや接続せつぞく水域すいいきを航行こうこうした船ふねも確認かくにんできました。

中国ちゅうごく漁船ぎょせんに実際じっさい、「海上かいじょう民兵みんぺい」が乗のっていたかどうかは分わかりませんが、海上かいじょう保安庁ほあんちょうも、こうした東シナ海ひがししなかいでの動うごきを把握はあくしていて、その活動かつどうを注視ちゅうししています。

CSISのグレゴリー・ポーリング上級じょうきゅう研究けんきゅう員いんは、「海上かいじょう民兵みんぺいを活用かつようし、平時へいじから圧力あつりょくをかけ続つづけることで、監視かんし・警戒けいかいする海上かいじょう保安庁ほあんちょうに負荷ふかをかけている」と分析ぶんせきしています。

「海上かいじょう民兵みんぺい」表向おもてむき漁業ぎょぎょう軽けい武装ぶそうで特別とくべつな訓練くんれん受うける

アメリカのシンクタンク、CSIS＝戦略せんりゃく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょによりますと「海上かいじょう民兵みんぺい」は軽けい武装ぶそうをしているほか、特別とくべつな訓練くんれんを受うけたり、中央ちゅうおう政府せいふから燃料ねんりょう代だいや船ふねの改修かいしゅうのための補助ほじょ金きんが支給しきゅうされたりしているということです。

表向おもてむき漁業ぎょぎょうをしていますが、国くにの政治せいじ的てきや軍事ぐんじ的てきな目的もくてきを達成たっせいするためにさまざまな活動かつどうをするとされています。

CSISは去年きょねん11月つきに発表はっぴょうした報告ほうこく書しょで、中国ちゅうごく側がわの公開こうかい情報じょうほうなどをもとに広東かんとん省しょうや海南かいなん省しょうを母港ぼこうとし、南シナ海みなみしなかいで活動かつどうする合あわせて122隻せきの漁船ぎょせんを、海上かいじょう民兵みんぺいの船ふねとして特定とくていし、それらの船ふねのリストを公表こうひょうしています。

CSISの分析ぶんせきでは、これらの漁船ぎょせんは領有りょうゆう権けんを争あらそう海域かいいきなどに大量たいりょうに出航しゅっこうして居座いすわる示威じい活動かつどうのほか、体からだ当あたりなどの妨害ぼうがい、監視かんしや偵察ていさつの活動かつどうを担になっているということです。

海上かいじょう保安庁ほあんちょうなどによりますと、中国ちゅうごく政府せいふは「民兵みんぺい」については、法律ほうりつなどで武装ぶそう力りょくとして位置いちづけていますが、「海上かいじょう民兵みんぺい」については公式こうしきな見解けんかいを示しめしていないということです。

中国ちゅうごくは南シナ海みなみしなかいで「海上かいじょう民兵みんぺい」を活用かつよう米べい研究所けんきゅうじょ指摘してき

アメリカのCSIS＝戦略せんりゃく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょは、中国ちゅうごく漁船ぎょせんの動うごきが領有りょうゆう権けん争あらそいが続つづく南シナ海みなみしなかいで、近年きんねん、活発かっぱつとなっていると指摘してきします。

CSISによりますと、中国ちゅうごくは、南シナ海みなみしなかいの南沙なんさ諸島しょとう、英語えいご名めい・スプラトリー諸島しょとうで、2016年ねんに人工じんこう島とうを建設けんせつして以降いこう、平時へいじの活動かつどうを通をとおして実効じっこう支配しはいを進すすめる動うごきを強つよめ、「海上かいじょう民兵みんぺい」の漁船ぎょせんを積極せっきょく的てきに活用かつようしているとしています。

アメリカ海軍かいぐんの司令しれい官かんは、2016年ねん5月つき、中国ちゅうごくが造成ぞうせいする人工じんこう島とうの周辺しゅうへんなどにアメリカ軍ぐんの艦艇かんていを派遣はけんした際さい、艦艇かんていが海上かいじょう民兵みんぺいが乗り組のりくむ船ふねに取り囲とりかこまれるケースが相次あいついだことを明あきらかにしました。

最近さいきんでは、去年きょねん3月つき、中国ちゅうごくと領有りょうゆう権けんをめぐって対立たいりつするフィリピン政府せいふが、自国じこくの排他はいた的てき経済けいざい水域すいいきとする南シナ海みなみしなかいの海域かいいきで、中国ちゅうごくの漁船ぎょせんおよそ220隻せきが停泊ていはくしているのが確認かくにんされ、一部いちぶの漁船ぎょせんはおよそ2か月かげつもとどまり続つづけました。

フィリピン政府せいふやアメリカの国務省こくむしょうは、これらの漁船ぎょせんに「海上かいじょう民兵みんぺい」が乗り組のりくんでいるという見方みかたを示しめしていました。

この際さい、中国ちゅうごく外務省がいむしょうの報道ほうどう官かんは「中国ちゅうごく側がわの漁船ぎょせんの作業さぎょうは合法ごうほうだ」などと述のべ、正当せいとう性せいを主張しゅちょうしたうえで、「中国ちゅうごくの漁民ぎょみんをいわゆる『海上かいじょう民兵みんぺい』と呼よぶ理由りゆうがわからない。下心したごころと悪意あくいがある」などと反発はんぱつしていました。

南シナ海みなみしなかいから東シナ海ひがししなかいに向むかう複数ふくすうの漁船ぎょせんを確認かくにん

CSISが「海上かいじょう民兵みんぺい」が乗のっている可能かのう性せいがあると特定とくていした漁船ぎょせん122隻せきは、去年きょねん1年間ねんかん、どのような動うごきをしていたのか。

まず、多おおくの漁船ぎょせんが、中国ちゅうごくがフィリピンやベトナムなどと領有りょうゆう権けんを争あらそう南シナ海みなみしなかいを航行こうこうしています。

しかし、7月末げつまつ以降いこう、南シナ海みなみしなかいから東シナ海ひがししなかいに向むかって行いく複数ふくすうの漁船ぎょせんが確認かくにんできます。

日本にっぽんが主張しゅちょうするEEZ＝排他はいた的てき経済けいざい水域すいいきの付近ふきんを航行こうこうし、一時いちじとどまるなどして、再ふたたび、南シナ海みなみしなかいの方向ほうこうへ戻もどっていました。

さらに、詳くわしく見みると、少すくなくとも1隻せきは、尖閣せんかく諸島しょとうの領海りょうかいや接続せつぞく水域すいいきに入はいり、航行こうこうしていることが確認かくにんできました。（※航跡こうせきを地図ちず上じょうの赤あかい点てんで示しめしています）

この船ふねは、南西なんせいから北東ほくとうに移動いどうし、尖閣せんかく諸島しょとうの領海りょうかいや接続せつぞく水域すいいきを通過つうか。

その後そのご、今度こんどは北東ほくとうから南西なんせいに向むかって再ふたたび尖閣せんかく諸島しょとう付近ふきんを航行こうこうし、南シナ海みなみしなかいに戻もどっていました。

去年きょねん1年間ねんかんで確認かくにんされたこれらの漁船ぎょせんは10隻せき余あまりで、CSISのポーリング上級じょうきゅう研究けんきゅう員いんによりますと、海南かいなん島とうの三さん亜あ市しから出港しゅっこうした船ふねが多おおく、より訓練くんれんを受うけた漁船ぎょせんとみられると指摘してきしています。

米べい専門せんもん家か中国ちゅうごくの目標もくひょうは尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんと南シナ海みなみしなかいの実効じっこう支配しはい

アメリカのシンクタンク、CSIS＝戦略せんりゃく国際こくさい問題もんだい研究所けんきゅうじょのグレゴリー・ポーリング上級じょうきゅう研究けんきゅう員いんは、今回こんかい、東シナ海ひがししなかいで確認かくにんされた漁船ぎょせんについて、何なんらかの移動いどうのため航行こうこうしていたか、軍ぐんやほかの海上かいじょう民兵みんぺいとの共同きょうどう訓練くんれんに参加さんかしていた可能かのう性せいもあると指摘してきしたうえで、活動かつどうや意図いとについてさらなる分析ぶんせきが必要ひつようだとしています。

ポーリング上級じょうきゅう研究けんきゅう員いんは、「中国ちゅうごく側がわとしては、海上かいじょう民兵みんぺいを活用かつようし、平時へいじから圧力あつりょくをかけ続つづけることで、監視かんし、警戒けいかいする海上かいじょう保安庁ほあんちょうに負荷ふかをかけている」と分析ぶんせきしています。

その上うえで、「中国ちゅうごくの目標もくひょうは、尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんと南シナ海みなみしなかい全体ぜんたいを実効じっこう支配しはいすることだ。軍事ぐんじ力りょくには及およばない海うみ警局きょくの船ふねと民兵みんぺい船せんを利用りようし続つづけ、南シナ海みなみしなかいと同おなじように尖閣せんかく諸島しょとう周辺しゅうへんもゆっくりと、着実ちゃくじつに支配しはいを強つよめていることに対にたいして、日本にっぽん側がわとしてどう対応たいおうしていくか考かんがえなくてはならない」と指摘してきしました。

また、中国ちゅうごくの海洋かいよう政策せいさくを研究けんきゅうしている筑波つくば大学だいがくの毛利もうり亜樹あき助じょ教きょうは「尖閣せんかく諸島しょとうをめぐっての緊張きんちょうは、国力こくりょくを増大ぞうだいさせてきた中国ちゅうごくとアメリカの優位ゆういをめぐる競争きょうそうという大おおきな対立たいりつ構造こうぞうの一部いちぶだ。中国ちゅうごくの挑戦ちょうせんを直視ちょくししつつ、複合ふくごう的てきな対応たいおうをしていく冷静れいせいさと視野しやの広ひろさが日本にっぽんには必要ひつようだ。軍事ぐんじ衝突しょうとつへのきっかけを日本にっぽん側がわから作つくることは大おおきな失敗しっぱいだ。現場げんば海域かいいきでは海上かいじょう保安庁ほあんちょうがいまやっているように中国ちゅうごくを静しずかに押し返おしかえしつつ、外交がいこうで国際こくさい社会しゃかいを味方みかたにつける対応たいおうに尽つきる」と指摘してきしています。