イスラム体制の維持で重要な役割を果たしている司法府で検事総長などの要職を歴任したあと、2019年には最高指導者のハメネイ師に任命され、司法府代表に就任しました。
知名度の高いイスラム法学者として、宗教界をはじめとした保守強硬派から支持を集めていて、ことし82歳となる最高指導者ハメネイ師の後継候補の1人とも言われています。 前回、4年前の大統領選挙にも立候補しましたが、ロウハニ大統領が欧米などと核合意を結び、成果とする中で再選を果たし、ライシ師は敗れました。 ただその後、トランプ前政権が核合意から離脱して制裁を再開させる中でイラン経済は苦境に陥り、今回の選挙戦でライシ師は、ロウハニ政権が物価の高騰などをもたらしたとして厳しく批判しました。
そのうえで、「核合意をアメリカによる恐喝の手段にはさせない」として、アメリカからの過度な要求には応じない立場も示しています。 一方アメリカ政府は、司法府の幹部としてライシ師が1988年に、司法手続きを経ずに多くの政治犯に死刑の執行を命じたほか、2009年には反政府デモの弾圧に関わったとして、制裁対象にしています。
焦点の1つがイランに対する制裁の解除で、この点についてライシ師は、「抑圧的な制裁の解除のために一刻もむだにしない」と述べています。最高指導者のハメネイ師も同様の主張をしていることからも、即座に交渉をやめて、みずから合意を破棄するということはなさそうです。 ただ、「核合意をアメリカの脅しの道具にはさせないし、過度な要求を受け入れない」とも主張し、強気な姿勢も崩していません。譲歩や柔軟さを示さず、より硬直した外交姿勢になると予想する人もいます。 アメリカにしてみれば、ロウハニ政権よりは「組みにくい政権」になることは間違いなさそうで、将来的に緊張が再び高まる可能性もあります。
中東情勢が不安定化すれば、原油をこの地域に依存する日本にも影響が出ます。 新しい政権が今後、どのような外交政策を打ち出してくるのか注目です。
核合意は、イランが核開発を制限する見返りに、国際社会が制裁を解除するもので、2015年にイランと欧米、中国、ロシアとの間で結ばれました。 イランに核兵器を持たせないことを目的とした合意で、国際社会から歓迎する声があがりました。 【トランプ政権発足で合意停止】 その後、アメリカでトランプ政権が発足すると内容が不十分だとして、2018年、合意から離脱しイランに対する制裁を再開させ、イラン産原油を禁輸としたり、イランとの金融取り引きを禁止したりしました。
【イラン側も対抗措置相次ぐ】 この制裁への対抗措置として、イランは核合意を破る形でウランの濃縮活動の強化などに乗り出しています。 ウランの濃縮度は、上限の3.67%を超えて、核兵器の製造に近づく60%に達しているほか、IAEA=国際原子力機関による抜き打ち査察などの受け入れ停止も表明しています。 【米イラン協議再開】 ことし発足したバイデン政権は、トランプ前政権によるこれまでの強硬な対イラン政策を見直し、イラン核合意への復帰を目指しています。 このためアメリカとイランは、4月上旬から、オーストリアの首都ウィーンで、EU=ヨーロッパ連合などを介し、核合意の立て直しに向けた間接的な協議を行っています。 ただイラン側が、トランプ前政権時代に科されたすべての制裁の解除を求めているのに対し、アメリカ側は、「テロ支援」や「人権侵害」の名目で科した数百の制裁については解除しない方針を示し、双方の隔たりは埋まっていません。 各国は当初、選挙前の合意を目指していましたが隔たりが埋まらない中で協議は長期化しています。
アメリカとの関係はどう変わるか?
日本との関係に影響は?
アメリカとイランの最近の関係
ライシ師とはどのような人物なのか?アメリカとの関係の行方はどうなるのか?まとめました。
ライシ師とは?