台風たいふう豪雨ごうう “避難ひなんできず” その教訓きょうくんとは

自宅じたくが浸水しんすい「逃にげることができない」

豪雨ごううで死亡しぼうした福島ふくしま県けん本宮もとみや市しの歯科しか医師いし、曽我そが祐一ゆういちさん（48）は自宅じたくの平屋ひらや建だての社宅しゃたくに流れ込ながれこんだ水みずが増ふえていく様子ようすを知人ちじんに逐一ちくいち、電話でんわで伝つたえていました。

13日にち午前ごぜん２に時じごろ、曽我そがさんから男性だんせいのもとに電話でんわがあり、「家いえのくるぶしまで水みずが入はいってきた」と話はなしたということです。

その後そのご、午前ごぜん３さん時じごろの電話でんわでは「胸むねのあたりまで来きている」と話はなしたため男性だんせいは「なんとか窓まどガラスを割わって屋根やねに避難ひなんしろ」と呼よびかけたということです。

しかし午前ごぜん３さん時半じはんごろの電話でんわでは「もうすぐ水みずが天井てんじょうにつきそうだ。逃にげることができない」と話はなし、その後そのご、連絡れんらくが途絶とだえたということです。

16日にち午後ごご５ご時半じはん現在げんざいで本宮もとみや市しで亡なくなった７なな人にんのうち、少すくなくとも５ご人にんが１いち階かいで見みつかっていたことがわかっています。

水圧すいあつかかると大人おとなでも扉とびら開あけられず

専門せんもん家かは避難ひなんしようとしても水圧すいあつでドアが開ひらかなかった可能かのう性せいを指摘してきしています。

浸水しんすいした部屋へやの扉とびらを開あける実験じっけんからは、ひとたび水圧すいあつがかかると大人おとなの男性だんせいでも扉とびらを開あけることが困難こんなんになることがわかります。

「水圧すいあつで戸とが開ひらかないことも生しょうじる」

自然しぜん災害さいがいのメカニズムを研究けんきゅうしている福島ふくしま大学だいがく大学院だいがくいん共生きょうせいシステム理工りこう学がく研究けんきゅう科かの川越かわごえ清きよし樹じゅ教授きょうじゅは「水圧すいあつがかかりやすいので戸とが開ひらかないということも生しょうじる。人的じんてき災害さいがいにつながることは多々たたある」と話はなしています。

災害さいがい弱者じゃくしゃをどう守まもるか 課題かだいも

一方いっぽう、今回こんかいの災害さいがいではいわゆる災害さいがい弱者じゃくしゃをどう守まもるか、改あらためて課題かだいが浮かび上うかびあがってきています。

福島ふくしま県けんいわき市しの平下平窪たいらしもひらくぼ地区ちくでは台風たいふう19号ごうの影響えいきょうで近ちかくを流ながれる夏井なつい川がわが氾濫はんらん、４よん人にんの高齢こうれい者しゃが犠牲ぎせいになりました。

この地区ちくの住民じゅうみんによりますと、12日にちの夜よるにはひざ下かほどの高たかさまで浸水しんすいしていたということで、その後そのごも水位すいいは上昇じょうしょうし、建物たてものの１いち階かい部分ぶぶんがつかったため、屋根やねの上うえに避難ひなんする人ひとも相次あいついだということです。

いわき市しによりますと、亡なくなった４よん人にんはいずれも80代だい以上いじょうの高齢こうれい者しゃで全員ぜんいんが溺死できしでした。

早はやめの避難ひなん呼よびかけも…

市しは12日にちの午前ごぜん10時じには市内しない全域ぜんいきに避難ひなん準備じゅんびの情報じょうほうを出だし、高齢こうれい者しゃなど体からだの不自由ふじゆうな人ひとたちに早はやめの避難ひなんを呼よびかけていました。

しかしこの地区ちくには情報じょうほうを一斉いっせいに伝つたえる防災ぼうさい行政ぎょうせい無線むせんがありませんでした。市しによりますと、防災ぼうさい行政ぎょうせい無線むせんは津波つなみに備そなえ沿岸えんがん部ぶしか整備せいびされていないということです。

市しは避難ひなんを呼よびかける情報じょうほうを出だした段階だんかいで、登録とうろくしていた人ひとの携帯けいたい電話でんわに届とどく防災ぼうさいメールや登録とうろくしていなくても対象たいしょうの地域ちいきにいる人ひとに届とどくエリアメールで避難ひなんを呼よびかけたとしています。

しかし地区ちくの住民じゅうみんの中なかにはメールの内容ないようが自分じぶんたちの地区ちくに該当がいとうするか分わかりにくいといった声こえが聞きかれたほか、携帯けいたい電話でんわを持もっていなかった高齢こうれい者しゃもいました。

市しが消防しょうぼう団だんに要請ようせいして直接ちょくせつ避難ひなんするよう呼よびかけたのはおよそ半日はんにちたって危険きけんが差し迫さしせまり避難ひなん指示しじを出だしたあとでした。

いわき市しは今回こんかいの情報じょうほうの伝つたえ方かたに課題かだいがあったとしたうえで今後こんご、周知しゅうちのしかたを検討けんとうすることにしています。