台風19号の豪雨の際、阿武隈川や千曲川など8つの河川で、大雨特別警報が解除されたあとにも、氾濫の発生を知らせる情報が発表されていたことがわかりました。専門家は「特別警報の解除で危機が去ったと錯覚した住民がいた可能性があり、検証が必要だ」としています。台風19号による豪雨で、気象庁は合わせて13の都県に大雨特別警報を発表したほか、国土交通省などと共同で、これらの都県を流れる合わせて16の河川に「氾濫発生情報」を相次いで発表しました。
NHKが調べたところ、このうち半数にあたる8つの河川では、大雨特別警報発表中だけでなく特別警報が解除されたあとにも、新たに氾濫発生情報が出されていたことがわかりました。
8つの河川は、宮城県の吉田川、福島県の阿武隈川上流、群馬県の石田川、栃木県の蛇尾川、茨城県の久慈川、埼玉県の都幾川、埼玉県の越辺川、長野県の千曲川で、特別警報解除との時間差は、阿武隈川上流が9時間20分後と最も大きく、次いで都幾川と越辺川が8時間20分後、吉田川がおよそ4時間後でした。
特別警報には、土砂災害や浸水被害を対象とした「大雨」の特別警報はありますが、「洪水」の特別警報はなく、大きな河川の危険性については、水位や流域の雨量をもとに「氾濫危険情報」や「氾濫発生情報」などが発表される仕組みとなっています。
NHKの取材では、大雨特別警報の解除をきっかけに自宅に戻り、その後、川の氾濫による浸水被害に遭った人が複数確認されています。
防災情報に詳しい兵庫県立大学の木村玲欧教授は「大雨特別警報が解除され、危機が去ったと錯覚した住民が多かった可能性があり、検証が必要だ。川の近くに住む人は、たとえ雨がやんでも、時間差で水位が上がることを知ったうえで、水位に関する情報や避難勧告などを確認して、危険性が残ってい場合には命を守る行動をとり続けることが重要だ」と指摘しています。
8河川の「氾濫発生情報」が出た時間は
▽宮城県の吉田川は、13日午前5時45分に大雨特別警報が解除されたあと、新たに氾濫や堤防の決壊が確認されたとして、午前6時25分と午前8時40分、そして午前9時40分に、相次いで氾濫発生情報が出されました。
▽福島県の阿武隈川上流では、13日午前4時に大雨特別警報が解除されたあと、新たに氾濫が発生したとして、午前6時半と午前10時20分、そして午後1時20分に、氾濫発生情報が出されました。最後に氾濫発生情報が出されたのは、特別警報が解除されてから9時間20分たっていました。
▽群馬県の利根川水系の石田川は、13日午前0時10分に大雨特別警報が解除され、わずか10分後の午前0時20分に氾濫発生情報が出されました。
▽栃木県の蛇尾川は、13日午前2時20分に大雨特別警報が解除され、2時間余りあとの午前4時25分に氾濫発生情報が出されました。
▽茨城県の久慈川は、13日午前2時20分に大雨特別警報が解除され、3時間後の午前5時20分に氾濫発生情報が出されました。
▽埼玉県の入間川流域の都幾川と越辺川は、13日午前0時40分に大雨特別警報が解除され、8時間余りあとの午前9時に氾濫発生情報が出されました。
▽長野県の千曲川は、13日午前3時20分に大雨特別警報が解除され、わずか5分後の午前3時25分に氾濫発生情報が出されました。
8河川のうち、吉田川と阿武隈川上流、都幾川、それに千曲川では、大雨特別警報が解除される前にも氾濫発生情報が出されていますが、特別警報が解除されたあと、新たな氾濫や堤防の決壊が相次いで確認されていました。