イングランド 勝因しょういんは“周到しゅうとうな準備じゅんび” エディーの戦略せんりゃく

戦たたかいは試合しあい前まえから

イングランドが、ここまで全まったく危あぶなげない戦たたかいを見みせてきた「オールブラックス」を負まかした要因よういんには、エディーが用意よういした周到しゅうとうなゲームプランと選手せんしゅに植え付うえつけた冷静れいせいさがあった。

戦たたかいは、試合しあい前まえから始はじまっていた。

ニュージーランドの選手せんしゅたちが行おこなう伝統でんとうの踊おどり「ハカ」に対にたいして、イングランドの選手せんしゅたちは「ハカ」を覆おおうようにＶぶい字じ型がたの陣形じんけいをとって応戦おうせん。

不敵ふてきな表情ひょうじょうを浮うかべる選手せんしゅもいた。

「ラグビーの神かみであるニュージーランドを上回うわまわるためには相手あいての勢いきおいを殺ころす必要ひつようがあった」とエディー。キャプテンのオーウェン・ファレルも「ただ立たって終おわることはしたくなかったので、ああいう陣形じんけいをとった」と意図いとを明あかした。

「いつもと違ちがう」と相手あいてに思おもわせることで、少すこしでも精神せいしん的てきなプレッシャーをかけるねらいがあったのだ。

試合しあい開始かいし１いち分ふん。イングランドはキックオフから一いち度ども笛ふえが鳴ならないうちに決きめる「ノーホイッスルトライ」を奪うばい、主導しゅどう権けんを握にぎる。

密集みっしゅうの攻防こうぼうでも、抜群ばつぐんのフィジカルの強つよさを見みせた。

ニュージーランドは、ボールを持もっても前進ぜんしんできず、前半ぜんはんは70％近ちかくを自陣じじんでプレーすることに。エディーの思惑おもわくどおり、勢いきおいを殺ころされる形かたちとなった。

後半こうはん、ニュージーランドは状況じょうきょうを打開だかいしようと選手せんしゅを相次あいついで入れ替いれかえた。しかし、エディーは相手あいてを勢いきおいづかせないプランも準備じゅんびしていた。

それが残のこり10分ふんを切きってから４よん人にんの選手せんしゅを投入とうにゅうする作戦さくせん。

試合しあい後ご、エディーは「オールブラックスは、最後さいごの10分ふんでとてつもない集中しゅうちゅう力りょくを発揮はっきする。試合しあい終了しゅうりょうの時ときにどの選手せんしゅにいてほしいかを先さきに考かんがえて、その後そのごに先発せんぱつメンバーを決きめた」と明あかした。

こうした冷静れいせいさは、選手せんしゅにも浸透しんとうしていた。

「周到しゅうとうな準備じゅんびができていたので、大だい舞台ぶたいでも常つねに冷静れいせいでいられた」とキャプテンのファレル。イングランドは、最後さいごまで高たかい集中しゅうちゅう力りょくで、堅かたい守もりを保たもち続つづけた。

対照たいしょう的てきに、ニュージーランドは焦あせりから今こん大会たいかい最多さいたの11の反則はんそくを犯おかし、最後さいごまで勢いきおいに乗のることができなかった。

「世界せかいで最高さいこうのチームになろうと、しっかりとプランを立たて、退屈たいくつに見みえても、朝あさ起おきて毎日まいにちハードワークをしてきた。こうした準備じゅんびが選手せんしゅに習慣しゅうかん化かされた」とエディー。今こん大会たいかいの組み合くみあわせが決きまった２に年ねん半はん前まえからの入念にゅうねんな準備じゅんびが、冷静れいせいさを保たもてた要因よういんだったと話はなした。

前回ぜんかい大会たいかい、イングランドが開催かいさい国こくとして初はじめて１いち次じリーグで敗退はいたいしてから４よん年ねん。日本にっぽんを率ひきいて南アフリカみなみあふりかを相手あいてに「世紀せいきの番狂ばんくるわせ」を起おこした名将めいしょうは、今こん大会たいかいで「ラグビーの神かみ」までも打うち負まかし、３さん大会たいかいぶりの優勝ゆうしょうに王手おうてをかけた。

３さん連覇れんぱの夢ゆめ絶たたれる ニュージーランド

大会たいかい史上しじょう初はつの３さん連覇れんぱをねらったニュージーランド。

プロップのジョー・ムーディーは、準決勝じゅんけっしょうに向むけて「イングランド戦せんはフォワード勝負しょうぶになることが多おおく、フィジカルの戦たたかいになる」と話はなし、平均へいきん身長しんちょうや体重たいじゅうで上回うわまわる相手あいてフォワードを十分じゅうぶんに警戒けいかいしていた。

しかし、実際じっさいのイングランドの戦たたかいぶりは、想定そうてい以上いじょうだったのかもしれない。前半ぜんはんからニュージーランドの攻撃こうげきは、イングランドの速はやく重おもさのあるディフェンスに封ふうじられてしまった。持ち味もちあじの多彩たさいな攻撃こうげきは影かげを潜ひそめ、ボールを奪うばわれるだけでなく、焦あせりから反則はんそくも重かさねた。ラインアウトでボールを失うしなうケースも多おおく、リズムに乗のれないまま試合しあいは進すすんだ。

後半こうはん、機動きどう力りょくのある選手せんしゅを投入とうにゅうし打開だかいを図はかったが実みのらず、奪うばったトライは相手あいてのミスに乗じょうじての１ひとつのみ。

フッカーのコーディー・テイラーは「イングランドは体からだが大おおきく、プレッシャーがすごくてディフェンスをすることが難むずかしく、ボールを失うしなってしまった」と振り返ふりかえった。

史上しじょう初はつの３さん連覇れんぱの夢ゆめを絶たたれ「控え室ひかえしつは葬式そうしきみたいでみんな暗くらかった」とスクラムハーフのアーロン・スミス。「負まけてしまい、ここまでうまくいっていたのにこんなことになって信しんじられない」と話はなした。

ヘッドコーチのスティーブ・ハンセンは「イングランドのようなプレッシャーの強つよい守備しゅびをされると、ボールが手てにつかず、ミスが多おおく出でた。もっと実行じっこう力りょくを上あげてやっていきたかったが、スペースがあっても前まえに進すすめなかった。私わたしたちも悪わるくはなかったが相手あいてのディフェンスが非常ひじょうによかった」と脱帽だつぼうするしかなかった。