こうした中なか、各地かくちの医療いりょう機関きかんなどには、子こどもの受診じゅしんや相談そうだんが増ふえているところがあるほか、学校がっこうでの面談めんだんなどに力ちからを入いれている地域ちいきもあります。

しかし、実際じっさいに面談めんだんをした教諭きょうゆなどからは「子こどもの心こころをくみ取くみとるのは難むずかしい」といった声こえも出でていて、自殺じさつのリスクのある子こどもをどう見みつけていくのかが課題かだいとなっています。

元もと高校こうこう教諭きょうゆで、カウンセリング心理しんり学がくが専門せんもんの関西かんさい外国がいこく語ご大学だいがくの新井あらい肇はじめ教授きょうじゅは「増加ぞうかの背景はいけいには新型しんがたコロナで社会しゃかい不安ふあんが高たかまり、生活せいかつが変化へんかしたことがあるのではないか。子こどもの変化へんかを見みつけたら、心配しんぱいだと伝つたえたうえでどんな気持きもちでいるのかしっかり聞きく必要ひつようがある」と話はなしています。

自殺じさつ予防よぼう外来がいらい 夏なつ以降いこう 診察しんさつ者しゃ増ふえる

福岡ふくおか市しにある「福岡ふくおか大学だいがく博多はかた駅えきクリニック」に設もうけられている「自殺じさつ予防よぼう外来がいらい」には、ことし夏なつ以降いこう、診察しんさつに訪おとずれる人ひとが増ふえているといいます。

診察しんさつにあたっている精神せいしん科か医いの衞まもる藤ふじ暢とおる明あきらさんによりますと、例年れいねんと比くらべて2倍ばい近ちかくに増ふえていて、特とくに10代だいから20代だいの若者わかものが深刻しんこくな状況じょうきょうだということです。

カルテには、「これからどう生いきていけばよいか分わからない」とか「死しんだら楽らくになるとは思おもう」といった若者わかものの声こえが並ならび、衞まもる藤ふじ医師いしは背景はいけいに新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうがあると考かんがえています。

このうち、ある中学生ちゅうがくせいはもともと父親ちちおやから虐待ぎゃくたいを受うけていましたが、新型しんがたコロナで学校がっこうが休校きゅうこうになり逃げ場にげばがなくなったことで自殺じさつを考かんがえるようになり、母親ははおやとともに診察しんさつに訪おとずれたということです。

衞まもる藤ふじさんは「コロナの影響えいきょうとみられる自殺じさつ未遂みすいや自じ傷きず行為こういをする人ひとの診察しんさつが急増きゅうぞうしている。特とくに思春ししゅん期きに入はいって親おやや先生せんせいに相談そうだんしづらい年齢ねんれいに入はいる子こどもたちの状況じょうきょうは深刻しんこくで、早急そうきゅうに支援しえんや相談そうだんの体制たいせいを構築こうちくする必要ひつようがある」と話はなしています。

福岡ふくおかでは学校がっこうで緊急きんきゅう面談めんだん

福岡ふくおか市し教育きょういく委員いいん会かいは、新型しんがたコロナウイルスで生活せいかつ環境かんきょうが変かわる中なか、子こどもの心こころが不安定ふあんていになっている可能かのう性せいがあるとして、今月こんげつ、市立しりつの小中しょうちゅう学校がっこうと高校こうこう、合あわせて217校こうで緊急きんきゅうの面談めんだんを始はじめました。

友人ゆうじん関係かんけいや学習がくしゅうの状況じょうきょう、家庭かてい環境かんきょうなど、さまざまな話題わだいから子こどもたちの心こころに異変いへんがないか探さぐり、気きになる子こどもがいた場合ばあいはスクールカウンセラーなど専門せんもん家かと一緒いっしょに見守みまもることにしています。

ただ、我慢がまんしている様子ようすの子こどもや人ひとに言いえないと考かんがえている様子ようすの子こどももいて、現場げんばでは、どう子こどもたちの声こえをくみ取くみとるのかが課題かだいになっているということです。

実際じっさいに面談めんだんを行おこなっている教諭きょうゆの1人にんは「短たん時間じかんの面談めんだんだけで子こどもの心こころをくみ取くみとるのは難むずかしいです。面談めんだんをきっかけに、心配しんぱいしてくれているんだなということだけでも分わかってもらえればと思おもっています」と話はなしていました。

専門せんもん家か「子こどもの気持きもちしっかり聞きく」

元もと高校こうこう教諭きょうゆでカウンセリング心理しんり学がくが専門せんもんの関西かんさい外国がいこく語ご大学だいがくの新井あらい肇はじめ教授きょうじゅは、子こどもの自殺じさつが増ふえていることについて「新型しんがたコロナによる一斉いっせい休校きゅうこうなどで家庭かてい生活せいかつの変化へんかが影響えいきょうしている可能かのう性せいがあるうえ、休校きゅうこうが明あけてからも授業じゅぎょうのペースが変かわるなどしているため、『大変たいへんだ』『不安ふあんだ』と感かんじている子こどもが多おおいのではないか」と分析ぶんせきしています。

そのうえで「必要ひつよう以上いじょうに恐おそれることはないが、自殺じさつのリスクがゼロの子こどもはいないということを頭あたまの片隅かたすみに置おいて接せっする必要ひつようがある」と指摘してきしました。

そして、自殺じさつを防ふせぐためのポイントとして「tell（伝つたえる）」「ask（尋たずねる）」「listen（聴きく）」「keep safe（安全あんぜんを確保かくほする）」の「TALK」の原則げんそくがあるとしたうえで、「『君きみのことを心配しんぱいしている』と子こどもがひとりではないことをことばにして伝つたえることが大切たいせつだ。その際さい、何なにかアドバイスしたり、説教せっきょうしたりするのではなく、子こどもがどんな気持きもちでいるのかをしっかり聞きく。そのうえで専門せんもん家かにつなげていくことなどが必要ひつようだ」と話はなしています。

タブレット端末たんまつで自殺じさつリスクを見みつける

子こどもの自殺じさつリスクを特別とくべつなソフトを入いれたタブレット端末たんまつを使つかって見みつけようという取り組とりくみも始はじまっています。

使つかわれているのは、東京とうきょう大学だいがく大学院だいがくいん教育きょういく学がく研究けんきゅう科かの教授きょうじゅで、精神せいしん科か医いでもある佐々木ささき司つかささんらが開発かいはつした「RAMPS」と呼よばれるソフトで、おととしに完成かんせいしてから、現在げんざいでは、新潟にいがた、東京とうきょう、茨城いばらきの高校こうこうなど合あわせて36校こうで導入どうにゅうされています。

使つかう場所ばしょは学校がっこうの保健ほけん室しつで、訪おとずれた子こどもにこのソフトが入はいったタブレット端末たんまつを手渡てわたし、まず、示しめされる11の質問しつもんに答こたえていってもらいます。

「食欲しょくよくはあるか」などの比較ひかく的てき、答こたえやすい質問しつもんが徐々じょじょに「『生いきていても仕方しかたがない』と考かんがえたことはあるか」とか、「自分じぶんで自分じぶんを傷きずつけたことはあるか」といった質問しつもんに変かわっていきます。

その後そのごは、タブレット端末たんまつを返かえしてもらった養護ようご教諭きょうゆが端末たんまつに示しめされる質問しつもんを子こどもにしていきます。

内容ないようは、最初さいしょに答こたえてもらった11問もんの回答かいとう結果けっかに応おうじて変かわっていき、例たとえば、「『生いきていても仕方しかたがない』と考かんがえたことがある」と答こたえた子こどもには、「死しんでしまいたいと思おもったり、眠ねむったまま二度にどと目めが覚さめなければいいと思おもったことがあるか」とか、「死しぬ準備じゅんびをしたり自殺じさつしかけたりしたことがあるか」などとさらに踏み込ふみこんでいきます。

そして最後さいごに、端末たんまつ上じょうに「自殺じさつリスク」が3段階だんかいで示しめされます。

質問しつもんは、精神せいしん科か医いが実際じっさいの診察しんさつの際さいに使つかう内容ないようで、佐々木ささき教授きょうじゅは、このソフトを活用かつようすることで、踏み込ふみこみにくい質問しつもんでも気軽きがるに話はなせる雰囲気ふんいきを作つくれるほか、教諭きょうゆの知識ちしきや経験けいけんにばらつきがあってもやり取やりとりの質しつを担保たんぽできると話はなします。

結果けっかは、必要ひつように応おうじて担任たんにんの教諭きょうゆや保護ほご者しゃ、医療いりょう機関きかんとも共有きょうゆうしていて、すでに活用かつようしている学校がっこうでは、「全まったく問題もんだいない」と思おもわれていた子こどものリスクが明あきらかになったり、「なんとなく心配しんぱい」と思おもわれていた子こどもが、実際じっさいには自殺じさつの計画けいかくまで立たてているほど深刻しんこくだったりしたケースなどがあったということです。

佐々木ささき教授きょうじゅは「『自殺じさつ未遂みすいをしました』と自分じぶんから言いってくる子こどもはなかなかいない。こちらが心配しんぱいしていることを示しめしながら話はなしを聞きき、情報じょうほうをキャッチして、早はやい段階だんかいで対応たいおうすることがいちばん大事だいじだ」と話はなしていました。