静岡県の川勝知事は1日、新人職員への訓示の中で「県庁というのは別のことばで言うとシンクタンクです。毎日野菜を売ったり、牛の世話をしたりするのとは違って、基本的に皆さんは知性が高い方たちです」などと発言しました。
この発言が、職業差別発言とも捉えられかねないとして波紋が広がり、川勝知事は2日夜、記者会見し「職業差別はありません。もし、そのことで不愉快な思いをされたとすれば 誠に申し訳ないと思う」と述べました。
そのうえで「どうしたらいいかと考えたんですけど、ことしの6月議会をもって職を辞そうと思う」と述べて突然、任期途中で辞職する意向を表明しました。
一夜明けて、川勝知事は3日午前10時半すぎ、知事公舎を出る際に、記者団から「どうして辞意を表明したのか」と質問されたのに対し「午後3時半に記者会見します」とだけ述べて、車に乗り込み、県庁に向かいました。
川勝知事が改めて行う記者会見で、辞職を決意した理由などをどのように説明するのか注目されます。
静岡市 難波市長「今回は信じがたいレベルで逆に心配」
静岡県の川勝知事が辞職の意向を表明したことについて知事のもとで副知事を務め、リニア問題も担当した静岡市の難波喬司市長は、記者団に対し「副知事をしていたころにも不適切な発言はあったが、今回は信じがたいレベルで、どうされてしまったのかと逆に心配している状況だ」と話しました。
そのうえで、JR東海が開業を目指すリニア中央新幹線について「JR東海の経営判断にみずからの意見を言うなど適切でない発言が多かった。県は前に進む姿勢で臨むべきだと思う」と述べました。
さらに、望まれる知事の姿勢については、「発言などで時間を取られることなく、しっかりとした行政経営ができる方に知事になっていただきたい」とする考えを示しました。
浜松市 中野市長「優劣をつけるような話いかがなものか」
川勝知事が辞職の意向を表明したことについて、浜松市の中野祐介市長は「きのうの知事の会見では、『職業差別の意図はなかった』ということだが、知事として受け取られる側がどう受け取るかまで考えなければいけない。特に、優劣をつけるような話をするのはいかがなものか。静岡県の顔としての知事のあり方、やり方が、すべてがいい方向に出ていたかというと必ずしもそうではなく、悪い方での静岡県の顔も残念ながらあった」と述べました。
そのうえで、今後の県政について「最近もさまざまな静岡県政の課題が出てきているので、解決に向けて新しく動き出すことを期待したい」と話していました。
島田市 染谷市長「突然の表明で大変驚いた」
川勝知事が辞職の意向を表明したことについて、リニア中央新幹線のトンネル工事で水資源への影響が懸念される大井川流域の自治体の1つ、島田市の染谷絹代市長は3日朝、報道陣の取材に応じ「突然の表明で大変驚いた。不適切発言はこれまでもたくさんあり、どんな心持ちがあって辞職の発表になったのかよく分からない」と話しました。
その上で、リニア中央新幹線の今後について「本来あるべき水資源や環境保全などの本筋から離れた議論でいろいろと世間をにぎわせてきたので辞職によって、本来あるべき議論に戻る1つのきっかけになればいいと思う」と述べました。
林官房長官「コメントすることは差し控える」
林官房長官は午前の記者会見で「知事の発言の一つ一つについて、政府の立場でコメントすることは差し控える」と述べました。
一方で「リニア中央新幹線については引き続き国土交通省がJR東海と静岡県の協議の状況を確認しつつ、JR東海に対して、静岡県をはじめとする関係自治体とのいっそうの対話を促すなど、品川ー名古屋間の早期開業に向けた環境整備を進めていきたい」と述べました。
立民 渡辺氏 “後継候補の話もいまは国会議員の職務に専念”
静岡県の川勝知事が辞職する意向を示したことについて、立憲民主党静岡県連の顧問を務める渡辺周・衆議院議員は川勝知事から後継候補として知事選挙に立候補するよう求める趣旨の話があったと明らかにし、いまは国会議員の職務に専念したいという考えを示しました。
2日静岡県の川勝知事が辞職する意向を示したことを受けて、立憲民主党静岡県連の顧問を務める渡辺周・衆議院議員は3日午前、国会内で記者団の取材に応じました。
この中で渡辺氏は、2日辞職の意向を表明する直前に川勝知事から電話を受けたことを明らかにし「リニア中央新幹線の開業時期の延期がはっきりし、自分の責任は果たしたので近く職を辞すということだった」と述べました。
その上で「『あとをやってくれ』という直接的な話はないが、今後の話について含みのある形で言われた」と述べ、川勝知事の後継候補として知事選挙に立候補するよう求める趣旨の話があったと明らかにしました。
一方で「政権交代に向け党の安全保障政策などを取りまとめる側にいる。いまは目の前のことに誠心誠意まい進したい」と述べました。
またリニア中央新幹線をめぐって、県がトンネル工事によって県内を流れる大井川の水量が減ることなどを懸念し、着工を認めていないことについて「ここまで来てやめることはありえない。JR東海や国が責任を持ってやるべきで、もし何かあった場合、施工者側が何らかの責任を取る覚書が必要だ」と述べました。