今月こんげつ、全国ぜんこくの警察けいさつで発足ほっそくした「特殊とくしゅ詐欺さぎ連合れんごう捜査そうさ班はん」。

約やく200人にんの専従せんじゅうの捜査そうさ班はんが作つくられた警視庁けいしちょうをはじめ、大だい都市としなどを管轄かんかつする7都府県とふけんの警察けいさつにあわせて約やく500人にんの捜査そうさ員いんが集あつめられ、全国ぜんこくの警察けいさつそれぞれに、詐欺さぎの捜査そうさで管轄かんかつの垣根かきねを越こえて連携れんけいするための窓口まどぐちが設置せっちされました。

従来じゅうらいの特殊とくしゅ詐欺さぎの捜査そうさで基本きほんとされてきたのは、ほかの犯罪はんざいの場合ばあいと同おなじく被害ひがいが発生はっせいした地域ちいきの警察けいさつが初動しょどうから犯人はんにん検挙けんきょまでを担になう「発生はっせい地ち主義しゅぎ」です。

捜査そうさ員いんが、詐欺さぎの拠点きょてんや容疑ようぎ者しゃの居住きょじゅう先さきがある首都しゅと圏けんなどに長期ちょうき間かん出張しゅっちょうをしたり、遠距離えんきょりの行き来いききを重かさねたりすることも求もとめられますが、人員じんいんにかぎりのある地方ちほうの警察けいさつにとって負担ふたんが大おおきくなっていました。

新あらたな「連合れんごう捜査そうさ班はん」では、重点じゅうてん的てきに捜査そうさ員いんを配置はいちした7都府県とふけんの警察けいさつが中心ちゅうしんとなり、被害ひがいがあった地域ちいきの警察けいさつからの依頼いらいを受うけて初動しょどう捜査そうさや、事件じけんの関係かんけい先さきの割り出わりだし、犯人はんにん検挙けんきょまでを主導しゅどうします。

警察庁けいさつちょう組織そしき犯罪はんざい対策たいさく2課かの森下もりした元雄もとお課長かちょうは、「これまで、特殊とくしゅ詐欺さぎの広域こういき性せいに対応たいおうしにくい面めんもあったが、新あらたな連合れんごう捜査そうさ班はんでは、全国ぜんこくの警察けいさつがお互おたがいに捜査そうさを依頼いらいできる枠組わくぐみになり、捜査そうさの迅速じんそく化かや効率こうりつ化かが期待きたいできる。SNSでリクルートされたメンバーが、全国ぜんこくを動き回うごきまわるような犯罪はんざいグループに対にたいし、警察けいさつが総合そうごう力りょくを発揮はっきして、1件けんでも多おおくの事件じけんを検挙けんきょしていきたい」と話はなしています。

「発生はっせい地ち主義しゅぎ」に基もとづく捜査そうさの具体ぐたい的てきなケース

去年きょねん、宮崎みやざき県けんの80代だいの女性じょせいが、弁護士べんごしなどをかたる特殊とくしゅ詐欺さぎの電話でんわで、現金げんきん、約やく5000万まん円えんをだまし取だましとられる事件じけんがありました。

女性じょせいによると、詐欺さぎグループは、「電話でんわで承諾しょうだくした福祉ふくし施設しせつの入所にゅうしょ希望きぼう者しゃへの名義めいぎ貸かしが、違法いほうにあたる」などと不安ふあんをあおり、宅配たくはい便びんで現金げんきんを送おくるよう指示しじしてきたということで、女性じょせいは2か月かげつ間かんに46回かいにわたって現金げんきんを引き出ひきだし、指示しじされた東京とうきょうの宛先あてさきに送おくってしまったということです。

宮崎みやざき県警けんけいは女性じょせいをだました詐欺さぎグループの捜査そうさを進すすめ、13人にんの容疑ようぎ者しゃをこれまでに逮捕たいほしています。

宮崎みやざき県警けんけいによりますと、捜査そうさで判明はんめいした13人にんの容疑ようぎ者しゃの居住きょじゅう先さきは、東京とうきょうや神奈川かながわ、栃木とちぎなど、いずれも宮崎みやざきからは遠とおく離はなれた関東かんとう地方ちほうでした。

捜査そうさ員いんたちは容疑ようぎ者しゃの行動こうどうをマークしたり、立ち寄たちより先さきを割り出わりだしたりするために宮崎みやざきと関東かんとうを飛行機ひこうきでたびたび行き来いききし、出張しゅっちょうが長期ちょうきにわたるときもあったということです。

一連いちれんの捜査そうさでは、指示しじ役やくの逮捕たいほにまでつなげることができましたが、土地とち勘かんのない場所ばしょでの長期ちょうきにわたる捜査そうさには、負担ふたんや精神せいしん的てきなプレッシャーもともなったとしています。

捜査そうさ本部ほんぶで指揮しきを執とっていた宮崎みやざき県けん警察けいさつ本部ほんぶの森下もりした隆博たかひろ警視けいしは、「移動いどうだけで相当そうとうの時間じかんがかかり、捜査そうさにもタイムラグが生しょうじていた。出張しゅっちょうさせる人数にんずうを抑おさえられれば、県内けんないのほかの事件じけんの捜査そうさに注力ちゅうりょくもできる。逆ぎゃくに他た県けんからの要請ようせいがあれば、全国ぜんこくどこの被害ひがい者しゃであっても対応たいおうするので、新あたらしい体制たいせいを1人にんでも多おおくの犯人はんにん検挙けんきょにつなげたい」と話はなしています。

検挙けんきょ人数にんずう 7都府県とふけんで全体ぜんたいの75％占しめる

警察庁けいさつちょうによりますと、去年きょねん1年間ねんかんに全国ぜんこくで確認かくにんされた特殊とくしゅ詐欺さぎの被害ひがい件数けんすうは1万まん9033件けんと、15年間ねんかんでもっとも多おおくなり、被害ひがいの総額そうがくは、おととしを70億おく円えん以上いじょう上回うわまわる441億おく円えん余あまりにのぼっています。

去年きょねん、特殊とくしゅ詐欺さぎに関かかわった疑うたがいで検挙けんきょされた人数にんずうは2499人にんで、このうち居住きょじゅう先さきが判明はんめいしたのは1909人にんでした。

都道とどう府県ふけん別べつの内訳うちわけは東京とうきょうが461人にんと最もっとも多おおく、次ついで神奈川かながわが215人にん、埼玉さいたまが208人にん、大阪おおさかが194人にん、千葉ちばが193人にん、愛知あいちが111人にん、福岡ふくおかが57人にんと続つづき、この上位じょうい7都府県とふけんで全体ぜんたいの75％を占しめています。

今回こんかいの「特殊とくしゅ詐欺さぎ連合れんごう捜査そうさ班はん」では、この7都府県とふけんの警察けいさつにあわせて500人にんの専従せんじゅうの捜査そうさ員いんが配置はいちされました。