先月せんげつ大阪おおさか 堺さかい市しの認定にんていこども園えんで運営うんえい法人ほうじんの一部いちぶの役員やくいんによるパワーハラスメントなどの不適切ふてきせつな対応たいおうを訴うったえて保育ほいく士しのほとんどが退職たいしょくするなど、各地かくちのこども園えんや保育ほいく所しょなどで複数ふくすうの保育ほいく士しが一斉いっせいに退職たいしょくする事例じれいが相次あいついでいます。

保育ほいく士しや保護ほご者しゃなどから「一斉いっせい退職たいしょく」に多おおくの声こえ

先月せんげつ14日にちにこのニュースを報ほうじたあと、NHKの情報じょうほう提供ていきょう窓口まどぐち「ニュースポスト」には保育ほいく士しや保護ほご者しゃなどから多おおくの声こえが寄よせられました。

「自分じぶんたちも一斉いっせい退職たいしょくを考かんがえている」とか「子こどもが通かよう園えんで保育ほいく士しが一斉いっせいに退職たいしょくし、不安ふあんだ」などの声こえが寄よせられています。

このうち、都内とないの認可にんか保育ほいく所しょに勤つとめる20代だいの保育ほいく士しが取材しゅざいに応おうじました。

この保育ほいく士しによると、ここ数すう年ねん、待機たいき児童じどう解消かいしょうとして園えんの運営うんえい会社かいしゃが新あらたな園えんを次々つぎつぎと開設かいせつした影響えいきょうで、現場げんばでは人手ひとで不足ふそくの状態じょうたいが続つづいてきたといいます。

常勤じょうきん保育ほいく士しのほかに短時間たんじかんのパートタイム勤務きんむの保育ほいく士しを入いれることで国くにの配置はいち基準きじゅんを満みたす形かたちにはなっていましたが、パートタイム勤務きんむの人ひとがいない時間じかん帯たいは配置はいち基準きじゅんを満みたさない状態じょうたいが常態じょうたい化かしているといいます。

こうした状況じょうきょうで先月せんげつには、保育ほいく士し5人にんが退職たいしょくしました。

自治体じちたいの基準きじゅんでは1歳児さいじ20人にんを本来ほんらいは4人にんでみるところを3人にんで保育ほいくすることも多おおく、目めが行き届いきとどかずに子こどもの安全あんぜんを守まもりきれるのか、不安ふあんな毎日まいにちだといいます。

保育ほいく士しは「子こどもがお漏もらしをしてしまっても、すぐに着替きがえさせてあげられずぬれたままになっていたり、子こどもが泣ないていてもだっこする余裕よゆうがなかったりの日々ひびが続つづいている。散歩さんぽは職員しょくいんがギリギリの人数にんずうで行いくと子こどもが道路どうろに飛び出とびだしたり遊具ゆうぐから転落てんらくしたりする事故じこが起おきかねず、怖こわくて行いくことができない。一いち人にん一いち人にんに丁寧ていねいにかかわって子こどもたちがやりたいことを主体しゅたい的てきにできるようにしてあげたいが、少すくない人数にんずうの保育ほいく士しでできる範囲はんいでしか対応たいおうできず、子こどもたちに我慢がまんさせることがつらく、疲弊ひへいしている」と窮状きゅうじょうを訴うったえていました。

そのうえで「このままだと大おおきなけがや事故じこが起おきかねず、最悪さいあくの場合ばあいは、子こどもの命いのちに関かかわり、自分じぶんたち現場げんばの人間にんげんが責任せきにんを問とわれてしまうのではないか。子こどものためになんとか踏ふみとどまっていますが、1人にんが辞やめるとドミノ倒たおしのようにさらに退職たいしょくが続つづくと思おもう。行政ぎょうせいなどが介入かいにゅうして状況じょうきょうを改善かいぜんしてほしい」と話はなしていました。

また、投稿とうこうを寄よせた大阪おおさか府内ふないの認可にんか保育ほいく所しょに子こどもを通かよわせている母親ははおやも取材しゅざいに応おうじました。

子こどもが通かよう園えんでは、先月せんげつ、園長えんちょうや保育ほいく士し20人にんちかくが一斉いっせいに退職たいしょくし、0歳児さいじの受け入うけいれを停止ていしする事態じたいになりましたが、保護ほご者しゃへの退職たいしょく理由りゆうの説明せつめいはなかったといいます。

新しん年度ねんどに入はいってすぐ、子こどもが園えんで軽かるいけがをしましたが園えんからは説明せつめいはなく「子こどもを面倒めんどうを十分じゅうぶんに見みられていないのではないか」と不安ふあんを募つのらせているといいます。

女性じょせいは「市しに相談そうだんしても保育ほいく所しょの転てん園えん先さきもなかなか見みつからず、預あづけないと仕事しごとに行いけないので不信ふしん感かんを抱いだきながら通かよっています。まだ子こどもは幼おさなくて自分じぶんで園えんの様子ようすを話はなせないので、怖こわいです。何なにかあってからでは遅おそいので元もとの態勢たいせいに戻もどしてほしい」と話はなしていました。

こども家庭かてい庁ちょうが全国ぜんこくの自治体じちたいに通知つうち

こうした事態じたいを受うけて、こども家庭かてい庁ちょうは保育ほいく事業じぎょうを実施じっしする全国ぜんこくの自治体じちたいに対にたいし、一斉いっせい退職たいしょくを未然みぜんに防ふせぐためには外部がいぶから保育ほいく士しの不安ふあんなどに寄り添よりそえる支援しえんの取り組とりくみや、職場しょくば環境かんきょうの改善かいぜんを進すすめることが重要じゅうようだと17日にち通知つうちしました。

通知つうちでは、各かく自治体じちたいで

▽社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士しなどのアドバイザーが保育ほいく所しょなどを巡回じゅんかいして勤務きんむ環境かんきょうについての助言じょげんをしたり

▽人間にんげん関係かんけいや労働ろうどう条件じょうけんなどに関にかんする相談そうだん窓口まどぐちを設置せっちするといった保育ほいく士しの離職りしょく防止ぼうしのための国くにの支援しえん事業じぎょうを積極せっきょく的てきに活用かつようすることなどを呼よびかけています。

保育ほいく士しを巡めぐっては、深刻しんこくな人手ひとで不足ふそくが続つづいていて、国くには、

▽現場げんばの繁忙はんぼう感かんを無なくすため、今年度こんねんどから保育ほいく士し1人にんが見みる子こどもの数かずを示しめした「配置はいち基準きじゅん」を見直みなおしたほか

▽処遇しょぐう改善かいぜん策さくなどを実施じっししていますが、有効ゆうこう求人きゅうじん倍率ばいりつは去年きょねん7月つきの時点じてんで、全ぜん職種しょくしゅの平均へいきんが1.26倍ばいである一方いっぽう、保育ほいく士しは2.45倍ばいとなり手なりてが不足ふそくしている状況じょうきょうで、いかに離職りしょくを防ふせぐかが課題かだいとなっています。

福岡ふくおか 宗像むなかた市しでは保育ほいく士しの定着ていちゃくを目指めざす取り組とりくみ進すすめる

福岡ふくおか県けん宗像むなかた市しでは、保育ほいく士しの定着ていちゃくを目指めざすため、昨年度さくねんどから国くにの制度せいどを活用かつようし、保育ほいく所しょに社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士しを派遣はけんして職場しょくばの風通かぜとおしをよくして現場げんばのトラブルを早期そうきに解決かいけつにつなげるための取り組とりくみを進すすめています。

昨年度さくねんどから社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士しを受け入うけいれている園えんでは、経営けいえい側がわと現場げんばの保育ほいく士しの間までコミュニケーションに課題かだいがあったといいます。

自治体じちたいから派遣はけんされた社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士しが保育ほいく士しにアンケート調査ちょうさや個別こべつにヒアリングを実施じっししたところ、若手わかての保育ほいく士しから「日々ひびの保育ほいくでの頑張がんばりを評価ひょうかされている実感じっかんがない」との声こえがあがったということです。

こうした声こえを受うけて、月つきに一いち度どほど、経営けいえい側がわと中堅ちゅうけんや若手わかての保育ほいく士しが参加さんかして、園えん独自どくじの評価ひょうか基準きじゅんやキャリアパスを作成さくせいしたことで「日々ひびの保育ほいくを見みてもらっている」と実感じっかんできるようになったといいます。

また、外部がいぶの人ひとに保育ほいくを見みてもらうことで、それぞれ保育ほいく士しの強つよみの発見はっけんにもつながり、モチベーションアップにつながったといいます。

恵めぐみ愛あい保育ほいく園えんの畠中はたけなか智美ともみ園長えんちょうは「どうしても経営けいえい者しゃ側がわ、職員しょくいん側がわという壁かべがあったが、職員しょくいんが日々ひび考かんがえていることがわかりお互おたがいに歩み寄あゆみよりができるようになった。第だい三さん者しゃの方ほうに、日々ひびの保育ほいくを見みて良よい部分ぶぶんを認みとめてもらえたことも職員しょくいんの自信じしんにつながりやりがいが生うまれたと思おもう」と話はなしていました。

特定とくてい社会しゃかい保険ほけん労務ろうむ士しの菊地きくち加奈子かなこさんは「全国ぜんこくからの依頼いらいが今いま相次あいついでいますが、目めに見みえて問題もんだいはない園えんでも経営けいえい者しゃが予兆よちょうに気付きづかないうちに一斉いっせい退職たいしょくが起おきるケースもある。労務ろうむ環境かんきょうを専門せんもん的てきな目めで見みることで気付きづいていない課題かだい観かんを洗い出あらいだして一緒いっしょに解決かいけつできるので、うまくいっていると思おもわずに第三者だいさんしゃを入いれることは非常ひじょうに有効ゆうこうだと思おもう」と話はなしていました。

専門せんもん家か「労使ろうし間かんの問題もんだい解決かいけつする公的こうてき機関きかん設置せっちが必要ひつよう」

保育ほいくに詳くわしい東京とうきょう家政かせい大学だいがくの和田わだ明人あきと教授きょうじゅは保育ほいく士しの一斉いっせい退職たいしょくが相次あいつぐ現状げんじょうについて「待機たいき児童じどう問題もんだいなどを背景はいけいに、保育ほいく所しょが増ふやされた一方いっぽう、現場げんばでは深刻しんこくな保育ほいく人材じんざいの不足ふそくが解消かいしょうされない状態じょうたいが続つづいている。こうした中なか、業務ぎょうむの多忙たぼう感かんなどから職場しょくばへの不満ふまんが増幅ぞうふくし、連帯れんたいして一斉いっせいに退職たいしょくするケースが増ふえていて、その結果けっか、何なんら非ひのない子こどもが影響えいきょうを受うけている」とした上うえで、「保育ほいく現場げんばでの労使ろうし対立たいりつの多おおくは、日々ひびの保育ほいくをめぐる方針ほうしんの違ちがいであることが多おおく、保育ほいくの質しつを評価ひょうかする基準きじゅんがないために行政ぎょうせいなどが現場げんばからの訴うったえを受うけても介入かいにゅうしづらいという課題かだいがある」と指摘してきしています。

その上うえで、「保育ほいく所しょに入はいりたいというニーズが受け入うけいれを上回うわまわる状態じょうたいが長年ながねん続つづいていたため、保育ほいくの質しつが低ひくくてもとう汰されず、質しつを向上こうじょうする努力どりょくが生うまれにくかった。今後こんごは、保育ほいくの質しつを判定はんていする公的こうてきな評価ひょうか基準きじゅんを整ととのえるとともに、労使ろうし間かんの問題もんだいを解決かいけつする公的こうてき機関きかんを設置せっちすることが必要ひつようだ」と訴うったえていました。