また、山本衛弁護士は「最高裁に無罪と判断してほしかったがそこにいたらなかったのは残念だ。『疑わしきは無罪に』という原則に従って一刻も早く無罪判決を出してほしい」と述べました。
一方、最高検察庁の吉田誠治公判部長は「判決内容をよく検討し、やり直しの審理での的確な主張・立証に備えたい」とするコメントを出しました。
裁判では、妻は夫に殺害されたのか、それとも育児のストレスによる自殺だったのかが3年半以上にわたって争われてきました。 2019年2月の初公判で、元編集次長は「私は妻を殺していません」と述べ、弁護士も「妻は4人の子どもの育児に追われてストレスを抱えており、みずから自宅の階段で首をつって死亡した」と無罪を主張しました。 一方、検察はマットレスやカバーに妻の唾液のあとが残されているといった現場の状況などから、元次長が寝室で妻の首を絞めて窒息させたうえで、階段から転落させたと主張しました。 1審の東京地方裁判所は「現場の状況などから、マットレスの上でうつ伏せの状態で首を圧迫したと推定できる」と認めました。 さらに、妻の額に長さ3センチほどの深い切り傷があったことから、「多量の出血が想定される状態でみずから階段に向かったにしては周囲に残された血痕が少ない。自殺だとしたら不自然だ」と述べ、元次長が殺害したのは間違いないとして懲役11年を言い渡しました。 2審の東京高等裁判所は、1審の判決について「額の傷の出血量などを十分検討しないまま、残された血痕が少ないと判断したのは不合理だ」として自殺を否定する根拠としては不十分だと指摘しました。 一方で、「額から血が流れていれば、手をあてて確認したり布などで拭ったりするはずだが顔や手にこうした痕跡がない。自殺のストーリーは客観的な証拠と矛盾する」として、1審に続いて有罪と判断しました。 最高裁の審理では、この額の傷が焦点となりました。 先月開かれた弁論で、弁護側は「顔に血が流れたとみられるあとがある。傷は心臓が動いている間にできたもので、寝室でもみあったあとも妻は生きていて、その後、自殺した」と主張。 「殺人であることを示す積極的な証拠はなく、自殺の可能性を否定できない以上、無罪を言い渡すべきだ」と改めて訴えました。 これに対し、検察は「顔に血のあとはなく、傷は妻が窒息したあと、階段から落とされたときにできたものだ」と反論し、「客観的な証拠を合わせれば殺害されたことは明らかだ。殺人であることは揺るがない」と主張して、上告を退けるよう求めました。
裁判の争点と検察 弁護側双方の主張