ワシントンでは23日、旧ソビエト時代の1932年から33年にかけて飢きんで亡くなったウクライナの人たちを追悼する式典が開かれました。この飢きんは「ホロドモール」=「飢えによる虐殺」と名付けられ、ウクライナ政府は、当時のソビエト指導部が農村地帯から食料を没収したことが原因で、数百万人が飢餓で亡くなったとしています。
式典では、アメリカ国務省でエネルギー政策を統括するパイアット国務次官補が「われわれがいま、目の当たりにしているのは、現代版のホロドモールだ。ロシアはエネルギー関連のインフラ施設を攻撃し、ウクライナを暗闇に陥れようとしている」と述べ、ロシアによるインフラへの攻撃を厳しく非難しました。
式典のあと、パイアット次官補は「アメリカはウクライナのエネルギーシステムを強化するための手段の提供を進めている」と述べ、支援を急ぐ考えを示しました。また、ウクライナのマルカロワ駐米大使は「ロシアの軍事侵攻は彼らがホロドモールで行ったことと同じだ。われわれはあきらめずに戦い、国を守る」と強調しました。
ゼレンスキー大統領は、ロシアの攻撃を「エネルギーテロ」と呼び、「氷点下の寒さで多くの市民が電気や暖房なしで過ごすことになれば人道に対する罪だ」と非難し、ロシアを止めるため安保理が具体的な行動をとるべきだと改めて訴えました。 欧米各国からもロシアを非難する意見が相次ぎ、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「ウクライナ国民に計り知れない苦しみを与えるため冬を武器にしているのは明らかだ。国を凍らせて服従させようとしている」と述べたほか、ノルウェーのユール国連大使も「ロシアの目的はウクライナ国民を恐怖に陥れることだ」と述べました。 これに対してロシアのネベンジャ国連大使はウクライナの被害は、ウクライナ側の迎撃用ミサイルによるものだと主張しました。
ウクライナ国営の電力会社「ウクルエネルゴ」は23日、24時間の緊急停電を全土で実施すると発表するなど、冬の寒さが厳しさを増すなか電力不足が深刻化しています。
これに対してロシア軍は、ヘルソンから撤退させた部隊の一部を東部のドネツク州とルハンシク州に投入しているとみられます。 さらに、支配地域を維持するために広範囲にわたって防衛線を築いていると指摘され、今後、東部を中心に戦闘が激しくなるという見方も出ています。 一方、ロシアは、プーチン大統領の側近、対外情報庁のナルイシキン長官がアメリカのCIA=中央情報局のバーンズ長官と今月、トルコで会談するなどアメリカと接触する動きも見せています。 ただ、現時点で停戦に向けて表だった動きはみられず、ロシア軍は、ウクライナ軍から激しい反撃を受けながらも依然として十分な戦闘部隊を維持しているとみられ、戦闘のさらなる長期化が懸念されています。
一方、今月15日に隣国のポーランドに着弾したミサイルについて、「調査によって仮に、ウクライナの迎撃ミサイルだったと結論づけられたら、問題なく受け入れる。ポーランドやヨーロッパの国々はウクライナがより強大な敵と戦っていることを理解していて、我々の関係に影響しない」と述べました。
さらにクレバ外相は、日本が、来年、G7=主要7か国の議長国を務めることについて、「ロシアに対する制裁の強化などを日本が主導することに期待したい」と述べるとともに、ウクライナの人たちが冬を越すために必要な発電機などの支援を日本政府が決めたことに感謝しました。
小泉氏は、現在の戦況について、今月、ウクライナ軍が南部の要衝ヘルソンを奪還したことなどを挙げ、「この2か月は、ウクライナ軍のペースで進んできたが、今後はウクライナが主導権を取り続けられるか、ロシアがそれを取り返すのかわからなくなってきた」と述べ、ドニプロ川を挟んで対じした両軍は、互いに攻勢をかけるのが難しいとしてヘルソン周辺の戦線はこう着状態に入るという見方を示しました。 そのうえで「ロシアは、新しい勝負の場所を東部のドンバスにしようとしていて、特にバフムトの周辺で非常に激しく攻勢をかけ始めている。いったんは、大きな戦闘を休止してロシアもウクライナも次の大きな攻勢に出ようとしているが、それがいつどこなのかを探り合っている状況ではないか」と述べました。
そのうえで「どちらが先に大規模な攻勢を発動して相手を受け身に回させるかが勝負になってくる」と述べ、先に大規模な攻勢を仕掛けた側が戦いを有利に進められると指摘しました。 そして「この冬の戦闘は激化するのではないか。真正面から戦力どうしをぶつけるような戦闘になる可能性が高い。互いの軍事力の地が出るような戦場になるだろう。戦闘が来年の春先まで続いて、春先にまた土がぬかるむ時期がやってきて、夏になると戦闘が再開できてということで、来年いっぱいぐらいまで戦闘が続くコースが見えてしまう」と述べました。
ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、隣接するウクライナとの国境に近い、ポーランド南東部の村プシェボドフに15日、ミサイルが着弾し、男性2人が死亡しました。 ポーランド大統領府は、22日、ツイッターで、ミサイルが着弾したあと、フランスのマクロン大統領を名乗る人物からの電話がドゥダ大統領にあったことを明らかにしました。 この電話をめぐっては、政治家や著名人にいたずら電話をかけることで知られる2人のロシア人が、ドゥダ大統領との通話を録音したとするおよそ7分半の音声を動画投稿サイトに投稿していました。 動画では、ドゥダ大統領とされる人物が「私はロシアと戦争をしたくない」などと話し、ミサイル着弾を受けた対応について議論しています。 ポーランドの大統領府は、「電話相手の話しぶりからなりすましかもしれないと判断して、通話を終えた」と釈明し、音声について実際にあったやり取りだと認めた形です。 2人のロシア人は投稿で、2年前にもドゥダ大統領にいたずら電話をしたとしていて、ロイター通信は、フランスのマクロン大統領やイギリスのジョンソン元首相、人気歌手のエルトン・ジョンさんもだまされたことがあると伝えています。
トカエフ大統領はウクライナ情勢について「和平を集団的に模索する時が来たと思う。どんな戦争でも、和平交渉で終わる。少なくとも休戦を実現するために、どんな小さな機会も使う必要がある」とロシアのプーチン大統領がいる前で交渉による解決を目指すべきだと訴えました。 トカエフ大統領は、ことし6月にもプーチン大統領を前に、ウクライナ東部ドンバス地域の2州の親ロシア派による独立宣言を認めないと発言するなどロシアとは一線を画す姿勢を示しています。
ザポリージャ原発は外部からの電力供給が失われる事態が相次いでいて、最近も敷地内への砲撃があり建物などへの被害が出ています。 また、ウクライナの原子力発電公社「エネルゴアトム」は23日、リウネ、フメリニツキー、南ウクライナの3つの原発が、周波数の低下により緊急保護システムが作動し送電網から切り離されたと明らかにしました。復旧できしだい送電を再開するとしています。
ザポリージャ州の当局によりますと、亡くなった赤ちゃんは生後わずか2日だったということです。 赤ちゃんの祖母は、「孫を産んだ娘はがれきの下から助け出されましたが、赤ちゃんは死んでいました。娘も足をケガしていて、打ちのめされていました」と声を詰まらせながら話していました。
22日に撮影された映像では、13歳の男の子が砲撃により手を失う大けがを負い、停電でエレベーターが使えないため、医療従事者たちが男の子を担架に乗せたまま、6階の手術室まで階段で運んでいました。そして、非常用の明かりしかつかない暗い手術室で、医師らが慎重に男の子の治療にあたっていました。 男の子の母親は「ロシア軍は人間ではない。彼らは民間人を、子どもを撃っている。私たちは彼らをここに呼んでいない」と激しい怒りをあらわにしていました。
そのうえで、「私たちはすべてを再建し、すべてを乗り越える。私たちは不屈の民だからだ」として、徹底抗戦を続ける構えを強調しました。
このうち首都キーウで洋裁店を営むイリナ・ナペレリさんは(38)ボランティアグループの一員として、本業のかたわら兵士のためのフリースを作っています。イリナさんは、ことし6月に南部ヘルソン州での戦闘に兵士として参加していた33歳の弟を失い、弟のことを思いながら、ボランティア活動を行っているということです。 イリナさんは「この防寒着で兵士たちが少しでも暖まってもらえたらと思います。いまはそれがとても大事なことです」と話していました。
ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官は、23日にSNSに投稿した動画で「いくつかの州のエネルギー施設に攻撃があった」と述べました。 さらにウクライナ国営の電力会社「ウクルエネルゴ」は、23日、SNSで、ウクライナのすべての地域で現地時間の午後3時前から24時間の緊急停電を実施すると発表しました。 ウクライナ各地の州や市の当局者によりますと、この攻撃の影響で、水や暖房も止まっているということです。
ゼレンスキー大統領 国連安保理でロシアの攻撃を非難
ロシア軍によるインフラ施設などへの攻撃続く
ウクライナ軍 占領地域のさらなる奪還目指す
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専門家「冬の戦闘は激化 来年いっぱい続くか」
ポーランド大統領 偽の仏大統領から電話 ミサイル着弾を議論
カザフスタン大統領「和平を集団的に模索する時」
ザポリージャ原発 外部からの電力供給再び喪失 IAEA
アメリカの軍事支援 総額で190億ドル余りに
南部ザポリージャ州 病院へのミサイル攻撃で赤ちゃん死亡
停電相次ぎ暗い手術室で治療も
ゼレンスキー大統領 徹底抗戦を続ける構えを強調
欧州議会 ロシアをテロ支援国家と認定する決議を採択
東南部の戦線 兵士に防寒着を届ける
ウクライナ 首都キーウで複数の爆発 3人が死亡 市当局