赤木あかぎ雅子まさこさん

「夫おっとと一緒いっしょにいるような気分きぶんで判決はんけつに臨のぞみました。しかし、私わたしが知しりたかったことは何なにも出でてこなかった。なんのために裁判さいばんで2年ねん8か月かげつも頑張がんばってきたんだろうと思おもえて、残念ざんねんでならない。夫おっとは法律ほうりつに守まもってもらえなかったのに佐川さがわさんは守まもってもらえるんだと理不尽りふじんに感かんじました」

森友もりとも学園がくえんに関にかんする財務省ざいむしょうの決裁けっさい文書ぶんしょの改かいざんに関与かんよさせられたことがきっかけでした。

2017年ねん、学園がくえんへの国有こくゆう地ちの値引ねびき売却ばいきゃくが発覚はっかくしました。

しかし、実際じっさいには財務省ざいむしょうでは「国会こっかい審議しんぎの紛糾ふんきゅうを懸念けねん」したなどとして、近畿きんき財務局ざいむきょくに交渉こうしょうの経緯けいいや政治せいじ家かなどの名前なまえを記録きろくから削除さくじょするよう指示しじ。

公文こうぶん書しょが改かいざんされました。

俊夫としおさんが残のこした手記しゅきには、改かいざんに関与かんよさせられ、命いのちを絶たつほど追い詰おいつめられた苦悩くのうがつづられていました。

「抵抗ていこうしたとはいえ関かかわった者ものとしての責任せきにんをどう取とるか、ずっと考かんがえてきました。事実じじつを、公的こうてきな場所ばしょでしっかりと説明せつめいすることができません。今いまの健康けんこう状態じょうたいと体力たいりょくではこの方法ほうほうをとるしかありませんでした。（55才さいの春はるを迎むかえることができない儚はかなさと怖こわさ）」

「夫おっとが亡なくなった日ひは生いきていて一番いちばんつらい1日にちになってしまった。当時とうじは大騒おおさわぎしたけれど、改かいざんがどのように行おこなわれたのか答こたえは出でていないのに、夫おっとの死しがなかったことのようにされてとても不満ふまんです」

雅子まさこさん

「夫おっとの仕事しごとのしかたがわかって立派りっぱだったと思おもうし、夫おっとの足跡あしあとでもあるので見みることができてよかった」

本人ほんにんらへの尋問じんもんは裁判所さいばんしょが「尋問じんもんをしなくても判断はんだんは可能かのうだ」として認みとめませんでした。

ことし7月つき、すべての審理しんりが終おわり、直接ちょくせつ、話はなしを聞ききたいという雅子まさこさんの願ねがいは届とどきませんでした。

雅子まさこさん

「国くにの対応たいおうは夫おっとの命いのちをとても軽かるく扱あつかわれているような気きがして、夫おっとは何なん回かいも殺ころされていると感かんじた。佐川さがわさんに話はなしを聞きくことがかなわないかぎり、夫おっとの死しの真相しんそうには近ちかづけない」

争点そうてんは、国家こっか公務員こうむいんだった佐川さがわ元もと局長きょくちょう個人こじんの賠償ばいしょう責任せきにんが認みとめられるかどうかでした。

一方いっぽう、雅子まさこさんにとって佐川さがわ元もと局長きょくちょうとの裁判さいばんは、夫おっとの死しの真実しんじつに迫せまるために残のこされた、最後さいごの大おおきな闘たたかいでした。

裁判所さいばんしょには、佐川さがわ元もと局長きょくちょう個人こじんの賠償ばいしょう責任せきにんを認みとめ、夫おっとのような犠牲ぎせいを二度にどと出ださないようにしてほしいと訴うったえていました。

判決はんけつで、中尾なかお彰あきら裁判さいばん長ちょうは、最高さいこう裁判所さいばんしょの判例はんれいに加くわえ、すでに国くにが「認諾にんだく」によって賠償ばいしょうを認みとめていることを考慮こうりょして佐川さがわ元もと局長きょくちょう個人こじんの賠償ばいしょう責任せきにんを認みとめませんでした。

そして、「賠償ばいしょう責任せきにんを負おわない以上いじょう、道義どうぎ上じょうはともかくとして、元もと局長きょくちょうに説明せつめいや謝罪しゃざいすべき法的ほうてき義務ぎむもない」と述のべて訴うったえを退しりぞけました。

「最高さいこう裁判所さいばんしょの判例はんれいの枠組わくぐみから外はずれず、形式けいしき的てきにあてはめた驚おどろきのない判断はんだんだ。真相しんそう解明かいめいを求もとめて国くにに訴うったえを起おこす当事者とうじしゃは、損害そんがい賠償ばいしょう制度せいどしかないからその方法ほうほうで司法しほうを頼たよっているのに、そうした実態じったいを無視むしして、金銭きんせん面めんで被害ひがいを補填ほてん（ほてん）さえすれば、それ以上いじょうでも以下いかでもないという判断はんだんを示しめし続つづけると裁判さいばんへの信頼しんらいが損そこなわれることが懸念けねんされる」

裁判さいばんを続つづけるか悩なやんでいましたが、判決はんけつを受うけて、控訴こうそして闘たたかいを続つづけたいと話はなしています。

去年きょねん10月つきには、赤木あかぎファイルをもとに財務省ざいむしょう内部ないぶのやり取やりとりがわかる文書ぶんしょの開示かいじを求もとめる別べつの裁判さいばんも起おこしていて、この裁判さいばんを通をとおして、新あらたな事実じじつが明あきらかになる可能かのう性せいは残のこされています。

雅子まさこさん

「夫おっとは自分じぶんの意志いしを貫つらぬいており、私わたしは亡なくなった夫おっとのことを尊敬そんけいしているし、大好だいすきです。いまでも佐川さがわさんは公おおやけの場ばで説明せつめいすべきだと思おもっている。夫おっとの亡なくなった理由りゆうや何なにがあったのか知しりたいし、二度にどとこういうことが起おきてほしくないということを引き続ひきつづき訴うったえていきたい」