今回、カルテルが
結ばれた
背景に
あるとみられるのが、
電力小売りの
自由化です。
電力の小売り事業は、かつて大手の電力会社が地域ごとに市場を独占していました。国は電気料金の引き下げやサービスの競争を促すため、2000年以降、段階的に自由化を進め、2016年に一般の家庭が電力の契約先を自由に選べる「家庭向けの電力小売り自由化」が始まりました。
経済産業省の「電力・ガス取引監視等委員会」によりますと、国内で販売された電力量のうち、新規の事業者=新電力が占める割合は、
◇全面自由化された2016年4月の時点で5.2%でしたが、
新規参入が相次ぎ、
◇ことし8月時点では20.6%になっています。
内訳を見ると、2016年4月の時点での新電力のシェアは、
▽大規模な事業所向けの「特別高圧」で5.3%、
▽中小規模の事業所向けの「高圧」で10.5%だったのに対し、
ことし8月時点では
▽「特別高圧」で7.9%、
▽「高圧」で22.4%になっています。
事業者向けの「特別高圧」と「高圧」は市場規模が大きく、今回、カルテルを結んでいた疑いがある中国電力と中部電力、九州電力、関西電力の管内での去年1年間の販売額は合わせて3兆500億円に上ります。
今回は、各社が従来、電力を供給していたエリア以外では、積極的に新規顧客を獲得しないよう申し合わせる、いわば「不可侵」協定を結んでいたとも言え、公正取引委員会は各社の収益確保や料金の引き下げを防ぐ狙いがあったとみています。
専門家「エリア越えて越境 競争厳しくなった」
電力業界に
詳しい野村総合研究所カーボンニュートラル
戦略グループの
稲垣彰徳グループマネージャーは「2016
年に
家庭向けの『
低圧』も
含めて
全面自由化するにあたり、
地域間の
電力会社の
競争、
要はエリアを
越えて
越境して
いくことによる
競争が
出てきたことが『
高圧』も
含めて
競争が
厳しくなった
要因の1つだと
思う。
特に『
高圧』
に関しては、
お客様の
価格感度が
非常に
高く、より
安い価格を
求めるので、
価格競争になっている」と
話しました。
公正取引委員会の関係者はNHKの取材に対し、「電力小売りの全面自由化は、事実上独占状態だった電力業界に競争を起こすのが柱の1つだ。そうした中で大手事業者によるカルテルが組まれ、競争が不当に制限されているとしたら、その流れに逆行するものであり自由化の本来の趣旨をないがしろにする行為だと言える」と指摘しています。
「課徴金減免制度」最も早く申告した事業者は課徴金全額免除
「
課徴金減免制度」は、
談合やカルテルに
加わった
企業などに対し、
自主的な
違反申告を
促そうと2006
年に
導入された
制度です。
独占禁止法ではカルテルが認定された事業者に対して、違反行為で得た売り上げの原則10%にあたる課徴金が科されますが、公正取引委員会の調査が始まる前に最も早く申告した事業者は課徴金が全額免除され、その後に続いた事業者も、申告順や協力の度合いによって最大で60%減額されます。
関係者によりますと、今回のカルテルでは関西電力が最も早く自主申告し、課徴金を免除されたものとみられます。
中部電力と子会社に課徴金275億円余
中部電力と
子会社の「
中部電力ミライズ」は12
月1
日、
公正取引委員会から2
社で
合わせて275
億円余りに
上る課徴金納付命令書の
案に関する意見聴取通知書を
受け取ったことを
明らかにしました。
そのうえで中部電力では納付を求められている275億円余りについて、特別損失に計上する予定だとしています。
ただ、中部電力では「今回の特別損失はあくまで会計基準に基づき、引当金繰入額として計上するもので、実際に課徴金を納付するかどうかを含め、今後の対応については通知書の内容を精査し、公正取引委員会の説明を受けたうえで慎重に検討していく」としています。
そのうえで「お客様や株主、そして地域の皆様や取引先などの関係者の皆さまに、ご心配をおかけしていることをお詫び申し上げます」とコメントしています。
関西電力「厳粛に受け止め 当局の調査に全面的に協力」
関西電力は、
排除措置命令書の
案や
課徴金納付命令書の
案に関する公正取引委員会からの
意見聴取の
通知は
現時点では
受け取っていないとしたうえで「
立ち入り検査を
受けたことを
厳粛に
受け止め、
当局の
調査に対し、
全面的に
協力している。
それ以上の
回答は
差し控える」と
コメントしています。
中国電力「内容を精査・確認し対応を慎重に検討」
中国電力は
排除措置命令書の
案と
課徴金納付命令書の
案に関する意見聴取通知書を
受け取ったことを
明らかにしたうえで「
今後の
対応については、
通知書の
内容を
精査・
確認し、
公正取引委員会からの
証拠などに関する
説明をうけたうえで
慎重に
検討します。
お客さまをはじめ
関係者の
皆さまに
多大なるご
心配をおかけし、
深くおわび
申し上げます」と
コメントしています。
九州電力「内容を精査・確認し対応を検討」
九州電力は
公正取引委員会から
課徴金を
命じる方針が
示された
意見聴取通知書を
受け取ったことを
明らかにしたうえで「
内容を
精査・
確認し、
公正取引委員会から
証拠などに関する説明をうけたうえで
今後の
対応を
検討してまいります。
お客様をはじめ
関係者の
皆さまには
多大なご
迷惑とご
心配をおかけしておりますことを
深くおわび
申し上げます」と
コメントしています。
松野官房長官「値上げ申請に影響与えるものではない」
松野官房長官は、
午後の
記者会見で「
公正取引委員会の
調査中の
案件について、
そのプロセスの1つ1つに
コメントすることは
差し控える」と
述べました。
その上で、中国電力が、家庭向けの電気料金のうち認可が必要な「規制料金」と呼ばれるプランの値上げを経済産業省に申請していることについて「課徴金は『規制料金』の原価に含まれるものではなく、経済産業省がこれから行う審査に、課徴金納付命令が影響を与えるものではない」と述べました。
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