日本新聞: 沖縄戦から76年「慰霊の日」感染対策で追悼行事は中止や縮小

23日にちは太平洋たいへいよう戦争せんそう末期まっき、20万まん人にんを超こえる人ひとが亡なくなった沖縄おきなわ戦せんから76年ねんの「慰霊いれいの日ひ」です。新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん対策たいさくで追悼ついとう行事ぎょうじが中止ちゅうしや縮小しゅくしょうを余儀よぎなくされる中なか、糸満いとまん市しの平和へいわ祈念きねん公園こうえんでは朝あさ早はやくから祈いのりをささげる人ひとたちの姿すがたが見みられます。

昭和しょうわ20年ねんの沖縄おきなわ戦せんでは住民じゅうみんを巻き込まきこんだ激はげしい地上ちじょう戦せんで20万まん人にんを超こえる人ひとが亡なくなり、県民けんみんの4人にんに1人にんが命いのちを落おとしました。

沖縄おきなわ県けんは、旧きゅう日本にっぽん軍ぐんの組織そしき的てきな戦闘せんとうが終おわったとされる6月つき23日にちを「慰霊いれいの日ひ」としています。

最後さいごの激戦げきせん地ちとなった糸満いとまん市し摩文仁まぶにの平和へいわ祈念きねん公園こうえんでは朝あさ早はやくから戦没せんぼつ者しゃの名前なまえが刻きざまれた「平和へいわの礎いしずえ（いしじ）」の前まえで祈いのりをささげる人ひとの姿すがたが見みられました。

平和へいわ祈念きねん公園こうえんでは正午しょうご前まえから戦没せんぼつ者しゃ追悼ついとう式しきが行おこなわれます。

ことしは緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんが出でていることから新型しんがたコロナウイルスの感染かんせん対策たいさくのため参列さんれつ者しゃを30人にんほどにとどめるなど、去年きょねんからさらに規模きぼが縮小しゅくしょうされます。

県内けんないでは各地かくちで慰霊いれい祭さいが相次あいついで中止ちゅうしになったほか、休校きゅうこうで平和へいわ学習がくしゅうを行おこなうことができなくなるなどこれまでに増まして戦争せんそう体験たいけんの継承けいしょうが難むずかしい状況じょうきょうとなっています。

アメリカ軍ぐん基地きち埋め立うめたて工事こうじで揺ゆれたこの1年ねん

一方いっぽう、沖縄おきなわではこの1年ねん、名護なご市し辺野古へのこ沖おきで進すすむアメリカ軍ぐん基地きちの埋め立うめたて工事こうじに使つかう土砂どしゃの調達ちょうたつ先さきをめぐる問題もんだいが大おおきな議論ぎろんを呼よびました。

今いまも多おおくの戦没せんぼつ者しゃの遺骨いこつが眠ねむるとみられる沖縄おきなわ本島ほんとう南部なんぶの土砂どしゃの使用しようを国くにが検討けんとうしていることに対にたいし、県内けんないの市町村しちょうそんでは遺骨いこつを含ふくむ可能かのう性せいのある土砂どしゃを使つかわないよう求もとめる意見いけん書しょが相次あいついで可決かけつされました。

76年ねん前まえの凄惨せいさん（せいさん）な地上ちじょう戦せんの爪痕つめあとや記憶きおくと今いまなお向き合むきあう沖縄おきなわは「慰霊いれいの日ひ」の23日にち、平和へいわを願ねがう静しずかな祈いのりに包つつまれます。

「慰霊いれいの日ひ」平和へいわの礎いしずえ前まえで朝あさから祈いのり

「平和へいわの礎いしずえ」は戦後せんご50年ねんの平成へいせい7年ねんに沖縄おきなわ戦せんの最後さいごの激戦げきせん地ち、糸満いとまん市し摩文仁まぶにに建設けんせつされました。

国籍こくせきを問とわず、民間みんかん人じんと軍人ぐんじんも区別くべつせず、沖縄おきなわ戦せんなどで亡なくなった24万まん1632人にんの名前なまえが刻きざまれています。

ことしは新あらたに申告しんこくがあった沖縄おきなわ県けん出身しゅっしんの38人にんと県けん外がい出身しゅっしんの3人にんの合あわせて41人にんの名前なまえが追加ついかされました。

沖縄おきなわ戦せんで父ちちを亡なくした女性じょせいは

沖縄おきなわ戦せんで父親ちちおやを亡なくした沖縄おきなわ市しの76歳さいの女性じょせいは「当時とうじ、母ははのおなかの中なかにいて父ちちの顔かおも知しりませんが、毎年まいとしここに来きて私わたしが娘むすめであることを知しらせています。戦後せんご、父親ちちおやがいる人ひとたちがとてもうらやましく父ちちを奪うばった戦争せんそうは憎にくいです。この南部なんぶで亡なくなったということしか分わからず遺骨いこつもありませんが、この日ひだけはいろいろ人ひとなたちに多おおくの犠牲ぎせい者しゃが出でたこの南部なんぶに向むかって平和へいわを祈いのってほしい」と話はなしていました。

祖父母そふぼを亡なくした男性だんせいは

八はち重じゅう瀬せ町まちの65歳さいの男性だんせいは渡名喜となき村むらに住すんでいた祖母そぼと叔父おじを沖縄おきなわ戦せんで亡なくしました。

祖母そぼは、ごうの外がいで食事しょくじの準備じゅんびをしていた時ときに背負せおっていた叔父おじとともにアメリカ軍ぐんの機銃きじゅう掃射そうしゃを受うけたということです。

男性だんせいは「祖母そぼの顔かおも知しりませんが、父ちちを産うんでくれたから私わたしがいるので感謝かんしゃを伝つたえるために毎年まいとし来きています。私わたしは戦後せんごの生うまれで戦争せんそうを知しりませんが、自分じぶんが生うまれるわずか10年ねん前まえに沖縄おきなわで悲惨ひさんなことがあったのだと思おもいを巡めぐらせながら平和へいわを祈いのっています」と話はなしていました。

親族しんぞくが「集団しゅうだん自決じけつ」した八重やえ瀬せ町まちの上間うえま寿子ひさこさん

沖縄おきなわ県けん八はち重じゅう瀬せ町まちに住すむ上間うえま寿子ひさこさん（62）は、アメリカ軍ぐんが上陸じょうりくし日にち米べい間かんの戦闘せんとうやいわゆる「集団しゅうだん自決じけつ」などでおよそ1200人にんが亡なくなった座間味ざまみ村むらの出身しゅっしんです。

平和へいわの礎いしずえに刻きざまれた祖父母そふぼなど親族しんぞく合あわせて8人にんの名前なまえの前まえで夫おっとや妹いもうととともに祈いのりをささげました。

上間うえまさんは「悲劇ひげきを語かたる人ひとが少すくないので文献ぶんけんなどで親族しんぞくの集団しゅうだん自決じけつを知しりました。その時ときの苦くるしみを思おもうとことばがありません。すばらしいはずの人間にんげんを無残むざんな行動こうどうに駆り立かりたてる戦争せんそうを二度にどと起おこしてはいけないと、未来みらいに語り継かたりついでいきたい」と声こえを詰つまらせながら話はなしていました。

軍ぐんに徴用ちょうようされた叔父おじを亡なくした砂川すなかわいづみさん

沖縄おきなわ県けん宜野湾ぎのわん市しの砂川すなかわいづみさん（54）は沖縄おきなわ戦せんで船ふねの乗組のりくみ員いんとして軍ぐんに徴用ちょうようされた叔父おじを亡なくしました。

砂川すなかわさんは「去年きょねんはコロナの影響えいきょうで来きたられませんでしたが、ことしは母ははを自宅じたくに残のこし姉あねと2人にんで来きました。叔父おじには『心こころ安やすらかに眠ねむってください。戦争せんそうを二度にどと起おこさず平和へいわに暮くらしていきます』と伝つたえました」と話はなしていました。

また、姉あねの厚子あつこさん（56）は「戦争せんそうで亡なくなった人ひとたちを忘わすれてはならないと思おもいます」と話はなしていました。

戦闘せんとうで父ちちを亡なくした那覇なは市しの金城きんじょう敬子けいこさん

昭和しょうわ20年ねん5月つき、日にち米べい両りょう軍ぐんの激はげしい戦闘せんとうによって今いまの浦添うらぞえ市しで父親ちちおやを亡なくしたという那覇なは市しの金城きんじょう敬子けいこさん（75）は「母ははのおなかの中なかにいたので父ちちのことは知しりませんが、毎年まいとしここに来きているのでコロナ禍かであっても来きました。父ちちには沖縄おきなわのアメリカ軍ぐん基地きちのことなど懸念けねんがある今いまの状況じょうきょうを報告ほうこくしました。教師きょうしをしていたので戦争せんそうが命いのちも心こころも奪うばうことを話はなしてきました。若わかい人ひとたちには平和へいわの大切たいせつさを考かんがえてほしい」と話はなしていました。

9歳さいで沖縄おきなわ戦せんを経験けいけんした男性だんせいは

沖縄おきなわ戦せんで叔父おじと曽そ祖母そぼを亡なくした沖縄おきなわ県けん南城なんじょう市しの85歳さいの男性だんせいは「沖縄おきなわ戦せんの時ときは9歳さいで家族かぞくで沖縄おきなわ本島ほんとう南部なんぶのごうに避難ひなんしていましたが、日本にっぽん軍ぐんに追い出おいだされ命いのちからがら北部ほくぶに歩あるいて逃にげました。最近さいきんは戦時せんじ中ちゅうのように個人こじんの自由じゆうが奪うばわれつつあるように感かんじます。一人ひとりひとりが自由じゆうに意見いけんを言いえる社会しゃかい、そして平和へいわを強つよく望のぞんでいます」と話はなしていました。

糸満いとまん「魂魄こんぱくの塔とう」でも祈いのり

沖縄おきなわ戦せん最後さいごの激戦げきせん地ちとなった糸満いとまん市しにある「魂魄こんぱく（こんぱく）の塔とう」は昭和しょうわ21年ねん、近ちかくに収容しゅうようされた住民じゅうみんが身元みもとが分わからないまま放置ほうちされていたおよそ3万まん5000人にんの遺骨いこつを集あつめて建たてた慰霊いれい塔とうです。

「魂魄こんぱくの塔とう」には朝あさから遺族いぞくなどが訪おとずれ祈いのりをささげています。

今いまも姉あねの遺骨いこつ見みつからない平川ひらかわ正三しょうさんさん

姉あねを失うしない、遺骨いこつが今いまも見みつかっていない那覇なは市しの平川ひらかわ正三しょうさんさん（87）は娘むすめの我那覇がなは留美子るみこさん（61）と訪おとずれ、手てを合あわせていました。

我那覇がなはさんは「父ちちはこの時期じきになるとどうしてもいろいろ思い出おもいだすみたいで、きょうは雨あめが降ふっていますが『それでも行いく』と言いうので一緒いっしょについてきました」と話はなしていました。

また、名護なご市し辺野古へのこ沖おきのアメリカ軍ぐん基地きちの埋め立うめたて工事こうじについて、沖縄おきなわ本島ほんとう南部なんぶの土砂どしゃの使用しようを国くにが検討けんとうしていることに対にたいし「土砂どしゃには亡なくなった人ひとの血ちも染み込しみこんでいると思おもいますし、複雑ふくざつでやるせない気持きもちになります」と話はなしていました。