日本新聞: 原材料価格上昇人手不足賃上げどう対応？日銀短観から見る

今回こんかいの日銀にちぎん短観たんかんでは、企業きぎょうの間まで値上ねあげの動うごきが広ひろがる中なか、原材料げんざいりょう価格かかくの上昇じょうしょう分ぶんを転嫁てんかできず、収益しゅうえきが圧迫あっぱくされている企業きぎょうが多おおいことがうかがえます。一方いっぽうで、人手ひとで不足ふそくの深刻しんこく化かなどを背景はいけいとした賃上ちんあげも課題かだいとなっているだけに、各地かくちの企業きぎょうは対応たいおうに苦慮くりょしています。

3年ねんぶりにベースアップ実施じっしも電気でんき代だい高騰こうとうが… 札幌さっぽろ

札幌さっぽろ市し中央ちゅうおう区くにある水産物すいさんぶつの仲なか卸おろし会社かいしゃは、ことし2月つき、およそ60人にんいるすべての正せい社員しゃいんを対象たいしょうに基本きほん給きゅうを引き上ひきあげる「ベースアップ」を3年ねんぶりに行おこないました。

会社かいしゃによりますと、コロナ禍かからの経済けいざい活動かつどうの正常せいじょう化かで取引とりひき先さきの多おおくを占しめる飲食いんしょく店てんからの注文ちゅうもんが増加ぞうかし、2023年ねん1月つき期きの業績ぎょうせきは、新型しんがたコロナの影響えいきょうがほとんどなかった2020年ねん1月つき期きを上回うわまわる水準すいじゅんにまで回復かいふくしているということです。

ただ、ことしの賃上ちんあげ率りつは平均へいきんで1.5％にとどまり、物価ぶっかの上昇じょうしょうにみあうような思い切おもいきった賃上ちんあげはできませんでした。

その大おおきな要因よういんとなったのが高騰こうとうが続つづく電気でんき代だいです。この会社かいしゃのことし2月つき使用しよう分ぶんの電気でんき代だいはおよそ320万まん円えんと、去年きょねんの同おなじ月つきに比くらべておよそ1.5倍ばいに増加ぞうかしました。

この会社かいしゃは水産物すいさんぶつの仲なか卸おろしに加くわえて北海道ほっかいどう小樽おたる市しにある工場こうじょうでサケの加工かこう品ひんの製造せいぞうも手てがけていますが、生なまのサケを急速きゅうそく冷凍れいとうする機械きかいを中心ちゅうしんに大量たいりょうの電気でんきを消費しょうひします。

この工場こうじょうの電気でんき代だいは4月つき使用しよう分ぶんから値上ねあげされ、年間ねんかんの電気でんき代だいはこれまでより20％余あまり増ふえるという試算しさんが契約けいやく先さきの電力でんりょく会社かいしゃから示しめされています。

エネルギー価格かかくの動向どうこうによっては電気でんき代だいの値上ねあがりが続つづく可能かのう性せいもあるなかで、人件じんけん費ひを増加ぞうかさせれば経営けいえいの悪化あっかを招まねくおそれもあるとして、ことしの賃上ちんあげは小幅こはばにとどめざるをえなかったということです。

コスト削減さくげんで賃上ちんあげの原資げんしを捻出ねんしゅつ長野ながの佐久さく

また、長野ながの県けん佐久さく市しにあるアプリの開発かいはつなどを手てがける従業じゅうぎょう員いんおよそ100人にんのIT企業きぎょうでは、ことし6月つき、5000円えんのベースアップを含ふくめ月額げつがくで平均へいきん1万まん2000円えんほどの賃上ちんあげを行おこなう予定よていです。物価ぶっか高だかへの対応たいおうや人材じんざいの獲得かくとく競争きょうそうを有利ゆうりに進すすめることがねらいで、ベースアップはおよそ15年ねんぶり、上げ幅あげはばは過去かこ最高さいこうになるということです。

大幅おおはばな賃上ちんあげを可能かのうにしたのが、ここ数すう年ねんにわたって行おこなってきたコスト削減さくげんの取り組とりくみだといいます。

この会社かいしゃは、新型しんがたコロナの影響えいきょうで在宅ざいたくでのリモートワークが普及ふきゅうしたことを受うけて、ビルのワンフロアを借り切かりきっていた東京とうきょう支店してんについて、3年ねん前まえ、およそ20分ぶんの1の広ひろさのレンタルオフィスに移転いてんしました。これによって東京とうきょう支店してんの年間ねんかんの維持いじ費ひは移転いてん前まえに比くらべて700万まん円えん余あまり削減さくげんできたということです。

さらに在宅ざいたくでのリモートワークを増ふやす一方いっぽうで出張しゅっちょうを減へらすなどして業務ぎょうむの効率こうりつ化かを進すすめたことも賃上ちんあげの原資げんしの捻出ねんしゅつにつながったということです。

今回こんかいの日銀にちぎん短観たんかん。大だい企業きぎょうの製造せいぞう業ぎょうでは、「仕つかまつ入にゅう価格かかく」が上昇じょうしょうと答こたえた企業きぎょうの割合わりあいから下落げらくと答こたえた企業きぎょうの割合わりあいを差し引さしひいた指数しすうが前回ぜんかいから6ポイント下落げらくしてプラス60となりました。

また、製品せいひんの販売はんばい価格かかくの動向どうこうを示しめす「販売はんばい価格かかく」の指数しすうは、前回ぜんかいから4ポイント下落げらくしてプラス37となりました。

指数しすうが下落げらくに転てんじるのは「仕つかまつ入にゅう価格かかく」「販売はんばい価格かかく」のいずれも11期きぶりで、国際こくさい的てきな商品しょうひん価格かかくがこのところ下落げらく傾向けいこうにあることが背景はいけいにあるとみられます。

この結果けっか、仕入しいれと販売はんばいの指数しすうの差さは、前回ぜんかいから2ポイント縮小しゅくしょうしましたが、その差さは23ポイントと依然いぜん、大おおきく開ひらいていて、仕入しいれコストの上昇じょうしょう分ぶんを転嫁てんかできず、収益しゅうえきが圧迫あっぱくされている企業きぎょうが多おおいことがうかがえます。

また、大だい企業きぎょうの非ひ製造せいぞう業ぎょうでは、「仕つかまつ入にゅう価格かかく」が5ポイント下落げらくしてプラス48、「販売はんばい価格かかく」が1ポイント上昇じょうしょうしてプラス29となりました。

非ひ製造せいぞう業ぎょうでも仕つかまつ入いりと販売はんばいの指数しすうの差さは前回ぜんかいから6ポイント縮小しゅくしょうしましたが、非ひ製造せいぞう業ぎょうでも、仕入しいれコストの上昇じょうしょうに価格かかく転嫁てんかが追おいついていない状況じょうきょうが続つづいています。

3か月かげつ後ごの先行さきゆきについては、大だい企業きぎょうの製造せいぞう業ぎょう、非ひ製造せいぞう業ぎょうともに、「仕つかまつ入にゅう価格かかく」と「販売はんばい価格かかく」の指数しすうはいずれもさらに低下ていかするという見通みとおしが示しめされました。

原材料げんざいりょう価格かかくの上昇じょうしょうが今後こんご、一服いっぷくするという見方みかたや海外かいがい経済けいざいの減速げんそくへの懸念けねんも背景はいけいにありますが、こうした中なかで企業きぎょうの間まで価格かかく転嫁てんかの動うごきが進すすむかどうかが焦点しょうてんとなります。

水際みずぎわ対策たいさく緩和かんわでにぎわう飲食いんしょく店てん神戸こうべ

コロナ禍かからの経済けいざいの正常せいじょう化かや水際みずぎわ対策たいさくの緩和かんわを受うけて、特産とくさん品ひんの高級こうきゅう和牛わぎゅう「神戸こうべビーフ」を提供ていきょうする神戸こうべ市しの飲食いんしょく店てんは、国内外こくないがいの観光かんこう客きゃくでにぎわっています。

神戸こうべ市し中央ちゅうおう区くにあるレストランでは、「神戸こうべビーフ」のステーキなどを提供ていきょうしていて、観光かんこう地ちとして人気にんきの中華ちゅうか街がい、南京なんきん町まちにも近ちかく、国内外こくないがいから多おおくの観光かんこう客きゃくが訪おとずれます。

店みせによりますと、水際みずぎわ対策たいさくが緩和かんわされた去年きょねん10月つき以降いこう、外国がいこく人じん観光かんこう客きゃくが増ふえていて、現在げんざいは、訪おとずれる客きゃくの3割わりほどが海外かいがいからと、コロナ禍か前まえと同おなじ水準すいじゅんまで回復かいふくしたということです。

この日ひもアメリカやカナダ、ドイツなどからの観光かんこう客きゃくが次々つぎつぎと訪おとずれ、神戸こうべビーフを使つかったステーキやオムライスなどの料理りょうりを楽たのしんでいました。

店みせの運営うんえい会社かいしゃでは、神戸こうべ市内しないで数すう十じゅう人にん規模きぼの団体だんたい客きゃくを受け入うけいれる別べつの店舗てんぽも経営けいえいしていて、こちらには香港ほんこんや台湾たいわんなどアジアからの団体だんたいを中心ちゅうしんに予約よやくが相次あいついでいるということです。

人手ひとで不足ふそくで休館きゅうかん日び設定せってい松山まつやま

観光かんこう地ちの宿泊しゅくはく施設しせつは客きゃくからの予約よやくが回復かいふくする一方いっぽうで、深刻しんこくなのが人手ひとで不足ふそくです。松山まつやま市しの道後どうご温泉おんせんの施設しせつはほぼ毎月まいつき「休館きゅうかん日び」を設もうけることで連休れんきゅうを取得しゅとくしやすくし従業じゅうぎょう員いんの定着ていちゃくを図はかろうとしています。

道後どうご温泉おんせんで最大さいだい規模きぼの宿泊しゅくはく施設しせつは政府せいふの旅行りょこう支援しえんなどを追い風おいかぜに3月つきはほぼ満室まんしつの状態じょうたいが続つづきました。

その一方いっぽうで深刻しんこくさを増ましているのが人手ひとで不足ふそくです。

2023年度ねんどに15人にんの正せい社員しゃいんの採用さいようを計画けいかくしましたが、人材じんざいの獲得かくとく競争きょうそうが激はげしく入社にゅうしゃしたのは5人にんにとどまりました。そのため派遣はけん社員しゃいんやアルバイトの採用さいようを増ふやそうとしていますが、求人きゅうじんの募集ぼしゅうを出だしても応募おうぼが少すくないほか、時給じきゅうを大幅おおはばに引き上ひきあげたくても簡単かんたんではないため人材じんざいの確保かくほが難むずかしくなっているといいます。

このためこの宿泊しゅくはく施設しせつは4月つきからほぼ毎月まいつき、比較的ひかくてき予約よやくが少すくない日ひは日帰ひがえり入浴にゅうよくを含ふくめて全館ぜんかん休業きゅうぎょうする「休館きゅうかん日び」を設もうけることにしました。新あらたに「休館きゅうかん日び」を設もうけて連休れんきゅうを取得しゅとくしやすくすることで労働ろうどう環境かんきょうを改善かいぜんし、従業じゅうぎょう員いんの定着ていちゃくを図はかることがねらいです。

4月つきは大型おおがた連休れんきゅうが始はじまる前まえの17日にちから3日間にちかんを「休館きゅうかん日び」として、今年度こんねんどは合あわせて37日間にちかんの「休館きゅうかん日び」を設もうけることにしています。