がんの治療が続く中、亡くなったあとのことは最後までほとんど話すことができなかったと言います。
酒向さんは「明るい性格で『私があなたの面倒を見るわよ』って言ってくれるような人でした。そのときは『終活』ということばも知らず、後のことはなるようになるだろうぐらいしか思っていなかった」と振り返ります。
そして、地元の区の社会福祉協議会や、終活の相談窓口などを訪れ、2年半余りにわたって人生の終わりへの備えを進めています。 具体的には、葬儀などを行う業者と契約したほか、持病や薬、かかりつけ医などの情報に加え、病気や事故などで回復が見込めない状態になった時には延命治療は望まないことなどもエンディングノートに記した上で、関係する人に伝えておくなどの準備をしたということです。 酒向さんは「エンディングノートを書いて少し安心できましたが、もっと早く始めた方がよかったと感じます。自分1人で生きていかなきゃならないと追い詰められてやるよりも、慌てずにやった方がいいと思います」と話しています。 そのうえで「助けてもらえる人をたくさん作っておくのが大切で、お互い支え合って生きている夫婦ならなおさら、元気なうちから亡くなったあとのことを考えて話し合っておくのがいいと思う」と話していました。
それによりますと、自分の病気や要介護、死亡時に、周囲の人が手続きできるよう備えたいか尋ねた質問では「そう思う」「ややそう思う」と回答した人は、合わせて90.6%に上りました。 一方で、備える際の課題を尋ねた質問では「もう少し先でいいと思う」が最も多い44.1%「するべきことが多すぎる」が30.6%「何をしていいか分からない」が27.1%と続きました。 このうち「もう少し先でいいと思う」と回答した高齢者の割合を年代別にみると、65歳から69歳で53.1%、70歳から74歳で42.7%、75歳から79歳で37.4%、80歳以上でも33.6%となっています。
内訳は、年代別では、70代が最も多い39%、80代が28%、60代が18%、90代が10%、50代以下が5%となっています。 世帯別では、「1人暮らし」が最も多く半数以上の54%、「高齢者世帯」が26%、子どもと同居など「その他」が20%となっています。 性別では、女性が65%、男性が35%と3人に2人は女性で、男性は死別や離婚するなどして、1人になってから相談に来る人が多いということです。 センターの運営を受託している豊島区民社会福祉協議会 天羽瞬一チーフは「男性は病気や入院などで必要に迫られて来る人が多い。後回しにしてしまうと、気力や体力が落ちて、財産や考えなどが十分整理できなくなるおそれもあり、早めに取り組むことで希望どおりの生活を送れることにもつながるので年齢を問わず検討してほしい」と話していました。 窓口に相談に訪れた62歳の女性は、住民が終活を通して検討や準備した内容をあらかじめ登録する区の制度に申し込んでいました。 女性は「夫は死後のことなどは特に考えずに亡くなってしまったので、自分のときは遺産や葬儀のことなど決めておきたいと思い登録しに来ました。亡くなってから迷惑がかからないよう、お金をかけずに準備したい」と話していました。
アンケート調査 9割は「備えたい」一方で
東京 豊島区 相談窓口を開設