アメリカ農務省がことし5
月にまとめた
報告書によりますと、
輸出先の
国からの
データなどをもとに
調べたところ、
去年からことしにかけての1
年間ではロシアの
小麦の
輸出量は、
前の
年に
比べて36%
増えて4500
万トンとなり、
過去最多を
記録することが
予想されるとしています。
また輸出先としては、トルコやエジプト、イラン、サウジアラビアのほか、スーダンやアルジェリアといった中東やアフリカの国々が上位を占めているということです。
さらに、ロシアが主導する「ユーラシア経済同盟」の加盟国にも陸上輸送で小麦が輸出され、なかでもカザフスタンへの輸出量が多いということです。
一方、ロシアのインターファクス通信は、先月、ロシアのパトルシェフ農業相が「ことしの農産物の輸出額はおよそ15%から20%、前の同じ時期を上回っている」と述べたと伝えています。
国営のタス通信も今月7日、パトルシェフ農業相の話として「今月から来年6月にかけての1年間で、最大で5500万トンの穀物を輸出する計画だ」という見通しを伝え、輸出先としては、ロシアに友好的な国が9割近くを占めるとしています。
ロシア“友好国”のイラン ロシアからの穀物輸入量増加
イラン
税関の
統計によりますと、ロシアから
輸入した
穀物の
量は、
先月までの3
か月間でおよそ74
万トンと、
前の
年の
同じ時期と
比べておよそ1.5
倍、
侵攻前のおととしと
比べておよそ2.5
倍に
増えています。
イラン港湾海事局でアンザリ港を担当するナザリ氏は「ことしはロシアから輸入するトウモロコシの量が増えている。大事なのは取り引き先の国の要望に沿うことなので、私たちは、ロシア側の求めにもっと応える用意がある」と話していました。
ロシアとしては、カスピ海航路でイランを経由して、その先の中東の湾岸地域へ穀物などを輸出したい思惑もあるとみられます。
アンザリ自由貿易区域庁のニアジ長官は「ロシアにとって湾岸諸国とつながることはとても重要な成果となるため、ロシアは渇望している」と話していました。
ロシアとイランつなぐ両国間に位置する“カスピ海ルート”
日本の
国土と
ほぼ同じ広さを
持つカスピ海はもともと、チョウザメの
卵から
作るキャビアや、
豊富な
埋蔵量を
誇る海底油田などで
知られます。
イラン側は否定しているものの、イランがカスピ海を輸送路としてロシアへ無人機や弾薬などの兵器を供与していると、欧米からは指摘されています。
さらに、ロシアとしては、軍事侵攻が長期化する中、ロシア経済を維持する上で、カスピ海は重要な貿易ルートとなっています。
ロシアとイランの両国は、ともに欧米から制裁を科される中、「南北輸送回廊」と呼ばれ、ユーラシア大陸を縦断する物流網の構築に力を入れてきました。
道路や鉄道を使うルートではほかの国を通過する必要があるのに対し、カスピ海航路を利用すれば、両国がどの国も介さずに直接、物資を輸送できることになります。
イランの港にはロシア国旗掲げた多くの船が
イランの
首都テヘランから
北西に
およそ250
キロ離れたアンザリ
港は、
カスピ海に
臨むイラン
側の
主要な
港です。ふだんは、
安全保障上の
理由などから
報道機関の
立ち入りが
制限されていますが、
先月末、NHKの
取材班は
当局から
許可を
得て
港での
撮影が
認められました。
港には、
確認できただけで4
隻のロシアの
貨物船が
停泊していて、
多くのロシア
国旗がはためいていました。
このうち、取材当日の朝、イラン側の港に到着したばかりだという船には大麦が積まれていて、港ではダンプカーに積み替えて、港内の貯蔵庫に次々と運ばれていました。
イラン港湾海事局によりますと、ロシアとの取り引き拡大に伴い、アンザリ港で去年1年間に取り扱ったコンテナの量はおととしと比べ、およそ40%増えたということです。さらに、港を国内の鉄道網と接続する線路の建設もことし9月の完成を目指して進められていて、完成すれば、この港からペルシャ湾までが鉄道でつながることになります。
この港を管轄するアンザリ自由貿易区域庁のニアジ長官は「周辺国の地政学的な状況が、この経済特区の輸送路としての役割をより重要にしている。この港を回廊に組み込むことでイランは制裁に立ち向かうことができる」と話しています。
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