このうち、大統領の専用機が到着した羽田空港近くの道路では、SPや制服の警察官が多く配置されているほか、空港のターミナルでは、電動式の立ち乗り2輪車に乗った警察官がパトロールを行うなどしています。
また、大統領の移動に伴い、都内では高速道路や一般道の広い範囲で一時的な交通規制が行われます。
去年、安倍元総理大臣が銃撃された事件以降、要人警護の強化が進む中、警視庁は、官邸や韓国大使館といった重要施設で警察官を増員して配置するほか、各地で検問も行うなど、厳戒態勢で警備に臨む方針です。
3月6日に韓国のユン政権が「徴用」をめぐる問題で解決策を示した際には、ホワイトハウスは即座にこれを歓迎する声明を出し、日韓関係の改善に強い期待を表明しました。翌7日にはユン大統領を4月末にワシントンに国賓として迎えることを発表しました。 アメリカとしては、日韓関係の改善の機運をとらえ、これまで停滞していた日米韓3か国の関係を高いレベルにまで引き上げていきたい考えで、とりわけ安全保障面で連携を強め、中国や北朝鮮に対する抑止力を高めたいという思惑があります。
韓国出発に先立ってユン大統領は、けさ弾道ミサイルを発射した北朝鮮に対し「無謀な挑発によって代価を払うことになる」とけん制しています。 岸田総理大臣との会談では、弾道ミサイル発射をめぐっても意見を交わし、日韓両国やアメリカを加えた3か国で緊密に連携して対応していくことを確認するものと見られます。 さらに両首脳は、半導体のサプライチェーンや量子技術を含めた先端技術の優位性の確保などで協力を強化するため、新たに経済安全保障に関する対話の枠組みを創設することで一致する見通しです。会談のあと両首脳はそろって記者会見を行うことにしています。 その後の夕食会では、すき焼きやオムライスが好物だというユン大統領の希望もふまえ、東京・銀座の2軒の店で食事を共にする予定で、岸田総理大臣としては、率直な意見交換を通じ、個人的な信頼関係を深めたい考えです。
その上で「首脳どうしで率直なやり取りが行われ、国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき、日韓関係がさらに発展することを期待する」と述べました。
正午ごろに東京に到着する予定で、民団=在日本大韓民国民団の関係者らとの昼食会に出席したあと、午後、岸田総理大臣との首脳会談に臨み、「徴用」をめぐる問題での韓国政府の取り組みを直接説明する方針です。 ユン大統領は東京に2日間滞在する予定で、17日は、両国の経済界のトップなどによる懇談会や、都内の大学での講演会などにも出席し、未来志向の関係構築をアピールすることにしています。 ※ユン・ソンニョル(尹錫悦)、キム・ゴニ(金建希)。
ユン政権としては、安全保障環境が厳しさを増す中、日米韓3か国の連携強化を図る上でも日韓関係の改善を急ぐとともに、首脳どうしが互いに相手国を訪問し合う「シャトル外交」の12年ぶりの再開にもつなげるねらいがありそうです。 一方、最大の懸案である「徴用」をめぐる問題では、韓国政府が今月6日に発表した解決策について、一部の原告や支援団体が強く反発していて、ユン政権は引き続き丁寧に説明し理解を得る努力を求められています。 このため、岸田総理大臣との会談ではこの問題への取り組みを直接説明した上で、日本側から前向きな対応を引き出したい考えです。 また、ユン大統領の訪問には大手財閥をはじめ多くの企業経営者が同行することになっていて、日韓間の経済協力を強化する好機としても位置づけているとみられます。
【慰安婦問題】 慰安婦問題をめぐっては、2015年、当時の安倍政権とパク・クネ(朴槿恵)政権の間で、韓国政府が設置する財団に日本政府が10億円を拠出し、元慰安婦への支援を行うことで合意し「最終的かつ不可逆的に」解決することを確認しました。 この日韓合意を発表したのは、日本側は当時、外務大臣を務めていた岸田総理大臣でした。 しかし、パク政権に続くムン・ジェイン政権は、この合意を批判し、2018年11月に財団の解散を一方的に発表し、対立が深まりました。
2018年12月には海上自衛隊の航空機が日本海で韓国軍の艦艇から射撃管制用レーダーの照射を受け、日本政府は不測の事態を招きかねない危険な行為だとして抗議しました。 一方、韓国側は、自衛隊機を狙ったものではないという姿勢を崩さず、双方の見解は異なったままとなっています。 【佐渡島の金山】 日本が世界文化遺産への登録を目指している新潟県の「佐渡島の金山」をめぐっても韓国は「朝鮮半島出身の労働者が強制的に働かされた場所だ」として反発しています。 【福島第一原発 処理水放出計画】 東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を基準を下回った状態に薄めて海に放出する計画について、韓国は懸念を表明しています。 今後、日韓関係の改善を進めるため、こうした課題や懸案についても協議が進むかが焦点となります。
韓国との間には島根県の竹島をめぐる領土問題もあります。 日本はこの問題を平和的手段で解決するため1954年以降、3回にわたって国際司法裁判所に付託することを韓国側に提案しましたが、いずれも拒否され、実現していません。 【韓国の水産物輸入規制】 東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、韓国は福島や宮城など8つの県のすべての水産物の輸入を停止しています。 また輸入を認めた食品などについても、産地証明書や放射性物質の検査証明書を添付するよう求めています。 これに対して日本政府は、放射性物質に関する厳しい基準を満たしたものだけを出荷していて、韓国の措置は国際的な貿易ルールに違反しているして2015年にWTO=世界貿易機関に提訴しました。 しかし2019年にWTOは日本の主張を退け、事実上の敗訴が決まりました。 その後も日本は、国際機関の評価など科学的根拠に基づいて判断すべきだと韓国に働きかけていますが、規制撤廃のめどは立っていません。 【日本の輸出管理】 日本政府は2019年7月、韓国側の貿易管理に関する審査などの体制が不十分なことなどを理由に、半導体の原材料など3品目について韓国向けの輸出管理を厳しくしました。 さらに8月には、輸出の手続きを簡略化できる優遇措置の対象国から韓国を除外し、これに対し韓国政府は国際的な貿易ルールに違反しているとして2020年にWTO=世界貿易機関に提訴しました。 一方、今月6日に日韓両政府は輸出管理を厳しくする前の状態に戻すため、2国間の協議を速やかに行うことになったと発表し、韓国政府は協議が続いている間はWTOの手続きを中断すると発表しました。
米政府 首脳会談の実現を高く評価
11:30ごろ ユン大統領が羽田空港に到着
松野官房長官「日韓関係がさらに発展することを期待」
ユン大統領がソウル近郊の空港を出発
ユン大統領 訪日のねらい
「徴用」をめぐる問題以外にも多くの課題や懸案