FRBは19日と20日、金融政策を決める会合を開き利上げを見送り、政策金利を据え置くことを決定しました。FRBが利上げを見送るのはことし6月以来、2会合ぶりです。政策金利は現在の5.25%から5.5%の幅を維持します。
パウエル議長は会合後の記者会見で「インフレは去年半ばからいくぶん緩やかになっている。賃金の伸びにも鈍化の兆しが見られる」と述べインフレの要因となっている人手不足も改善しているという見方を示しました。
今回は同時に会合の参加者による政策金利の見通しを公表しました。ことしの年末時点の金利水準の中央値は前回・ことし6月時点と同じ5.6%でした。
政策金利の引き上げを1回あたり0.25%とすると、年内にあと1回の利上げが想定される内容となっています。また来年の年末時点の金利水準の中央値は前回より0.5ポイント引き上げられ、5.1%となりました。6月に公表された内容と比べて、高い金利水準が続く想定となっています。
パウエル議長は記者会見で「適切であればさらに金利を引き上げる用意がある」と述べ、インフレを抑え込む姿勢を強調しました。
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6:45 円相場は1ドル=148円台前半 ことしの最安値を更新
FRBの見通しの発表前に1ドル=147円台半ばだった円相場は1ドル=148円台前半まで値下がりしていて、ことしの最安値を更新しています。
NY株式市場は値下がり“想定よりも金融引き締めに積極的”
20日のニューヨーク株式市場はFRBのパウエル議長の会見が想定されたよりも金融引き締めに積極的だとの受け止めも出て売り注文が増え、ダウ平均株価の終値は前日に比べて76ドル85セント安い、3万4440ドル88セントでした。
議長「エネルギー価格を注視しなければならない」
パウエル議長はこのところの原油高について「われわれが食品やエネルギーを除いたコアインフレ率をみているのはエネルギー価格は変動し、インフレがどうなるか把握しにくいからだ。ただ、エネルギー価格は消費者にとってとても重要だ。エネルギー価格が上昇し、高止まりすれば消費に影響を与え、インフレ期待にも影響を及ぼすかもしれないと考えている。だからわれわれはエネルギー価格を注視しなければならない」と述べました。
議長「インフレの上昇圧力が緩和すると予想」
さらに、パウエル議長は「労働市場は依然として引き締まった状態だが、状況は改善している。失業率は8月に上昇したが、3.8%と低い水準だ。労働参加率は去年の後半から上昇し、特に25歳から54歳の参加率が高い。賃金上昇は落ち着く兆候があり、企業からの求人もことしは減少している。会合の参加者は、労働需給の改善が続き、インフレの上昇圧力が緩和すると予想している」と述べました。
議長「適切であればさらに金利を引き上げる用意」
また、パウエル議長は「適切であればさらに金利を引き上げる用意がある。インフレ率がわれわれの目標まで持続的に低下していると確信できるまでは、金融引き締め的な政策を維持するつもりだ」と述べました。
3:30 FRB議長会見「インフレ率2%まで低下は長い道のり」
会合後の記者会見で、FRBのパウエル議長は「インフレは去年半ばからいくぶん緩やかになっている。長期的なインフレ期待は家計や企業への幅広い調査や金融市場の指標から引き続き固定されているとみられる。ただ、FRBの物価目標である2%までインフレ率を低下させるには長い道のりがある」と述べました。
3:00すぎ NY市場で円安進行 一時1ドル=148円台前半に
FRBの会合の参加者が示した政策金利の見通しを受けて、20日のニューヨーク外国為替市場では円安が進み、円相場は一時、1ドル=148円台前半まで値下がりしました。
会合の参加者の政策金利の見通しで来年・2024年末時点の金利水準の中央値が前回の見通しから引き上げられたことを受けて、金融引き締めが長期化して日米の金利差が拡大するとの見方が広がって、円を売ってより利回りが見込めるドルを買う動きが強まりました。
《今後の政策金利の見通し》
今回の会合で、FRBは会合の参加者19人による政策金利の見通しを示しました。参加者がそれぞれ適切だと考える金利が点=ドットで示されることからドット・チャートと呼ばれ、市場ではその中央値がFRBが目指す金利水準だと受け止められています。
《2023年末時点の金利水準の中央値は5.6%》
それによりますと、ことし・2023年末時点の金利水準の中央値は5.6%で、前回・ことし6月に示されていた見通しと同じでした。今回の会合で政策金利は5.25%から5.5%の幅で維持されたため、政策金利の1回あたりの引き上げを0.25%とすると、あと1回の利上げが行われる想定です。
《2024年末時点の金利水準の中央値は5.1%》
一方、来年・2024年末時点の金利水準の中央値は5.1%と、前回の見通しで示されていた4.6%から0.5ポイント引き上げられました。
前回は来年中に1%の利下げが行われる想定となっていましたが、今回の見通しでは利下げの幅は0.5%に縮小した形です。これは、政策金利の1回あたりの引き下げを0.25%とすると、想定される利下げの回数が4回から2回に減ったことになります。
【個人消費支出の物価指数の見通し】
FRBは、インフレの実態を見極める指標として重視しているPCE=個人消費支出の物価指数の上昇率の見通しも示しました。それによりますと、ことし10月から12月のPCEの物価指数の上昇率は去年の同じ時期と比べて3.3%と、前回・ことし6月時点の見通しの3.2%から引き上げられました。一方、ことし10月から12月の、価格変動の大きいエネルギーと食品を除いたPCEの物価指数の上昇率については3.7%と、前回の見通しの3.9%から引き下げられました。
FRBが目標とする2%の物価の水準を引き続き上回り、根強いインフレが想定されることが示されました。
【平均失業率・GDP=国内総生産の見通し】
このほか、ことし10月から12月の平均の失業率については3.8%と予測し、ことし6月時点の見通しの4.1%から引き下げられました。また、ことし10月から12月のアメリカのGDP=国内総生産の予測は、去年の同じ時期と比べた実質の伸び率で、ことし6月時点の見通しの1%から2.1%に引き上げられました。利上げを続ける中でも、アメリカ経済が堅調であることを見込む想定となっています。